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「うる星」における2020年っぽいキャラ

この「るーみっく おーるど」では
一時期までの高橋留美子作品を取り上げていて、
それは僕の個人的な好みによるものだ。

一時期以降の氏の作品には
あまり触れることはないのだが、
先日「うる星」をざっと読み返したときに
現在の氏の作風の源流を
垣間見たような気がしたので
今日はその辺を書いていこうと思う。

言い換えれば、「うる星やつら」のなかで
現在の高橋留美子氏の作風でも
やっていけるんじゃないか、というキャラや
エピソード、ということになるだろうか。

まず最初は花屋のねーちゃん(7-8)。

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天然ボケという言葉が
いつ頃から使われ始めたのかよく知らないが、
石原真理子だとか田中裕子だとか、
あるいは桃井かおりとかが
TVでいじられていた頃だろうから
結構古い話である。

他人を意に介さない感じ、
どこか上ずっていて空虚な感じ、
そういうところが今の絵柄でもいけそうだが
ではこのねーちゃんが
2020年の漫画シーンで通用するかといえば
そういうわけでもない。

怪猫の美鈴さん(8-4)も
今の絵柄でいけそうである。

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見た目はたいへん魅力的なのだが
どこか演じている風な感じがする。
したたか、という側面もあるのかもしれない。
というか、どこか他人事のような乾いた感じが
今の高橋留美子氏の作風でも
「あり得る」と思うのだ。

幽霊のお玉(10-4)。

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この辺でわかってくるのだが、
ギャグ──というより笑いの質──が
独特なのだ。
予定調和というかシャンシャンな感じというか
スベり笑いというか。
寒いギャグの、寒さがギャグになるような。

スーパーデリシャス~~キッド28号(22-8)も

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笑いのネタとしては古いわけだが
狙っている空気感としては
今の高橋留美子作品のものに近い気がする。

白けるのだが、
その白けた感じがネタになっているというか。

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(画像は30-8 御前崎ちゃん)

頭の悪そうなキャラを描くと、
現在の高橋留美子作品っぽいテイストに
なっている気もしていて、

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画像は“いじめられていた女子”(23-2)だが
わりと白痴的である。
そういう感じが今の高橋留美子作品っぽい、
と感じるのはつまり、今の氏の作品を、
僕がそう思っているからなのだろう。

白痴的といっても
バカだったりとか成績が悪かったりとか
そういうことを指摘しているのではない。
意思が薄弱そうなキャラに対して
僕はそう感じるのだ。

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例えば星屑カンナ(29-7)も
竜之介を口説く時の気迫はあるが
基本的には「やらされている感」がすごくあって
キャラとしての魅力に乏しい。

うる星やつら」の終盤ぐらいから
因幡クン(31-7)と

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潮渡渚(32-8)というキャラが出てくる。

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この二人の、髪の毛のスクリーントーン
今の高橋留美子作品に通じる要素で
(渚は生身化するまで限定だが)、
作画のテクニック的なことは
よくわからないのだが、
頭部/髪が、たいへんフラットだ。

キャラを軽く薄っぺらく感じさせるように、
という加工なのかもしれないけれど、
感情の発露がない、
閉じた自己完結型に、僕は感じるのだ。

そういうキャラを描くための手法が
今の高橋留美子氏の画風であるような気もする。

それが、作者が社会を、また読者を、
そう見ているということなのだろうと
僕は思う。

もっとも、熱い漫画を描いても
支持を受けなければ、ビジネスに結びつかなければ
ただの徒労になってしまう。
高橋留美子氏が描きたい漫画、
漫画界のために描かなければならない漫画、
読者が読みたい漫画、
それらが一致する時代が来るといいのだけれど。


ええと、14-5(4) で出てきた貝の妖精は

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絵柄でいうと
最近の高橋留美子氏のタッチで再現可能な
影の薄さがあるんだけど、キャラがとてもよくて
そのポンコツっぷりや薄幸っぷり、
そしてそれに甘んじているヘタレっぷりが
今どきのオタクのおっさんに刺さるキャラなので
強く推しておきたい。
アニメでは確かエル役の榊原良子さんだったと思うけど
おどおどというこの台詞が
色っぽくてとてもよかった気がする。

でも「いいです……」はもうひとつだったかな。