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「パパは世界一だ!」 うる星「父よあなたは強かった」レビューその2

さて、一週空いてしまったけれども
うる星「父よあなたは強かった」(3-1)の
レビューの続きである。

時は1173年。
ファンタジー全盛の昨今において、
こうしっかりと時代と場所を明記しているのは
なんだか新鮮に感じる。

史実としても、その時分 義経
遮那王として鞍馬寺に暮らしていたそうだ。
ちゃんとしてるねぇ。
そういうリアリティがまた、
学校で教わることとリンクしたりして
読者の知識を広げるのに貢献したんだろうなあ。

クラマ姫とあたる達が転送されてくるところだが
この表現に一コマ使うところがいいよな。
スピード感を損なうデメリットも
あるかもしれないけど、
いつか見たSF特撮のあの感じ、という
クロスオーバーした魅力があると思うのだ。

カラス天狗(旧)を薙ぎ払う牛若丸。
この複雑な効果線と書き文字を見よ!
刀や衣服の動感、吹っ飛ぶカラス天狗たちが
見事に一コマで描かれている。
左下のカラス天狗の羽が
コマからはみ出しているのも素晴らしい!
漫画ってこれだよな!

そして間髪を入れずに「ぶぁーかめ」のギャグだ。
この緩急、変幻自在、天才か。

「まだわからんのか!」というが
これでわかったらエスパーやろ……。

旧アニメでクラマ姫を演じたのは吉田理保子さん。
彼女によるクラマ姫は
いわゆる“お色気ムンムン”&“がなる”感じの、
やや幼稚かつ過剰な演技であり、
彼女がそれまで演じてきたような
美少女キャラの演技とは違っていた。

この辺りはアニメの演出の方針だったのだろう。
また、アニメ「うる星」が
美少女を取り揃えた作品、という売られ方では
なかったということでもあるのだろう
(一部の商売人は判っていたようだが)。

アニメは子供の見るもの、
というような感覚がまだあって、
子供向けは騒がしく、けたたましくしておけば
いいだろうという意識の人が、
制作側にいた時代なのではないか、と思う。

そこら辺が洗練された時代に作られる
令和リメイクアニメ「うる星」が
どんなクラマ姫を見せてくれるかは
ちょっと楽しみだ。

この鞍馬寺の作画カロリー!
さすがの説得力である。

変装の稚拙さに不安を感じるあたる。
彼がまだ、普通の感性を持っているということだ。
そして泣き笑いになりながらも
指令に従わざるを得ない卑屈さ&ペーソス、
“どこにでもいる少年”だからできる表現だと思う。

「すきものっ!!」、
このギャグはリメイクアニメでは
文化の違いでもう無理だろう…。
大衆雑誌やスポーツ新聞、ゴシップ番組などの
ゲスい三流コンテンツが
身近にあってこそのギャグなのだ。
それとも通らないとわかっててあえてやるか…?
僕としては、台詞を含めてギャグを丸ごと
見事にリメイクしてほしいと思っているのだが。

続く「さいでした」にしても
太鼓持ち”という存在の概念を、
読者が教養として持ちあわせているから
洒落っ気のある台詞として通用するんであって、
ただ単に「なんか不思議な言葉使い」というんじゃ
面白さは目減りするんである。

まぁそれが、
文化が滅びるということなんだろうけれども。

バストトップも見せていないのに
「裸体」と称されているのは
令和の現代においては違和感があるだろう。

ラムの衣装であるビキニは、
グラビアアイドルのアグネス・ラムが
1975年に日本で広めたのだが、
この「父よあなたは…」掲載は1980年だから
それからわずか5年ほどしか経っていない。

その頃の世の中には“ビキニは裸同然”という意識が
まだまだ根強く残っていたのであろう。

牛若丸に色恋の手ほどきをしようとするあたるだが、
これは実際の日本において、
鞍馬山烏天狗が牛若丸に剣術を教えた、
と言い伝えられていることのパロディだ。

あたる(=カラス天狗)が牛若丸を指導する前に、
反対に牛若丸の弟子になろうとしているところが
話にアベコベ感があって秀逸である。

牛若丸が色ボケになったら困るなどといっているが、
色ボケにしたいのはクラマ姫の種族なのである。
種族の切実な願いを差し置いて、
理想のパパ像を守ろうとするクラマ姫は
ファザコン極まれりだな。

