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「われら顔面仲間」レビューその5

「顔面仲間」についてのレビューは
PV数がわりと地味である。さもありなん。
書いているほうも気楽でいいのだけれど、
いつまでもそうしているわけにもいかない、
というのも自覚はしている。

ただ、もうこの先「顔面仲間」を
レビューする機会は
永遠にないだろうなと思っていて、
であればあまり駆け足なのも
悔いを残してしまうかもしれないし。

なので、まぁゆるゆると。

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半ページも使うギャグじゃないだろう、と
思わなくもない。
ただ部員の足での笑いの後押しを含め、
吉本新喜劇的な運びでもある。

この受け取り方の違いは、舞台と漫画という、
媒体の差もあるだろう。
漫画の場合は、
オチのコマが見えてしまっているので
「来るぞ、来るぞ」というのがないのだ。

漫画には「ページをめくる」という仕掛けが
あるにはあるのだが、
さすがにページをまたいでやるほどの
ネタではないし。

そういう観点からは、
今後のデジタル漫画(の中でも、コマごとに
表示するようなタイプ)であれば
また違った表現方法が可能となるのだろう。
もっともそれはそれで、
コマの大きさで強弱をつけられなかったり
いろいろ大変なのだろうけれど。

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このコマすごく手をかけて描かれてるなぁ。
廊下で立たされている担任の顔よりずっと。
こんなに重要度の低いコマなのに…。
やりたかったんだろうなぁ。
本当、この作品は
作者の同人時代の作品のように
好き放題って感じがして。
楽しそうだなぁ、とすごく思う。

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このコマは、
装四郎の「おかしな相手」という台詞に合わせて
後ろの部員が「おかしい」と言っていて、
ちょっと不思議なねじれ空間になっている。

部員の「おかしい」は
前ページの「ほぼ変態」を受けていて、
話としては実はそのままだ。

対して装四郎の「おかしな」は
何を指しているのか。
(今どき)警告をしてくるようなことなのか、
部員の顔に警告文を書いてくることなのか。
はたまた、
部員の「変態だ」を受けて
「確かにその通りだ」、ということなのか。
もし、「変態だ」を受けての
「おかしな相手」であるならば、
この装四郎は、ギャグをやってることになる。
そして後ろの部員は、
ボケを重ねていることになる。

ここの装四郎の台詞が
「おかしな相手」ではなく、
「不気味な相手」とか「謎な相手」であれば
わかりやすいのだ。
しかし「おかしな」としたのは
後ろの部員に
「確かにおかしい」と言わせるためであり、
むしろ装四郎が従で後ろの部員が主である。
だからこのコマの主題は、
後ろの二人の掛け合いだ。

「確かにおかしい」「うんとへんだ」。
これが、おそらくは
「タシカニオカシヰ」「ウントヘンダ」
的なことだったんじゃないだろうかと想像する。

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変装の下の素顔に落書きされる、というのが
どうやったら成立するのか。
相手がどんな手練れでも、
これはちょっと無理がある。

そもそもこの、顔に貼り付けるタイプの変装は
推理小説やサスペンスものなどに
その端を発していて、
過去にはトリックそのものになったこともあり、
また変装という題材が
「見破る」「見破れない」という意識を
前もって読者に準備させることから、
納得のいく形での運用が
求められるんじゃないかと思うのだが、
「顔面仲間」では変装のトリック面は
わりと無視されている。
ギャグ漫画としてそれは別に構わないのだが、
であればこの、
「どうやって変装の下の素顔に落書きを」
というネタは、
扱わないほうがよかったのではないか。

そんな危険なネタをなぜ扱ったのかというと、
「おれはにぶくなんかないっ!!」
のギャグに繋げるためだろう。
そこからの逆算なのだろう。

この作品では、こうした単発のギャグが
なんとかストーリーとして繋げられているが、
かなり危なっかしい印象を受ける。
ストーリー漫画ではないのだ、
といえばそれまでだが、
統一性にやや欠けるきらいがある。

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この後のこのこ指定の場所に行って
まんまとリンチにあうわけだが、
リスクヘッジ駄目過ぎでしょ。

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で、部員のほとんどが
同じようなリンチ案件を
引き受けてしまったからといって
それが初代部長の罠だというのは
ちょっと強引すぎるのではないか
(同じ顔の奴からの同時刻の発注だった、
とかならともかく)。

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ここで暴行を受けていた眼鏡くんが
起き上がって装四郎に応答し、
次で潰される流れは
個人的にすごく好みである。
コマ運びのせいで、
視線がブレるのがもったいないほどだが、
暴行からの3コマの流れもとてもいいので
致し方ないところか。

そこから場面が転換し、
階段という立体的な舞台で
「べらっ」となるわけだが、
このページの流れはとてもスピード感があり、
まるでハイテンポなアニメを見ているようである。

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階段落ちをやって、
男子部員たちの出番はおしまい。
この縦長なコマは、
ページの中ではあまりうまく繋がってないけど
物語の転換点、という感じはある。

その転換だが、
「顔面仲間」が、変装倶楽部の仲間たちの話から
装四郎と明子という、変態カップルの話へ
ガラリと方向を変えていて、
それが、唐突とは言わないまでも
かなり強引な持っていき方なことが
読んでいてたいへん戸惑わせられる。

この階段落ちの前と後が、
それぞれ別の漫画だ、と言われても
受け入れてしまいそうなぐらい、
雰囲気が違うのだ。
後半は、学園漫画ですらない
(シーンは屋上かもしれないが)。

学園ものとラブコメの抱き合わせ、
という形になっていて、
いわば前半うる星、後半めぞん、といった体だ。
これは戦略としての構成なのだろうか。

というわけで次回はラブコメ部分に突入です。