さて前回に続いて「面堂兄妹!!」(12-8)の
レビューをしていこうと思う。
了子のガイコツマスクを幽霊騒ぎにして
2P以上にわたって引っ張るのは、
いくらなんでも大げさすぎるのだが、
牛車で妖怪というと「朧車」というのが
たいへんメジャーらしい。
「朧車」では
牛車のフロント部分が妖怪の顔になっているようで、
であれば作中で了子が
「前におまわりになって!」と誘うのも、
「朧車」という元ネタに沿ったプロットの
名残りなのかもしれない、と思ったりもする。
面堂は本当にあたるが好きだな。
絶世の美女が、
まるでマグネットが仕込んであるかのように
机の横でぴたりと止まる。
この、ピースがぱちっと嵌る感が
なんとも言えず気持ちいい。
作中でそれを受けているのは面堂だが、
疑似体験を甘受しているのはもちろん読者である。
それが作者の計算によるものか、
天才ゆえの無意識の所業なのかはわからないけれど
おそろしく鋭いコマである。
この会話も絶妙だ。
後のネタに繋がる、夫婦のような会話でありながら
言われてみれば兄妹のものとしても通用する台詞。
面堂の腕組み、了子の伏し目がちな眼差しが
また素晴らしい。
この了子の冗談は、
2-4の生徒たちへの嫌がらせ(及びそれを受けての
兄 終太郎への嫌がらせ)なわけだが、
了子が美少女であるという前提がないと
嫌がらせにならないので、
彼女が自分の美しさに自覚的であるということを
如実に示している。
まぁ彼女の場合はそれを当然のことと
受け止めていそうだが。
面堂もすぐに否定すればいいのに
婚約者ではなく兄妹だということを公にするまで
中6コマも消費している。
エピソードの構成の都合もあるのかもしれないが、
終太郎が了子に気を使っている感じが
とてもよく伝わってくる。
かといって終太郎が押され過ぎてもおらず、
育ちのいい兄と妹の関係、という感じで
とても納得がいく。
現に目の前にあるのに
「ウソです!」はすごいよな。
もっともこれは漫才のボケに近くて
了子は笑いをどんどん繰り出してきているわけで、
それを現実離れ(浮世離れ)と見るか、
演劇と見るか、が問われているように思うが
別エピソードでのロミジュリなどを見るに、
演劇と見て妥当であろう。
もっとも、催眠術の失敗エピソード(12-10)
で見せたような素顔の一面も、あるにはある。
だがそこのオチも予定調和クサいので、
この「おにいさまったら~っ!!」の表情は、
コマ自体が何かの間違いじゃないか、
という感じすらする。
面堂の弁当を教室まで運ぶのは
面堂ではない誰か(黒メガネとか)が
やっていると思うのだが、
弁当を忘れる、なんてことがあり得るのか?
仮に手配をしくじったとしても、
すぐさま再手配されるだろうに。
この黒子の台詞も、
当時のファンジン界隈では重宝されたなー。
腐った刺身の描写は
アニメ版の方が訴求できていたのだけれど、
そのギャグをどのぐらいのテンションで
取り扱うか、という点において、
原作とアニメとでは大きく違いがあった。
原作では、その取扱いの小ささが、
そこを面白がる喜びを引き出しているのだと思う。
もっとも、じゃあアニメの方の
腐った刺身!汚ねー!気持ち悪りぃー!
というやり方が間違いかといえばそうではないし、
原作「うる星」でも
そういう類のギャグは散見されるので、
TPOに合わせて、という感じだろうか。
このコマは、
相当、映像に対する憧れを感じる。
留美ックでは定番のこのギャグ。
ここでは面堂が仰天するには至らず、
たじろぐ程度に抑えられている。
再利用するごとに成長させられるギャグなのだが、
再利用するにつれ、
小ネタにしていく、などの気遣いが
必要だなとは思う。
「なによ!」という台詞は
小娘っぽくてちょっといいな。
了子が発するにふさわしいかどうかは置いといて。
黒子のツッコミはイコール、
ギャグの説明だと思われるが
“女好き”、ではなくて“食い意地”にしたのか…。
あたるには、食に対する卑しさは
あまりなかったような気がするけどなぁ。
小市民的なセコさは何度か見た気もするけれど。
食中毒の危険を冒してまで、というなら
女性への執着のほうにしたほうが
説得力がある気もするのだが、なんでだろ。
「(了子への)誠意」や「捨て身の愛」という
台詞を肯定してしまって、
ギャグにならないからだろうか。
コースケたちが「アホらし…」と言っているが、
それは何に対してなのか。
例えば犬も食わない夫婦喧嘩というのもあるが
面堂と了子は夫婦ではない(あたるとラムに
対する「アホらし…」でもないだろう)。
了子の芝居クサさに閉口しての
「アホらし…」なのだろうか。
しかし了子はかなりの美少女なのである。
クラスメイト達がそっぽを向くのは少し不自然だ。
凝った台詞。
読み飛ばしたらもったいない。
「やっておしまい!!」は、どうしても
おユキちゃんの声で再生されてしまうんや…。
そういえば今回、しのぶがいなかったな…。
めんどくさい展開になりそうだったからかな。
そんなこんなでこのエピソードは終わりだが、
次週のエピソードに続いていく展開となっている。
了子の紹介エピソードとしては
とてもまとまった回だったのではないだろうか。
続編の「面堂兄妹!!=その2=」も
ドタバタにしては面白いので、
もうちょっと続きます。