さて、「登校前の転校生との絡み」が
済んだところで舞台は学校へ。
テンプレ通りに転校生との再会となったわけだが
高校名が今一高校って、
今一なのはボクシング部だけじゃなくて
高校全体に渡るってことですかね。
学力的にもですかね。桃子もですかね。
学校名が出たのでついでに戸隠の学校だが
「東天高」って何かに引っ掛けてあるのだろうか。
まさか東天紅とか東天閣じゃあるまいな…。
初登校にスタジャンで来る神経がわからん…。
転校早々で制服が間に合わなかったとしても、
前の学校の制服着て来いよ…。
というか僕もこの歳になると、
そもそも私立高校への転校、
というのがリアルじゃないし、
それが可能って結構お金持ちなんだな、
と、そこから考えてしまう。
まぁただ世の学園コメディは
転校生でもってるところはあるからなぁ。
公立高校から公立高校への転校ならまだ、
遠方からの引っ越しということで
わからんでもないのだが。
自由な校風、を描くなら私立のほうが、
と思うのかもしれないけど、
転校を受け入れる時点で
その学校の学力レベルは、
競争の少ないレベルだといっているようなもので。
まぁ、今一高の場合は
それで正解なのかもしれないけど。
志郎の俊敏さを見込んだ桃子が
自分の属するボクシング部に志郎を連れてきた。
そこに至るやり取りは一切なしで、
志郎は何も考えずにノコノコ着いてきたのだ。
この、無能を装って実は有能、というメソッドは
鉄板ではあるのだけれど、
高橋留美子作品においては
しばしば、その無能の表現が、
「なぁ~んにも考えてない」というような
能天気っぷりで描かれる。
これが、余裕がない現代においてはなかなかキツい。
能天気を描いているだけかもしれないが、
今の感覚ではあまりに不自然なのだ。
自分の利益のために志郎を利用しようという桃子、
という仕掛けが功を奏するために、
脳みそ空っぽにされている志郎、というのが
思いっきり「ハラスメント」である。
やられているのが男性側なこともあって
あまり露骨ではないが、
読んでいるとちょっとハラハラする。
「うる星」でもこういう展開が
男性キャラ女性キャラを問わずあったと思うから
読者である僕としても、
それを搾取してきたんだけれど、
それは不可逆的なものだとしても
今、これはちょっとなと思う感覚は
持ってないといけない気はする。
注意書きで野良犬というギャグに誘導したので
「野生の犬」→「野生の狼(虎でも獣でも)」では?
というギャグが拾えなかった。
部員がもっといれば突っ込んでもらえたのに。
歯が光って、語尾が浮いている。
この「青春」を茶化すギャグは、思えば
友引高校の男子バレー部辺りから
延々と繰り返されるギャグなんだよなぁ。
と思ったが、
片や(男子バレー部)昭和55年(1980年)。
片や(犬で悪いか!!)昭和60年(1985年)。
たいして変わらなかった…。
全く勝てなかったら廃部になるなら、
勝てそうな対外試合組んでこいよ、
と思ったが、地区最下位だったとしたら
どことやっても同じかもしれない。
こいつホンマに何しに拳闘部来たんや…。
まだ桃子には惹かれてない段階だし。
文脈的には、拳闘部が弱そうだから
興味を失くした、というふうだが
ナニソレ。
志郎そこまでボクシングに本気じゃないだろ。
鼻血が出ると犬になる。
まぁ別にいいけど、
能動的に犬になりたい時に困るよな。
エロ本見て鼻血が出るなんて実際はないしな。
その辺り、「らんま」では
一応改良されているっぽいけれど。
ちなみにマイケル・ジャクソンが
狼男に変身する「スリラー」MVが1983年。
多少はインスピレーションあったのかも。
犬状態で、日本語で考えている。
シャンプーの猫や良牙の豚は
日本語は解しても、日本語のモノローグは
発してなかった気がするけどどうだったかなー。
「日本語で表現できない」という不自由さが
そのキャラの境遇の描写に深みを与える、
という効果もあるのだろう。
鼻タッチまでして、
志郎はこの瞬間に恋に落ちたのだろう。
大事なコマである。
だがこれがここで終わって、
翌ページが「翌日──」なのが驚きだ。
もちろん、志郎の「ぽっ…」が
翌日サンドバッグを打つ志郎の熱意に
繋がって、一目惚れを表しているのだが、
もうちょっと、好きになった描写があっても
いいんじゃないだろうか。
戸隠の衣装、これは何なのか。
たぶん学ランだけど、
この大ゴマでちょっとひどくない?
悪徳セールスと同じような話のすり替えで
交際の条件を飲ませてしまう戸隠。
なかなかやるな。
サンドバッグが破れる、というのは
ボクシング漫画では相当たいしたことで、
だから「犬で悪いか!!」においては
逆手に取ったギャグのはずなのだが、
このコマで、しかもキャラの後ろで破けるんじゃ、
シリアスとして描かれているようにしか
読めんのだが。
一周回って、男二人のかけひきを
「これはギャグですよ」と補填してるのか?
この描き文字はいい描き文字。
部室に戸隠が来た時には
存在感まったくなかったし、
桃子をマドンナ扱いしている素振りも
全然見せなかったくせに
いきなり「桃子ちゃん」かいな。
ここは「ボクシング部を守ってくれ」
なように思うけど。
とはいえ、部員たちの出番は
ここでほとんどおしまいとなる。
「顔面仲間」のレビューでも
同様の指摘をしたけれど、
登場人物の配置構成で、
必勝パターンみたいなものが
当時確立されていたりしたのだろうか。
次回は、志郎と桃子のラブコメ部分、
戸隠が恋のキューピッドをするという、
その辺りをレビューします。