今期見ているアニメの中に
「かげきしょうじょ!!」というのがある。
以前からスポ根は好きなほうなので、
「かげきしょうじょ!!」も
女子たちが頑張っている姿がたいへん好ましい。
彼女らは“歌劇”の世界を目指していて、
物語中ではそれは「紅華歌劇」とされているが
言わずもがな、「宝塚歌劇」がモチーフである。
僕は“宝塚”には全くうとくて、
観に行ったこともなければ
テレビの宝塚番組をちゃんと
通して見たこともないのだが、
阪急沿線に住んでいたこともあって
“宝塚”の存在感はよく感じていた。
その“宝塚”をネタに取ったのが
「宝塚への招待」である。
なんだろうねぇ、このネタの取り方は。
身近にきっかけがあったんだろうなぁ。
まぁそれはいいとして、レビューを始めよう。
漫画でも「アバン」というのかな?
タイトル前の導入部は
“宝塚”のイメージから始まる。
薄ぼんやりした記憶の描写なのだろうけれど
導入部の作画にしては物足りない。
すぐ下の真彦少年の表情と
タッチが合っていないのも気になるところだ。
表紙である。
誰なのかというと、歌劇団の男役のわけもなく
主人公の真彦なのだろうが、
後に出てくる“あしゅら男爵真彦”の左面なので
実質は、おばあちゃんの肖像ということになる。
花輪で囲んでいるから、
“遺影”の趣きもある。背景黒いし。
ま、見開きで見ると目線の先に
当のおばあちゃんの遺影の絵があるのがアレだが。
1993年6月に亡くなったおばあちゃんは、
余裕で戦争体験者だ。
宝塚音楽学校を受けたのは
年齢的に考えると、戦前だったことだろう。
ビジュアル系だ。
ここで半分ぐらいオチは見えたようなもんである。
見えたオチに至るまでを楽しむ、という
水戸黄門やコロンボ的な世界でもある。
孫だけがこういう配慮を見せるというのは
ちょっと不自然だけどなぁ。
ポスターが主張しているところとか
伏線の仄めかしがハンパないけど。
こんだけ“宝塚好き”を
認知されてるおばあちゃんなら、
祭壇周りに“宝塚グッズ”を
たくさん飾ってもらってる気がするんだが。
同好の士も、葬式にいっぱい来ているようだし。
この人あたりが
宝塚のネタ元の人なのかもしれないな。
好感持てるような感じに描かれてるし。
鳥坂先輩もよくおっ立ててたが
こいつのはなんつーか下品だよな。
頁をめくる前のキメゴマだから
強めに描いちゃったのかもしれないけど
血の繋がった祖母に中指はないわー。
歌舞音曲ってなんだ?
カタカナでルビ振ってるところから察するに
こいつらが作った音楽ジャンルの造語か?
と思ったら普通に辞書に載ってる言葉だった。
お恥ずかしい。
渋谷eggmanとは、結構やるやん。
この棒立ち、笑うとこだと思うんだけど
仕掛けがイマイチでそんなに笑えないんだよな。
彼らはビジュアルだけのバンドというわけでも
なさそうで、であればまず
音楽性が問われるべきだと思っているので、
ボーカルが棒立ちだからって
無神経に笑っちゃいけない、って
一歩引いちゃうんだよな。
たぶんその辺、
最近のお笑い界における、
暴力性のある笑いをとりまく世論と
同じことなんだと思う。
真彦を含むバンドメンバーは高校生なのだが、
高校生である必要はあるのだろうか。
まぁ社会人にしてしまうと
生活基盤を問われたりしてめんどくさいんだろうが、
大学生あたりということにすれば
もっと自由に動かせる気がするんだけれども。
酒や煙草も小道具で使えるし。
えっ、ボーカルは声と歌唱力で決めろよ。
そもそもアミダで決めたってのが有りえないし、
アミダで決めたようなバンドが
真彦の棒立ち気にするなよ、って話でさ。
昔の記憶と見せかけて、実は
憑依されているときの視覚情報だった、という
いわば漫画における“叙述トリック”である。
これはちょっと手が込んでいる。
見開きを使った歌劇の舞台の描写は
たいへん見ごたえがある。
手法はアバンの絵と同じっぽいけれど、
高橋留美子氏お得意の、
パースが利いていたり斜めに傾げたりといった
テクニックが絵を引き立てていると思う。
劇場で解放された真彦。
この後3回ほど、なんとかして穏便に
彼の身体を使わなくちゃならないのに、
ずいぶん雑なやり方だ。
霊感強いはずなのに、
素人同然のビビり具合いだ。
霊界に持って帰れなくても、
お買い物するだけで楽しいんだろうな。
柚子原の妖怪アンテナ的な能力として
後々でも使われるかと思ったが
そんなことはなかった。
「パシャ」って何の擬音だろう。
この頃は舞台の撮影可だったのか?
それともおばあちゃんの
心のフィルムに焼き付けている、
みたいなことの表現なのか?
どう違うんだよ?
と思ったら次のコマでは話が終わってて、
なんだか繋がりが悪い。
すぐに街頭インタビューが映るから
困惑することはないけど、いろいろ雑だなぁ。
おっとっと。
おばあちゃんのお友だちのこの尼さん。
不吉な人物からストーリーテラーへと
大きくポジションを変えているが、
最後までギャグをやらせず、
まともな人で通したのは英断だ。
この人がいるから
安心して読み進められるような気もするのだ。
ずいぶん長くなったので今週はこの辺で。
次回に続きます。