この週末は台風10号が接近する予定である。
当初3つの台風がフォーメーションを組んで
オリンピックを蹂躙しにやってくると
いわれていたが、
そこまでひどいことにはならなさそうだ。
台風10号は、規模としても
さほど大きくはなさそうで、
しかし夏季休暇に入る前の貴重な週末を
雨の予報で意気消沈させるには充分な存在感である。
台風が来なかったとしても
コロナが猛威を振るっているので
特に出かける予定もなかっただろうし
雨が猛暑をやわらげると思えば
それはそれで実利的なのかもしれないが。
さて台風といえば
うる星「台風は楽し」(10-7)である。
アニメ版の「パニックイン台風!」も
遠藤麻未氏のかわいいラムが堪能できて
とても良作だった記憶がある。
まずは扉絵から。
ラムの肢体に目を奪われるが、
背景の洪水に流される家屋の作画が凄い。
黒塗りのコントラストもあって
楳図かずおか藤子Aか、というような力作だ。
この頃は未曾有の災害は想像上のものだったが
ニッポンが震災や水害を何度か経験するうちに
“非常食”というものの知識も構築されて
今やこんな、お菓子やらジュースやらを
準備する家はないだろう。
停電が長引くのであれば
冷蔵庫内の食材を使ってしまうことが先決だし
最初の24時間などを乗り切れば
食料の配給も行われるだろうという知見も
一般に浸透しているだろうし。
尋常ではない喜びようのテン。
うれションしそうな勢いである。
台風時、窓に木板を打ち付けるという文化は
僕の回りでは見たことはない。
このエピソードの雑誌掲載時の昭和56年であれば
ほとんどなくなっているのではないかと思うが
この行為で
“密室”(的な状況)を作り出しているので、
このエピソードとしては必須なのである。
なんと邪気の無い表情。
まぁ実際、友人たちと一緒にいる時のあたるは
“キャラ作り”しているのかもしれず。
雨漏りか…。
後ろのコマを見ると瓦葺きでもないようだが
そんなにするものか?
僕は平成半ばまで集合住宅住みだったから
よく知らない世界だ。
アニメ版であたるの父が
ローン地獄を嘆いている印象が強いから、
最近建てた家かと思っていたけど、古いのか…。
あたるの出生と同時に建築、であれば
築16年ぐらいだから、
古いというにはあたらないように思う。
中古物件をローンで購入したのだろうか?
携帯用Gコンの描き込みがすごい。
面倒なので“アホ機械”にしてお茶を濁す、
ではなく、ちゃんと向き合っているところが
たいへん素敵である。
また飯椀の模様が不思議なことになっているが
これは他のコマで飯椀をそういうふうに
描いたからなのだ。
極めて実直であり、誠実である。
ほんとすげえなぁ、この背景。
ウソみたいだろ。ギャグ漫画なんだぜ。これで。
漏電感電待ったなしである。
ブレーカーもぶっ飛びそうなもんだが。
このページでのラムは
常識を持ち合わせない無垢な感じが描かれていて、
見ていてたいへん楽しい。
口元とか肩の入り具合とか指先とかに
松本零士っぽさが。
おいおいもう浸水2m超えてるやん。
この数年でもこのレベルの水害は現実にあったので、
漫画の話と笑ってばかりはいられないのだが……。
なぜ下の水にGコンが作用しないのか。
雨水と氾濫水の、成分の違いなのか。
パニックものの王道的なシーンだ!
実に正しい!!
上下からというのがまたナイスアイデアで、
無印スター・ウォーズのゴミ圧縮部屋を彷彿させる。
このコマの作画は立体的で遠近感もあって、
とてもいいなぁ!
今にも動き出しそう、というか
脳内ではもう動いて見えています。
当時このボケには笑ったなぁ……。
ヘタレな父親を頑張らせておいて
やっぱりポンコツ、という構成は
かなり先進的だったように思う。
潜水艦が沈没するパニック映画などでの
救助における共通言語、
こういうのを楽しむためにも
漫画以外の知見を広げておかなくては、
と思う青春でした。
ご近所さんがポジティブに片付けているが
これ完全に激甚災害である。
「どうなさいました」じゃないよ……。
まぁ一晩で元に戻るギャグ世界なのだけど、
もうこういうギャグはできないのかな。
たくましく困難に立ち向かう感じでも
NGだったりするのだろうか。
このエピソードを楽しめた世代で幸せでした。