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元都知事のお触りに想起したわけでもないですが。 めぞん一刻「惣一郎さんっ!!」レビュー


先週はぐずついた天気が続いたが
来週は雨予報もないようで(東京地方)、
梅雨も明けたのではないかという様相だ。

梅雨といえば露子であるが、
今回は逆張りで、
めぞん一刻「惣一郎さんっ!!」(1-2)
をレビューしようと思う。

リメイクアニメ「うる星」の余波か、
「うる星」を扱った方が
アクセス数はいいみたいなんだけど、
まぁそればっかりになるのもね…。

扉絵は響子と惣一郎(+おまけの五代)。
“惣一郎”という名前の謎解き回である。

先日の高橋留美子氏のTwitterで触れられていたが
まだ五代と引っ付く予定じゃなかった頃の
ミステリアスな音無響子、というところか。

五代の持っている傘は
エピソード中で響子が五代に渡したものだけど
ジバンシィ似の、
よくわからないメーカー製という感じ。
1980年代のDCブランドブームを表しているのか。
現代だったら透明ビニール傘が
リアルということになるんだろうけれども。

ディフェンスする惣一郎の後足が、
餌に喰らいついている上半身と
別々に動いている感があってとてもいい。

背古井さん寄りの四谷さん。
回を重ねるごとに、
すっかり人懐っこい人になっちゃったけど、
こういう不気味なキャラクターだった頃も
とても魅力的だったなー。

朱美さんに脅かされる響子だが、
エピソードの後半で五代も同じ目にあっていて、

さらに続くページで

3段オチとなっているのが
心地いいテンポである。
“どいつもこいつも”ということでもあり、
響子と五代が“似たもの同士”ということでもあり。

四当五落”とは、簡単にいうと
受験生は4時間しか寝るな、という
教えを含んだ慣用句である。
スポーツの練習中は水を飲むな、と同じような
昭和のスパルタ特訓法、かな。

埃をあえて被り続ける五代が
“変態”ではなく“アホ”として描写されているのが
とても面白い。それは次のコマの

「おーい。 好きやでー。」にも繋がっていて、
五代というキャラへの愛着が増していく。

考えてみればこのエピソードはまだ第2話であり、
読者にはまだまだ五代を
好きになってもらわないとならないのだ。
それにはバッチリ成功しているといえるだろう。

単行本だと読みづらいが、五代のノートには
ひどい落書きが。

 

高橋留美子氏の作品では
めったに見ない色っぽい表情だ。
これは青少年のハートを掴みにきてるな。

「落っこちてたりして。」と
朱美さんに心配されるまでもなく、

こんなところで一寝入りしてしまうなんて
ほんとどうかしてるよね。
漫画っちゃあ漫画なんだけれども。

あきらかに“ラッキースケベ”ではなく
意図的に触りにいったことが
バレているにもかかわらず
「胸をさわったぐらいでなぐるかなー。」
というのもすごいけど、
「“彼氏”に操を立てているからかも?」と
いう連想になるのがもう、サイコパスっぽいなー。
すげえな昭和。

「わいせつ行為!!」、
このコマがギャグになっている構造を考えていくと
いろいろと興味深いわけです。すげえな昭和。

賢太郎がせしめた硬貨は
100円玉か50円玉あたりかと思われるが
(日本で500円玉が登場したのは
このエピソードが世に出た後の昭和57年である)、
いずれにせよ当時としても
カップラーメンのほうが価値があったのではないか。

そんなカップラーメンを
五代がまず差し出しているのは、
そのカップラーメンが、
五代が身銭を切っていない
“仕送り”の品だったからではないだろうか。

三鷹が犬嫌いだったこともあって、
犬の“惣一郎”は当初、重要なファクターだったが
めぞん一刻最終巻においてはかなり影が薄い。

さすがに15-2「契り」において
住民の皆によって茶々丸に連れていかれて、
あの晩に一刻館に居なかったことは
最低限の思いやりだと思ったけれど、
夫“惣一郎”の投影であり、
時に響子の相談相手でもあったはずの
犬の“惣一郎”の、
最終巻における素っ気ない扱いはまるで、
魔女の宅急便」において
“ジジ”が言葉を喋れなくなったような、
そんな時の移ろい・諸行無常・色即是空といった
一種の物悲しさを感じさせる気もする。

それとても、惣一郎の人物の大きさであり
一刻館という場所が、惣一郎と同化して
五代と響子を包み込んでいる、というならば
それはそれでハッピーエンドなことだけどね。