先日、某大型掲示板で
平野文さんの「好きしてチックン」が
話題に上っていたので、「!」とばかりに
押し入れから引っ張り出してみた。
自分ではレアだろうと思っていたんだけれど
メルカリの過去出品など見てみると
無くはないもんだなぁ、と嘆息ものである。
次は「JAZZ TRIP」とか
「JAM TRIP」で勝負してみっか。
さて、北京五輪も終わり、
ロシアのウクライナ侵攻が現実味を帯びてきた昨今。
少数部族の人種問題を搔き消すかのように
ルール違反の失格問題や
ドーピング問題で荒れた五輪だったことでもあるし
やっておくか、「プリマ」を。
というわけで、
うる星やつら「プリマの星をつかめ」(29-7)を
レビューすることにしよう。
しかしあれです。今までこのブログで
どのエピソードを取り上げたことがあるのか、
イマイチ自信がないんですよね。
その辺もそろそろ整備するべきかもしれません。
ついでに書いておくと、このブログは
スマホ表示の場合、
過去記事を検索しづらいデザインとなっていて
ご不便をおかけしていますが
これは実は無料での運用のためでして。
いやまぁ、がんばってコードを書き込めば
スマホ表示も整えられるらしいのですが
なかなか腰が上がらず。
もうちょっと余裕ができたら
その辺りも整備しようと思っています。
それまではしばらくご容赦ください。
さて「プリマ」であるが、
掲載当時、一部界隈では
マンネリの続く「うる星」において
新機軸を打ち出したエポックメイキング的な
エピソードなのではないか、
という評価があった。
「プリマ」は主役が星屑カンナであり、
彼女に対して“うる星レギュラー陣”が
関与してくるような作りになっていて、
いわば「うる星“外伝”」のような趣きである。
特筆すべきは「プリマ」の場合、
徹頭徹尾“カンナ目線”であることだ。
エピソードの最初から最後まで、
カンナのいない場面がない。
同じような手法のエピソードは他に
「怪人赤マント」(5-5)や
「個人教授」(6-1)、
「くノ一」シリーズの奈良と京あたり(6-5,6)、
「喫茶店への出入りを禁ず!!」(12-3)
などが挙げられるけれども
「プリマ」以外はどれも作中に、
レギュラーキャラ陣の秀逸なギャグが
挟んであったりして、視点の変化がある。
ある意味それらは、
「うる星」があたるの事件簿である、という原則を
守ったものだといえるわけだが、
そこを吹っ切った「プリマ」は
やはりかなりの冒険作といえるだろう。
舞台はバレエ教室から始まる。
ステロタイプのバレエ教室の有りようを
おちょくったような描写だが、
このエピソード(1985)が描かれたのは
「スクール☆ウォーズ」(1984)よりは後、
ドラマ初代「スケバン刑事」(1985)と
同時期、といった感じだ。
漫画ファンやアニメファンのみならず、
一般的にも“パロディ”が盛り上がっていた時期で、
1988年には「みなさんのおかげです」の
放映も開始され、「トップをねらえ!」も
リリースされ始めた、そんな時代である。
読み飛ばしてしまいそうだが
おそらくここはギャグということでいいのだろう。
いわゆる世の“加速装置使用中の時間停止ギャグ”の
逆バージョンといえる。秀逸である。
花札の“萩に猪”(文月7月)は“臥猪”、
つまりしゃがみ込んだポーズの猪が
モチーフらしいですよ。
ちなみに「極彩のペアルック」(30-9)の
“牡丹に蝶”は水無月6月。
カンナの台詞が逆説に続かないのが気になるな……。
かろうじて、ライバル“花鰹”さんの名前が
かかっている名残りが。
半魚人(の子供)を持ってきたのは
バランスとしてとても素晴らしい。
悲惨な事故になる心配もなく、
安心して見ていられる感がある。
半魚人がしっかりした連続演技を見せること自体
ちょっと珍しいことでもあって、
変化をつけようという気概を感じさせられる。
この燃えサカるカンナはちょっと感じが違うな。
それまでの浮世離れした風情とは違う、
血の通った感がある。
竜之介のいつもの所作過ぎて気付きにくいが
前のコマの“女らしい”を受けてのギャグだ、たぶん。
わかりにくいなぁ、もう。
前のページの「タイヤ四個」を受けてのギャグだが
カンナの頑張り顔
の挿入と、ページの移動でちょっとわかりにくい。
カンナにはやらせておきながら
竜之介は楽をしているのも、
竜之介の真面目な性格を考えると
どうにも腑に落ちないのだ。消化不良である。
竜之介と二人で特訓をしているときはよいのだが
バレエ教室という、節穴コーチもいるところでは
“コーチ”だけじゃないほうが良かろうに。
ここで、周囲を巻き込んで
“成功”を主張しておきながら、
空手道場に鞍替えしているのは
どういうわけなのか。
カンナが望んだのか周りがそうさせたのか。
目の前を横切る竜之介を
ガン無視するカンナにせよ、
“周りが見えてない不思議ちゃんのカンナ”
であればそれでもいいんだけど、
このエピソードが
“まともな感性のカンナが
不条理を半ば受け入れる様子”を
ギャグの根底にしているので
ちょっと苦しいな。
まぁそこをしっかりすると
「勇気ある決闘」(23-2)
をなぞることになるし、
押し通した結果が
「宝塚への招待」なのかもしれないけど。
ともあれ、「プリマ」は
なかなかの意欲作であったことは
間違いないだろう。
それが「うる星」であったかどうかは
なんともいえないところだが。〈おしまい〉