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メガネかサトシか リメイク版アニメ「うる星」に寄せて

リメイク版アニメ「うる星」について語られる中で
たいへんよく出る話題が
“押井色”と“メガネ”についてである。

押井氏が今度のリメイク版に関わるかといったら
ビジネス的にそれはまずないだろうと思うが、
そもそもリメイク自体が
およそ考えられないとんでもないことだったので、
可能性はないと断言することはできない。


僕自身は押井ファンではなく、
パトレイバー」も「攻殻機動隊」も
通りいっぺん眺めただけなのだけれども、
それでもアニメ旧「うる星」における
押井テイスト及び「B・D」については
肯定的、というかたいへん好きである。

ただそれでも、
今の時代に“押井テイスト”の「うる星」は
ちょっとよろしくないだろうな、と思うのだ。

まずその最たるものといえる
メガネの“長台詞”だが、これは
今どきのアニメではうまく演出できないだろう。

メガネがマニアックに熱く語るシーンは
当初「俺たちの情熱の代弁」であったが
やがて「自虐ギャグ」となっていった。
それでもアニメ旧「うる星」においては
デカい声で喚く場があっただけまだマシだ。

今日でも漫画やアニメで
そういうキャラは見られるが、
だいたいが他者にまともに取り合ってもらえず、
ややダメな、扱いづらいトホホなキャラとして
画面の向こうで、または見切れながら
勝手に喚いているように描かれている。

要するに今の時代、デカい声の奴は嫌われるのだ。
陰キャが自己満な内容を喋るならなおさらだ。

テンションの問題でもある。
押井氏の演出には
ハイテンションな場面が欠かせないが、
今のこの鬱屈した社会にそれをやられても
ちょっと厳しいのではないだろうか。

「お黙り!」とか
「聞いとんのかおんどりゃあ!」的な、
そういう、勢いで相手を抑えこむようなギャグは、
この時代にはちょっと受け入れられにくかろう。


そしてそれは、
うる星やつら」という存在にも言えるのだ。

原作を、昔の作品として読む場合には
まったく気にならないことが、
新しくリメイクされて提供されたら
すごく気になる、ということはあると思う。

「うる星」のギャグは当時の最新ギャグであるが
そこから文化も進んだし、
何が面白いかの基準も変わった。

「うる星」には、
強引さで笑いを取るエピソードも多々あるが、
それは今の時代にそのままやるには
ちょっと苦しくないだろうか?

狭いターゲットのおっさん達が
懐古的に喜べばいい、と思っているかもしれないが
おっさん達だって日々新作アニメを見て
アップデートしているのだ。


さて。

メガネかサトシか、という問題は
“メガネ、パーマ、チビ、カクガリ、そしてあたる”
という男子グループがクラスに存在しているのか、
それともあたるのクラスに
“サトシ”や“コースケ”がいるのか、
という問題でもある。

今の時代に高校の教室内をデザインするなら
どう考えても後者だ。

集団のパワーが希薄ともいえるが
その反面、個体と個体を繋ぐ糸は
しっかりしたものとして深く描く、
それが令和の若い人たち
共感を得てもらえる描写なのではないかと
僕は思う。


だから本当はもういっそ、新「うる星」は
令和の話にして、ブラッシュアップしてほしいと
僕は考えているのだが、
いろいろあってそうはならないのだろう。

まぁでも素人が考えるようなことは
プロは当然わかっているというのが僕の持論なので
どう料理してくるのか楽しみではある。

今の僕はリメイク版に対して
ラムの可愛さや作画よりも
文化的な部分に最も興味がある。

どうであれ、信念をもって作れば
きっと面白いものになると思うので
がんばっていただきたい。

どうかよろしくお願いいたします。