さて、「犬で悪いか!!」レビューも
今回で最終回。
話は主に(試合ではなく)志郎と桃子の
ラブロマンスに絞られる。
ペットショップだというのに
犬猫の鳴き声一つせず、
バットの打音だけが響いている。
本当にペット売ってるのか?
空のようなケージが目立つが
一応、いる。
まぁ、あまり存在感があると
志郎と売り物の犬とのカップリングとか
変な横道に逸れそうな感じだし
あえて描かなかったのかもしれない。
結構仲のいい父子。
(ビッグ系は別として)サンデー系では
「顔面仲間」の次に発表されたこともあって
志郎と父親の関係がよろしくないかのような
第一印象を持ってしまうが、
実のところは「仲良くケンカしな」系の
じゃれあっている親子である。
この「じゃれあう」というのも
犬と犬がじゃれあう雰囲気をなぞっているならば
地味なところで凝ってるなー、と思う。
ボケ、無しである。
トランクスもこの後、特に事件に繋がらなかったし、
「試合ができない身体」の誤解にしても
天然ボケというほどの個性じゃないし。
桃子は「変じゃない、普通の女の子」として
描かれたわけである。
無個性ともいえるけれど、この時代に
そういうヒロインが流行ったのだろうか。
「犬で悪いか!!」が掲載されたのが
サンデー1985年47号で、だいたい10月頃。
調べてみると、アニメのほうの「タッチ」で
カッちゃんが亡くなったのがその頃で、
南ちゃん人気も相当あったんじゃないかなぁ。
ヒロイン像をどうしようかという打合せの時に、
南ちゃんみたいなキャラ、というのは
話にのぼったりもしたかもしれない。
台詞と効果音だけのギャグ、
この手の運びは高橋留美子氏のお家芸だけど
やっぱりうまい。
この時に対比される桃子の顔も、
この表情に持ってくる流れに考えられていて、
とてもいいのだ。
志郎すげえよな。
バレないと思っているのかしれないけれど
出会って間もないクラスメイトの女子に
こんなに擦り寄って。
およそ高校生らしくもない、
旅芸人の腰の軽さのような好色さである。
答えになってないし。
ツッコミになってないし。
そりゃそうとドッグフード食わせたのは
ずいぶん思い切ったな。
嗜好が犬の時とダブる、なら
志郎はもう人間じゃないわけで
(変身する時点で人間じゃないけど)。
極端な話、雌犬に欲情したりもするかもしれない。
…それはちょっと読みたいかもな。
女乱馬が女になっても
そんなのよくある話でつまんないけど。
なぜ三点リーダーなのか。
高橋留美子氏の、
他のエロ本・エロピンナップ描写でも
三点リーダーがあったような気がする。
まぁ確かにあの頃、そんな感じだったけど。
泣くほどか?
そして親父の変身だが、
笑うことがトリガーになっているということは
変身する直前まで「いい気分」でいたわけで、
だから親父が犬状態でケンカをする、
というのはちょっと無理がある。
「らんま1/2」において、
乱馬と玄馬のトリガーが同一になったのは
親子ゲンカがどこまでいっても茶番である以上、
同時に変身することにデメリットがない、
という判断が、「犬で悪いか!!」によって
導き出されたのかもしれないな。
この桃子と
この桃子が、
まるでトレスのようである。すげぇ。
それにしてもこのページの背景の、
落ち葉が舞い散る描写は
何の含みがあるのだろう。
ただの背景にしては
ずいぶん繰り返されているけれど。
志郎の(偽の)ナイーブな心理描写なのか。
秋を感じさせる、というには
くさや なんて別に秋と関係ないし。
くさや の移動販売が、
焼いて提供しているとは表現できない
(干物のまま売っているかも)ので、
秋の、焼きイモの販売車のイメージを持たせて
匂ってくることを表現、という感じかなぁ。
「すきなのよ犬古谷くん あなたが!!(倒置法)」
誰が上手いこと言えと
光ってる!光ってるなぁ、桃子ちゃん!!
この、アホみたいな桃子は最高だなぁ。
ちなみにモデル(?)の力石は
フェザー級だったので、
おなじバンタムに落とすとしても
戸隠のほうが余計に減量することになる。
なんでそんな騒ぎになるのか。
たかが今一高の廃部に
そこまで盛り上がらないだろ。
東天高側には特に何もないし。
よくあるパターンとしては、
戸隠が校内のスターで、
彼のファンの女子生徒が詰めかける、
というようなものだけれど、
今回は戸隠を変態方向に持っていったので
それもできないわけで。
そもそも「盛り上がってる」必要も
別にないと思うんだけどなぁ。
東天高の校章は、東映のロゴマークに
ちょっと似てるけど、ちょっとだけだな。
痩せ過ぎで気持ち悪い、というギャグだけど
出オチで終わってしまって
この後、変態の戸隠ではなく
「誰でもない誰か」になってしまった。
ちょっともったいないなぁ。
桃子の身体、適当過ぎない?
ちなみに、犬にニンニクは与えてはいけない。
量にもよるらしいが、
玉ネギ同様、犬にとっては毒なのだそうだ。
まぁかといって、犬がニンニク臭を
臭いと感じるかどうかはわからない。
ノーブレス(「バタアシ金魚」)かよ。
戸隠も戻れなかったとして、
両者リングアウトは引き分け判定。
ボクシング部の廃部は免れたのだろう。
作品中では全く触れられなかったけど。
トランクス!トランクスはどこに行った!!
この後どういう展開に!!
嫌いとか好きとかいう問題じゃないよな。
まず、人として接してもらえるかどうかだろ。
ただもしかしたら、犬古谷家での、
桃子に抱きしめられた卑劣な行為が
自分の行いだとバレたことを指して
卑下しているのかもしれず、
それならわからないでもない。
お手するほうもするほうだが、
お手させるほうもたいがいだ。
犬が好きだから、あなたが犬人間でも平気、
というロジックは、
犬じゃなかったら好きじゃないけどね、となり、
犬として扱う気満々である。
そしてそれを享受するのが
「わん」である。
一件、他愛もない子供の仕種に見えるけど
従属関係が隠せなく、
青少年の読者に向けて
狙って放ったのだとしたら、
これはもう変な性癖に招待されてるといっても
言い過ぎではないだろう。
不思議なのは、桃子が決して
「強い女子」ではないところだけれど。
そこがまたフェティッシュなのかもしれないが。
以上、
「らんま」とは似てるようで実は
「犬で悪いか!!」のほうがエロいんじゃないか、
そんな想いを新たにした(新たにしてどうする)
レビューでした。 おしまい。