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「O~、島ですぅ~」うる星やつら「タヌキが“ツルの恩返し”」レビュー

声優の菅谷政子さんがお亡くなりになりまして。
出﨑・杉野コンビの「エース」は
マイフェイバリットだったので残念です。

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アニメ「うる星」に出演した声優さんの中にも
訃報を耳にすることがたまにありますが
キャラの死のようにも感じてしまい、
心にずっしりきたりします。

皆さんいつまでもお元気でいてほしいものですが
アニメ「うる星」初期からは
もう40年近くにもなるわけで、
訪れる訃報を受け入れていくのも
歳を重ねることの意義なのかもしれません。

菅谷政子さんはアニメ「うる星」においては
O島タヌキを担当なさいました。
wikiによると子キツネもそうだったようですが、
そちらは全く印象がありません(そりゃそうか)。

O島タヌキは当時視聴中、
サファイア太田淑子さんかと思ってたんだけど
エンドクレジットを見たら違いました
(←ポンコツ耳ですみません)。
なんだかふんわりした丸みのある発声で、
O島タヌキには合っているなぁと
思った記憶があります。

O島タヌキは元は男性編集者ですから
高橋留美子さんの感覚では
男声のイメージだった可能性もありますが
視聴者としては、まったく違和感なかったですねぇ。

アニメエピソード「タヌキは恩返しできるか!?」
自体が、遠藤麻美作監高橋資祐絵コンテであり、
僕としてはウハウハの回だったので
好印象しかないのかもしれません。

原作のほうに目を向けますと、
これははっきりと「身内ウケ」の話であります。
高橋留美子氏の担当編集者をキャラ化して
1話作った、というカタチですが
現実の大島氏の人柄がどのぐらい反映されたのかは
あまりよくわからないし、
漫画モラル的にはわからないほうが
いいのかもしれません。

まぁそもそもこの頃は
アニメブームで市場が拡大する中、
「OUT」や「ふぁんろーど」のような、
作品の中だけにとどまらない、
作品を取り巻く雑多なものが
コンテンツとなった時代でした。
「参加型」ともいえるかもしれません。

うる星やつら」の場合は
少年サンデーグラフィックにも見られるように
作品の裏側が商品として「活用」されていました。

そんな中での漫画エピソード、
「タヌキが“ツルの恩返し”」13-10 を
今回はレビューします。

前置きが長い…。

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扉絵はあたるとラムのサイクリング風景。
このスーパーカー自転車には
当時も刮目した記憶がある。

スーパーカー自転車のブームは
1973年頃のオイルショックで翳ったらしいから
このエピソード掲載された1982年には
とっくに終焉している。
なんでそんな資料使うんだよ…。

いや、あたるが物持ち良すぎるのか?

でも小学生当時にスーパーカー自転車を
買ってもらえてたっていうことは
あたるの家は結構裕福だよな、やっぱり。

ちなみにこのエピソード中、
自転車の作画は極力避けられているように感じる。
アオイホノオ」的である。

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最大の謎は、
O島はツルなのかタヌキなのかどっちやねん!
ということである。
普通に考えればタヌキに決まっているのだが
ではなぜ罠にかかっていた時に
ツルの姿だったのか。
そしてなぜツルの姿で帰っていったのか。

絵本「つるのおんがえし」に
カブレていたから、は確かにそうだし
変身したり、葉っぱをお金に換えるというのが
タヌキの所作だ、というのはもっともだが、
実はツルも変身できるのだ→ex.「鶴の恩返し」

実際には作者がタイトルで
「タヌキが」と言っているのだから
タヌキなんである。
細かいことはどーでもいーのだ。

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ちなみに現在、日本ではトラバサミの罠は
基本的に使用禁止である。

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この、テンが拗ねているというのがとてもいい。
暴れたり、喚いたりするわけでなく、
ツンとした表情で意固地になっているのが
幼児の描写としてめちゃくちゃいい。

そしてそのことでテンが一人でいる状況が生まれ、
O島と会話するというのが
天才的なシナリオである。

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テンが2回誰何することで、
O島が名刺を出すことにうまく繋がっている。
この演出もとてもうまいなぁと思う。

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伏字になっていないアルファベット名を
「(仮名)」が念押ししている。
今ではポピュラーなネタだが、
「伏字になってない」にしても
「(仮)」(カッコカリ)にしても、
このエピソードの頃が黎明期だったのでは
ないかなぁと思う。

ざいごって何だろう。
大島氏の部署名か何かかな。

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せんべい食ってる。わかり辛っ。

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テンのご飯はキャットフードみたいだな。
ビーフードを模したのかもだけど。
缶切りで開けたみたいで、
パッカンではないらしい。

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虎縞ラベルだから辛いのかもしれない。
ラムとテンの味覚は同じ。
↓ 画像は14-7「辛いキャンプに明日はない!!」

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よく噛むとなかなか味わいのある台詞である。
秘密を白状してしまっている重大さを
O島はちゃんと自覚しているのか?と、
変なベクトルで楽しめてしまう。

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この台詞も、妙に世間ズレしていて
とても楽しい。

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この後のO島の渾身のギャグを成立させるために
ぐっと我慢のラムなのである。

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このあたるの台詞は、
言わせたかったか、現実に即しているか、
どっちかなんじゃないかな。
妙にエネルギッシュなコマである。

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これも大島氏の語録だったりするかもしれない。

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で、ラストカットなのだが
これが実はちょっと歯切れの悪いカットだ。
だがその歯切れの悪さが、なんだかいい。
日本の民話のラストシーンっぽい。

よだれのことを別コマにしなかったのも英断だ。
これを別コマでオチにしていたら、
やっぱりあたるの話になってしまう。

部屋もぐにゃ~っとなっていて、
よくわからん世界観、に一役買っている。


O島タヌキ自体は
困った時の新キャラ(ゲストキャラ)
だったのかもしれないが、このエピソードは
起承転結のはっきりした良作だったと思う。

菅谷政子さんのご冥福をお祈りいたします。