弁慶が煙草を吸っている。
煙管(キセル)がもっともらしくて、
シリアスなのかギャグなのか
とっさには判別できないが、
平安~鎌倉時代の日本には
まだ煙草の文化は入ってきていないので、
サングラスと同様、ギャグである。

ただし江戸の小咄において、
武蔵坊弁慶と煙管はちょっとだけ縁があるらしい
高橋留美子氏が知ってか知らずか。

弁慶に声を掛けたラムこそが千人目の女なのだが、
なぜ襲わなかったのか。
意外と正面から来られるとダメなタイプなのか。
まぁ襲ったとしても返り討ちなんだが。

弁慶が牛若丸を呼び止める台詞が
前日の京のガールハントと掛けてあって
実に素晴らしい。

というか、弁慶の千人斬りを
女千人斬りに変えたのが天才的なのだ。
なぜというに、牛若丸を襲うにあたって
(物語通りの)男千人斬りのままでも
まったく問題ないからなのだ。

なのに筋書きをひねって魅力を増す、
本当に素晴らしい。

カラス天狗が言っているのは
いわゆる“タイムパラドックス”というやつで、
今では広くラノベなどで使われるネタだが
当時はまだそれほど認知されていなかった。

バック・トゥ・ザ・フューチャー」の公開も
「父よあなたは…」の数年後だし。

もっとも「ドラえもん」には
過去改変のネタがあったけれどもね。

あっさり引き下がる弁慶。
このテンションの緩急もたいへんに魅力的だ。

「顔がままならぬ人」は
漫画史に残る名セリフだと思うんだけど
「うる星」が初出なんだろうか。

「ひらや」もすごいし「crow義経」もすごい。
「うる星」で初めて生まれたギャグだとしたら
つくづくすごすぎない!?

「さらば!!」という牛若丸。
この牛若丸の表情、特に口のラインは
引き結んでいるとも取れ、
笑みを浮かべているとも取れ、
絶妙に牛若丸の心情を表していて、最高である。

牛若丸とクラマ姫の繋がりが説明されているが、
義経が没してからこの「父よあなたは…」掲載まで
ざっと790年ぐらい経っているのだ。

クラマ姫のママが、
(地球時間で)平安時代の人なのか、
それとも過去の日本にタイムトラベルしたのか、
その辺はよくわからない。

そこから1代しか代変わりしていないのだから、
クラマ姫の種族の寿命が長いのか、
ママもその後コールドスリープしたのか…。

まぁゆっくりと人生を過ごす種族なのだろう。


あたるは牛若丸からは
全てを投げうってでも理想を追いかけろ、と
教訓を得たが、
その理想というのが両親も嘆き悲しむ
「女千人斬り」であった。

ここでの「女千人斬り」とはもちろん
武器で女性を襲うことではなくて
女性千人と交際する、ということなんだけど
これ、牛若丸ではなくて
弁慶からのインスピレーションなんだよな。

タイトルからして“父”にこだわっているので
ここはなんとか、
牛若丸由来のオチにしたかったところだが。


まぁしかし中身の濃いエピソードだった。
これで連載1回分だもんなぁ。
満足感ハンパないです。



さて、
リメイクアニメ「うる星やつら」は
10月開始とアナウンスされたけれども
これ毎週レビューはしないつもりです。。
他にやるサイトあるだろうし。

気になるところがあったら
言及すると思うけれども。

るーみっく っちゃあ るーみっく なんだけれども
毎週毎週、令和アニメ「うる星」で埋まるのも
このサイトとしてはちょっとね。

どっちかっていうと、
付随するもっとくだらないことについて
あーでもないこーでもないと
語っていきたいなぁと思っています。

その時はまたよろしくお願いいたします。