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劇場版「うる星やつら 完結篇」レビューその2


※前回のレビューはこちら
さて今週も引き続き
劇場版「うる星やつら 完結篇」(1988)の
レビューを書いていこう。


ラムの実家に送られてきたビデオメールを
再生視聴するラムの両親。
動画データを、通信ではなく
メディアでやり取りするのがもはや新鮮だ。

…今でも作業データがウン百 GB 越えたりすると
メディアをバイク便で飛ばしたりする職種は
あるらしいけれど。

ラムが誘拐されたと聞いて
ラムの親父は軍を立ち上げるのだが、
その時の台詞が、原作では

「相手はタゴやっ」となっている。
これ、「タコ」の誤植かなと思っていて、
実際「完結篇」では「タコ」と
発声しているんだが…。

“間抜け”の意味合いが強い“タコ”を
この場面で使うかな!?と思って調べてみると
“タゴ”には知られざるこんな意味もあるようだ。

まぁ結構ヤバめの単語なので
本当にその意図なのかは
わからないところではあるが。

三田ゆう子さんの「ラムはいねえのか(ょ)」
という台詞、めちゃくちゃ上手いな!
直前の古川氏と神谷氏の掛け合いが
子供っぽいだけに、
自然な台詞がすっと入ってきてぐっとくる。

(連れ去られるのを)みすみす見逃したのか、
と問われて「どうしようもなかったんじゃ!」と
喚くあたる。
どうすることもできなかったのが無念だからこそ
原作では“返す言葉もなかった”と思うのだが…。



闇の宇宙へ向かうランの UFO の光跡を
“あたるが来てくれる”というインスピレーションに
繋ぐ演出。
ニュータイプ”を想起させる、うまい演出だと
思ったのかもしれないが、
ここで使ってしまったために、
UFO がニアミスで事故った時の

あたるの生き死にが問われる場面での
ラムのインスピレーションはない。
“光跡”を重用した判断は正しいのだろうか。

囚われの身のラムだが
嘆かわしいことにブーツを履いている……。

ビデオメールの時点でブーツなんだよなぁ。
ストーリー上の誤りなのはもちろんのこと、
高橋留美子うる星のフェティシズム
まったく理解してないな。



ルパの星の光池(エアポート)に
不時着するシーンは、
撮影班の仕事なのか背景班の仕事なのか
わからないけどすごくいいな。
いい表現にしようという気概を感じるよ。

仲間の到来を知り、
部屋を抜け出そうとするラムだが
ここでスタスタ歩くせいで
次のギャグが台無しである。

カルラの衣装…
メッシュじゃない…だと…?
PG-12 のレイティングでもかかってるのか?


あたるの婚礼衣装が、
原作の黒から白に変更されている。

カルラが用意したのだから黒いのが妥当なんだが
(対してラムの衣装は“光の宇宙”の娘を
嫁に取る、というプロパガンダ的なことで
白にしたと思えなくもない)、
ルパとカルラ、あたるとラムを
明確にグループ分けするために
あたるの衣装を白くしたのだろうか。
しかし、ではなぜラムのドレスを
原作の白からピンクに変更したのか。
そこには整合性がない。

これもしかして、「完結篇」では
カルラがヴェールを垂らすシーンがあるために、
あたるまで黒い衣装だと
喪服に見えすぎてしまうからじゃないだろうか
(原作にはヴェールを垂らすシーンはない)。

ヴェールにこだわるぐらいなら、
カルラの衣装のメッシュを
作画してほしかったけどなあ。


「カ、カ、カルラ…!?」「ルパ!!」
あたるとラムは発声なし。
これはいかんなぁ。
ルパとカルラは
あたるとラムの代理戦争をやってるわけで、
そのシンボリックなこのシーンを

ただのルパとカルラのトラブル(と、
それに巻き込まれた形のあたるとラム)に
しちゃいかんよね。

ルパと結婚するというラムに
詰め寄ろうとするあたるのセリフが
原作の「おまえは!!」から
「おまえなぁっ!!」になっている。
僕は、この改変はいいなと思ったんだけど
違う、と思う人もいるだろう。


子供の頃に無理矢理「好きだ」と言わされたのだ、
というルパに対して
「それじゃあ、あの言葉はウソだったのけ!?」
という「完結篇」のカルラ。
原作には、「それじゃあ」の部分がない。

カルラには、無理矢理言わせた自覚があって、
それでも(ルパを好きだから)
その無理を押し通そうという描写なのだ。

無理矢理言わせた「好きだ」は
単なる人質であって、
その言葉に拘泥しているわけではない。

そんな強引な手段の後だからこそ

“ぼろぼろぼろ”が光るのに、
なんで「完結篇」では
“ルパの言葉を信じ込んだ可哀そうなカルラ”
みたいになってんの。


ここでカルラの頭上が
“キュピーン!”って光るんだが
なんで光ったのか、まったく理解できない。
カルラがキレた演出?にしては
光線の作画も SE もまったく合ってないし、
いったい何なんだろう?

てっきり壁をぶっ壊して
弁天たちが乗り込んでくるのかと思ったよ。


やたら黒目がデカい四分一ラムだけど、
こういうのでいいんだよ こういうので

仲間たちがラムを救うべく脱獄するところは
そのタイミングが原作とは変えられた。
それはいいんだが、
食事をあてがわれたシーンと切り離されたせいで
「そろそろ行くか」がギャグではなくなり、
ただの傍若無人、乱暴なだけの行動に
なってしまった。
そのほうが面白いのはガキんちょだけでは?

「ダーリン、うちを助けて!!」と叫ぶラム。
この脚本家の書くラムは、
やたら助けてもらいたがりだよな。

あたるがラムを裏切り者呼ばわりし、
ラムを捨てて他の女を選んだという、
あたるとラムの気持ちが途切れたシーンだが
ラムのカットインなし。う~ん……。



塔から落下するラムとあたるに追い付けず、
「くそぉ!間に合わなかったか」と
歯ぎしりする弁天。
ということはラムとあたるは死んだのか、
ということになるが、
弁天がラムを“死なせるわけがない”。

次のシーンでのラムの復活を
より印象付ける演出のつもりだろうが、
この世界で何が大切なのかをもう少し考えてほしい。


なんでブーツなんだよ。アホなのか。

「完結篇」が公開された頃はもう
留美っくファンジン界を離れていたので
この改変が当時どのぐらい話題になったのか
僕は全然知らないのだが
フェティシズムというだけではなく
ラムの心情描写という意味で
ここの裸足はマストなはずなのだ
(世が世ならここでのラムは素っ裸でもいい〉。

公開からずいぶん経ったからかもしれないが
web 上にも、このラムの素足・裸足問題に
言及しているレビューは見つけられなかった。
しかしおそらく僕の知らないところで
このブーツ着用については
批判されていると思いたい。

頼むから、リメイク令和「うる星」は
ちゃんとしてください。


あたる達の乗った UFO が去っていくのを
見送るラム。

涙は白いトレス線で描かれていてよく見えないが、
劇場では程よい感じだったかもしれない。


ここまでトータルで 46 分。
30 分アニメで 2 週分だ。
「完結篇」はあと40分ある。
来週に続きます。〈おしまい〉
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