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MY CITY も さくらや も、もうないけれど… 「ハッピー・トーク」レビュー【前編】


最近、歌舞伎町の旧コマ劇付近は
“トー横”と称されて、何かと騒がしいようです。

昔、新宿のゲーセンをあちこち回ってた時期には
よく通りがかってましたが
最近はとんと足が向かなくなりました。
映画も歌舞伎町では見なくなりましたし。

猥雑な雰囲気を肌で感じる歌舞伎町界隈は
ある種の魅力があることも事実ですが、
最近はその魅力も
観光客や上京組向けの軽薄な部分と、
近寄りづらいディープな部分に二極化していて、
中途半端な中間層は、
あまり楽しめない場所になったような気がします。

さて高橋留美子作品で歌舞伎町といえば
ハッピー・トーク」です。

スピリッツ増刊号に掲載されたのは1984年夏。
めぞん一刻」連載真っ只中ですが
五代くんのキャバレー勤めよりもだいぶ前です。

なんでこんな舞台で短編が描かれたのか。

歌舞伎町を抜きにして考えれば、
少女と探偵という組み合わせは
角川映画探偵物語」そのものでして、
この映画は前年1983年の夏に公開されています。

ただどちらかというと「ハッピートーク」の
シケた中年男性の雰囲気は
TVドラマ「探偵物語」の柄本明
近いかもしれません。
このTVドラマは1984年新春オンエア。

まぁ、「ハッピー・トーク」の日菜子も
思いっきりショート・ヘアですし
探偵物語」インスパイアなのは
間違いないところでしょう。

というわけで今回は
ハッピー・トーク」のレビューです。  


扉絵は完全に釣り。
日菜子が別人である。

この絵から読み取れるのは
日菜子を巡る、中年男性と若い男子の三角関係。
それを強調するために
日菜子はケバく、より恋愛対象っぽく
描かれているのだろう。

それは頁をめくった次のコマに続いていて、

繁華街で男の腕にぶら下がる日菜子を
“不純異性交遊をするような女子”なのだろうと
先入観を持たせるための仕掛けだ。

死んだはずの母からと思われる手紙の文面。

「おにいさま」とあるが
日菜子は父母と“叔父・叔母”の
兄妹としての上下関係を当然知っているはずで、
その日菜子がこの「おにいさま」という文言を
不審に思わなかったのなら
日菜子の父母は、“叔父・叔母”の
弟・妹ということになる。

であれば、日菜子を育てたのは
“叔父・叔母”ではなく“伯父・伯母”となるはずだ。

“伯父・伯母”という漢字では通りが悪いというのは
重々承知のうえで、しかしこの作品は
推理ものとしての一面もあるのだから、
こういうところも
編集者がちゃんと管理してほしかったものである。

……まさかと思うけれど
“文面におかしいところがあったのに
日菜子がそこを見逃した、
結末はすでに分かっていた”という
仕掛けじゃないよなぁ。


エピソード中、一番の
日菜子のビューティーショット。
まるで日菜子が銭ゲバかのような掴みだが、
実はそんなでもない。残念。

憤る小尾くん。
まぁそうだよなぁ。
男の腕にぶら下がることはないよなぁ。

実際には調査に同行すべく
探偵を逃がさないようにしがみついてるわけだが
このへんはちょっと面白い。

ホテル“夢宴”を示す探偵 浜松。
しかし日菜子の母の職場だとしたら、
“またいずれラブホテルにお寄りください”って
ちょっと無理あるんじゃないか?

もちろんそれは
日菜子と浜松の二人にラブホテルに入らせるための
取ってつけたようなこじつけなわけだけれど。

帰れ、と言われて

意地っ張りキャラということで押し通したが
なぜ同行したいのか、
そのことで浜松にかかる迷惑や
調査の効率の低下をどう見積もるのか、
その辺はあいまいだ。

なんかこの時代って

「少女は無敵だ」的なキャッチフレーズで
少女の衝動的な行動に理由はなくてもいい、
みたいな概念があったりしたけれども、
今から考えると、それってわりとめんどくさいよな。

宿泊の必要な調査だと浜松が言っているが、
浜松はいったいどこの探偵なのだろうか。
日菜子の地元の人間なのか、
東京近県の人間なのか。

小尾が多額の交通費を使った様子もないし、
日菜子の地元が千葉・埼玉・神奈川あたりで
探偵 浜松もその辺りの人間なのかもしれないな。

あらかじめ電話してるならアポ取れてんじゃん。
宿泊費だってかかるんだからさー、
無駄足が少なくなるようにちゃんとやろうよ。

母であるという写真だが、
うまく叙述トリックが仕掛けられている。
しかしそれと同時に
日菜子の父親がどの人であるかも
最後まで明かされないので、
推理の選択肢が広がるようにもなっている。

とはいえ、この物語では
不自然なくらい実父に言及しなさすぎだけどな。

ソープ、なぁ。
それはつまり、実母と育ての父が
ソープで会っていることになるんだが、
日菜子の中では、なんかその問題、
既に受け入れちゃってるよね?
それでいいのか?
叔父の立場たるや。哀れなり。

人違いで済まなきゃなんだというのか。
ちゃんとアポとってんだから特に問題ないだろ。


とまぁここまでが調査1日目。
なんかたいへんなことをやってるけど、
本当は叔父さんに話を聞くのがいちばん近道であり、
それをしない時点で、
全てがおままごとと言われても仕方がない

結構長くなったので、次回に続く!!