このところ連載長編のレビューが続いていたので
今日は「戦国生徒会」を取り上げます。
1回でまとめるのは無理かな~。
「戦国生徒会」というタイトルは
角川映画「戦国自衛隊」からのインスピレーション、
というのは疑いのないところだろう。
掲載誌の表紙を飾ったカラーイラストには
男らしく(性差別)きりりとした真田くんが。
到底、真田くんの真の姿ではないのだけれども。
仮にも雑誌の表紙であるし、
軟弱な男の子では、
雑誌そのものの売り上げにも関わると
調整されたのかもしれない。
それに比べて扉絵は普通にいい感じ。
真田くんの伸びやかなポーズが希望を感じて、
少年漫画の扉絵として好ましい。
この絵の真田くんはちゃんと真田くんなので、
表紙カラーイラストの方は
やはり何らかの意思が働いているのだろう。
レタリングはなんだか後の「キルラキル」っぽいな。
生徒会の話だしな。
1コマ目は戦国高校のロングショットから。
そこにわけのわからん校内放送が流れるのだが
もうこの1コマ目から引き込まれてしまう。
鉄条網がいいし、
校内放送の暗号の意味不明さも、
妙に覚えたくなる不思議なフレーズで、
キテレツな舞台背景なのだな、と見せたところに
真田くんの顔が、コマを突き破って伸びてくる。
真田くんの目線は上のコマ、
校内放送のフキダシに向かっている。
読者の代わりに事件に入っていくのは
この男の子なんだなと、すっと入ってくる。
その一方、真田くんを取り囲むクラスメイトの
視線が厳しいことから、
何かただならぬことが起きようとしているのだなと
伺わせ、初っ端から秀逸な構成である。
で、この「ななこさんに会える…」を
そのすぐ後に持ってきたのが天才的だ。
真田くんが教室を出て、駆けだしてから
呟くのでは普通なのだ。
周囲の殺伐とした雰囲気に気付かないまま、
のほほんと呑気に女の子の名前を口にする。
そこから「これはギャグ漫画だよ」と理解できて、
読者は早くもリラックスできる寸法だ。
元ネタは「スペインの雨は主に平地に降る」だが
留美ック脳においては「~長崎~」のほうが
本家のようにも感じてしまう。
むろん現実社会には
「日本の雨は~」というフレーズはない。
おそらくは“内山田洋とクール・ファイブ”の
「長崎は今日も雨だった」からの発想だろう。
ドアのガラスが外され、カーテンになっている。
こういう、少年倶楽部「少年探偵団」から
連綿と続くギミックは、
どこかドキドキハラハラする。良き。
全身包帯巻きの元祖はミイラだと思うが
この会長の“安置”っぷりが、またミイラっぽい。
みんな判っているけれど……
という自虐ギャグの形式をとっていて、
だからスベり笑いに近いのだけれど
会長が当初から無言で横たわっているのは
やっぱりちょっとキツいかな。
The・あの頃の高橋留美子の女性キャラ、
といった感じだ。
ちなみに葵ななこ という名前の由来は
よくわからない。
真田祐という名前の由来もよくわからない。
思えば、この「痛かった~~っ!」
という台詞はギャグなんである。
おそらくリンチにあったのだろうが、
そういう凄惨な出来事を
「痛かった」で済ます会長の妙なタフさ、
そしてふてぶてしさが、剽軽であり、面白い。
ただ現代においては、
ギャグと受け取ってもらえないのではないか、
という気もする。
書記の真田くんは
この会議でも議事録をとっていて
このコマでは会長の言葉を反復しているが、
意外なことにこの“反復”は
この後のストーリー上で利用されていない。
これでは“書記”であることの意味合いも
薄いわけだが、どうしたことだろうか。
もしかしたら初期のプロットでは、
真田くんが無意識に反復してしまうことで
会長職を引き受けざるを得なくなったとか、
そういう仕掛けがあったのかもしれない。
生徒会長印は漢委奴国王印の金印が
モチーフであろう。
アイテム争奪戦というエピソードは
「うる星」でも数多く展開されたが
「たいしたものじゃなかった」というオチに
されがちだったような気がする。
それに比べて本作では、
この会長印に確固たる価値を与えていて、
だからストーリーに力強さを感じる。
会長の、おっさんじみたこの台詞に対して
特に言い返さない ななこ。
留美ックには気丈な女性キャラが多く、
こうしたことを言われた場合に
言い返さずにはいられない人が多い気がするが
ななこ のこのノーリアクションっぷりが、
彼女がマスコットキャラである、
というポジションを端的に表している。
なあ~んにもわかってないから
真田くんには荷が重いのだが、それは
「わかってない真田にやらせたらかわいそう」
ということであって、
元祖生徒会という組織において
真田くんでは会長職を遂行できない、とか
そういうことは全く考慮されていないのだ。
竜ちゃん(違、いや違わない)カッコいい。
竜之介より美人めであるが、
体操服が似合ってる。それこそ夏子より。
カッコいい!男前!!
ななこ が太もも晒してなかなか色っぽいのだが、
すぐ目の前に竜子の生足があるので何とも。
伊能つかさ もカッコいい。
白い長ランがよく似合う。
「男組」は読んでないんだけど、
こういうインテリ番長って出てきたのかな。
ほんとに色男なんだけど、
こういう色男が、最初から最後までカッコいいって
留美ックではかなり珍しいと思う。
藤波竜子(藤波辰巳〔辰爾〕)、
伊能つかさ(伊藤つかさ)とあるならば
真田祐と葵ななこ も元ネタがありそうなもんだけど。
台詞だけでも十分伝わるのに
盗聴担当の生徒をちゃんと作画するあたり、
丁寧というかやり過ぎというか…。
でもそういう余計な手間を省略しまくった結果、
心に残らないものになったりするので
こういうのは大事だと思います。
つうかこの台詞、誰が発してるんだ?
(フキダシのシッポ位置)
いやせめて開けて確認しようよ。
とまぁ、ここまでが舞台と登場人物、
そして設定の紹介となる。
本格的な会長印争奪戦はこれからだ。
というわけで、次回に続きます!