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ギャグが冴える!うる星やつら「コートに消える恋」レビュー

先週の「コートの中では泣かないわ」レビューに
引き続き、素敵な夏子パイセンが活躍する
「コートに消える恋」(6-3)を取り上げる。

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扉絵は二重人格を表したかのような夏子。
右の夏子が面堂の写真を抱えているのが
今見ると興味深い。
そう、この回は夏子回だが面堂回でもある。

面堂は結局、「うる星」最終回まで
たいしたカップリングが行われなかった。
女子にもてはやされるという状況は
しばしばあったが、
ギャグを成立させるための色男、というふうで
その証拠にレギュラー女性陣は
面堂に秋波を送ることもなくなっていた。
BLに託すまでもなく、
面堂の一番の恋人は諸星あたるであった。

だが、夏子は面堂に一目惚れしたのだ。
しのぶのそれが、
いくらか打算的な匂いがすることに比べ
夏子はピュアである
(想いが外ヅラだけに限られているにせよ)。

面堂は「うる星やつら」劇中で
ハンサムとして設定されているが、
耽美派が好むような“美少年”ではない。

いわゆる“男らしい”ハンサムなのだろうが、
後年出てきた、他の“綺麗なお顔”の美少年の前では
そのハンサムっぷりがあまり価値を持たなかった。
時代が、彼のような男前な顔つきを
評価しなくなってきたからなのだろう。

逆に、綺麗な美少年キャラが「うる星」において
猛威を振るうこともなかったが。
そういうキャラはいつも間抜け役か、
蓋を開けたら人外だった、
みたいなことになっていた。

きっと、高橋留美子氏は
美少年キャラがお好きではないか、
またはまともに向き合うのが苦手、
なのだろうなと思う。

らんま以降(?)、
ホスト系みたいな男性キャラが乱立していたけど
あまりよくは描かれていなかったようだし。

というわけで、やっと本編だ。

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ラムが、というよりは目の前のあたるが、
バレー部に入って間もないのだがな。
面堂とあたるが“親友”っぽくならないように
ラムをダシに使うしかない、というところか。

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ここでキャプテンが、泣き顔じゃないところが
ハイテンポでとてもいい。

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コースケたちがお菓子を食べながら
女子バレー部を見物しているのが、
力の抜けた感じで、とても面白い。
彼らは別に、女子(ラムを含め)に
一生懸命じゃないのだ。
日常の中にお菓子があり、ブルマーの女生徒がいる。
言い換えれば、お菓子やブルマーのある世界を
“普通に生きている”のである。

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面堂が「げこ!」と言っているが、
これが普通に通じると思ってはいけない世界は
もう来ている。
言うまでもないがこれは蛙の鳴き声で、
潰れるといえば蛙、というギャグなわけだが
今どきの子にはもう通じないのだ。
うちの子には通じなかった。

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面堂が、演出上のアホ面をするのはよく見るが、
みっともないアホ面をするのは珍しい。

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このエピソードでは
繰り返しギャグが多用されていて
面堂のこの台詞もそうであるが、
こういう繰り返すことで笑いを誘う方法を
お笑い用語で「天丼」というそうである。

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2回目で加算された「以下略…」という台詞も
“繰り返し”を利用したギャグだが、
そもそもその前段階の、
「またボールをぶつけられた」というのが
ギャグとして効いていて、
さらに面堂が夏子の変顔を見ていないことによる
“知らぬが仏”という面白さまで
ぶち込んでいるので、
相乗効果でえらく面白くなっているというわけだ。

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もう一つの“天丼”がこの「よろっ」だ。
これ自体がメロドラマのパロディでありながら、
この後の

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破壊行為の予兆、始まる合図となっていて、
「来るぞ来るぞ」の面白さを引き出している。


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2回目、3回目であたるが突っ込んでいるように、
本来は破壊行為の方がギャグ本体なのだが。

何度も刷り込まれたおかげで
4回目には読者がパブロフの犬よろしく

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合図だけで笑えるように訓練されてしまっている。
素晴らしい構成である。

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「にぶいねっ!!」 このニュアンスも、
今ではなかなか伝わりにくいだろう。
同じような世界観が

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「〝愛〟それは校内暴力とともに」(8-9)だが、
連載当時で考えても
やっぱりちょっとアナクロ感は否めない。

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モンタージュ(?)全とっかえというアイデア
素晴らしい。「うる星」はギャグ漫画なのだ。


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元カレと面堂のどちらを欲しているのか
もはやわからない状態だ。
元カレを追っているのならば
「あの元カレが記憶の中でこうなってるのか」
というギャグになり、
面堂のほうがいいのならば
「結局元カレはどうでもいいんかい」
というギャグになる。
そこを女心の複雑さの体であやふやにしているから
読み応えのあるギャグとなっているのだと思う。

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なんじゃこのめんどくさい背景の処理は!
たまにこういうの散見されるよね。
息抜きなのかな。

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先輩が教室に訪ねてくるというこの日常漫画感!
貴重だ…。

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一球目はともかく、二球目はわざとなんじゃないか。
転入からこっち、ラムは小悪魔しぐさが
妙に強調されてるしな。

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話がややこしくなってるけど、
あたるが辞めてラムが辞めても
別に不都合はなく、丸く収まる話なのだった。

そう考えると、
ラム目当ての面堂という側面を
もう少し出していても面白かったかもしれないけど
前後編通してギャグ漫画として秀逸だったから
これはこれでヨシ!

確かこのエピソード、
アニメでは失望したんだよな…と思って
スタッフリストを調べたら う~んまぁ…だった。
エピソードの端々は、押井氏のやりたいことに
合ってたかもしれないが…
あんまり消化できていない感じがしたなぁ。


今回はそんな感じです。
該当都府県の方は緊急事態宣言のG.W.、
少しでも楽しく過ごしましょう! それでは!!