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(毎週土曜日中の更新を目指しています)









劇場版「うる星やつら 完結篇」レビューその3


アニメのレビューをここでちゃんと書くのは
これが初めてなんですが、
準備に結構時間がかかります。

通して見るのはもちろんなのですが
原作と見比べながらなので
シーンの並び方が変更されていると
何度も行ったり来たりしたりするし、
画面を撮るのにも手がかかるし。

画面の撮影については
意図的にデジタルなキャプチャーは避けています。

もともとこのブログ自体、
広告収入のようなものは付いていないので
営利目的ではないと言い切れるのですが
それでも人様の著作物をお借りするにあたって
引用の範疇だと思ってもらえるように
画質もなるべく下げているつもりなのです。

ただ、内容が批判に偏ると、
引用させていただいている手前
少し後ろめたくもあります。

しかしだからといって
批判はしないってのも
マチュア精神にもとる(悖る)と思うし。

苦虫を噛み潰されるかもしれないけれど
ご容赦いただければと思います。


さて、先々週先週ときて今週も
劇場版「うる星やつら 完結篇」(1988)の
レビューをしていきたいと思います。


舞台は地球に戻って因幡クン登場。
しかし黒いノブの話はカット。

いや、それでは未来への水先案内人である
因幡クンが出てくる必要性なくない?

ノブという概念は確かに原作読者じゃないと
通じないネタだけど、それを言い出したら
変なウサギの着ぐるみ男だって
充分説明を要するだろ…。

そして
「ラムとあたるが帰ってこない」というしのぶに

「不吉じゃ」と被せる錯乱坊だが
本来それは黒いノブが不吉なのであって、
ラムとあたるが帰ってこないのは
“不吉”ではなく“不穏”だろう。
話の削り方がどうもガバいよな。

TV シリーズの頃から
あたるの母のシーンは
意味もなくスタッフが頑張る傾向があったけれど
ここも突如として頑張ってるなぁ。

エヴァ破のアスカの料理シーンに先駆けること
20 年ですよ。

キッチンシンクってだいたい対面が壁なので
壁にぴったり超広角レンズを置いて
アングルハントするしかないのですよね。
最近はアイランドキッチンが出てきて
アングルに自由度が増しましたが、
庶民っぽさがなくなってしまうので
まだアニメの日常シーンには降りてこない感じ。

「(会ったこともない女に夢中になられて)
カルラがかわいそうだっちゃ」という
ラムの台詞を受けて
「ほったらこと、今さら…」と
自分のやったことを唾棄するルパ、そして

そんなルパに一瞥もくれず去っていくラムだが
ここは改変されていて、原作のルパの台詞の

カルラに想いを寄せているニュアンスが
消えているし、
そんなルパを見やって
あたるを(あたるの本心を)垣間見るラム、
という描写がない。


カルラのバッグに生えていたキノコを
夢邪気に鍋に投入するラン。
カルラは一応、キノコが蔓延しないよう
用心していた。

原作のここは、カルラの行動が不条理過ぎて
ほとんど地球侵略の先鞭隊のようになっているので
この改変は有りだと思う。

しかし“カルラの尻ぬぐい”という意味合いが
薄くなるので、
ルパの動きが変わってしまうのでは?
また変わるべきなのでは?という気もする
(星間条約にのっとって事務的に対処する、とか)。

このビジュアルは
思わずモザイクをかけてしまいましたが。
笠が閉じている状態の描写はどうなんすかね。

あたると対立し、「もう最高だっちゃ、
誰かさんみたいに浮気しないっちゃ」と煽るラム。
売り言葉に買い言葉とはいえ、
ルパとよろしくやってるということになるが
それでいいのか?
原作(ボーイ ミーツ ガール編)では
そういう意味に取れる台詞は
決して言わなかったラムだが。

カルラは井上瑤さん(小宮さんとの共演となる)。
つうことはルパとのカップリングは
セイラさんとマ・クベか。趣きがあるなぁ
(セイラさんとジョブ・ジョンでもそれはそれで)。


うわっ、出た! 傷心のラムが彷徨うシーン!!
ラムのラブソングラムのバラードといい、
やってくれるなぁ。
(2022.11.19修正しました)


ごっこスタートと同時に流れる、
コミカルな BGM。
そりゃ批判もされるわ…。

5 日目の、プロット上の穴である“人類への配慮”を
フォローする台詞は削られている。

「ボーイ ミーツ ガール」は
かけめぐる青春」に回帰する形で
SF 色をのせていると思うので、
こういうところは細やかにやってほしかったな。


「おれは絶対忘れない、『忘れるもんか』」と
ここであたるに言わせてしまうとは。

繰り返すことで観客の心に刻むようにするってのは、
ここ一発でただ一度使うよりも効果がある時にだけ
やるべきだと思うんだけれども。

こういうところは頑張るんやな。

「あとはあたるくんに頼るしかないわねぇ…」
とつぶやくしのぶと仲間たち。もちろん改変。
いやいや、あたるが頑張っているのだから
お前たちも最後まであきらめずに頑張らないと!!

この絵が

こう。身体はほぼトレスなのに、
なぜ表情は追わなかったのか。

声をあげて泣きじゃくりながら
ルパに抱きつくカルラ。
ここは“原作では無声”であるニュアンスを
アニメで再現してほしかった。

記憶喪失装置を止めるのは諦めて、
疲弊したあたるをモニターで見守る仲間たち。
彼らが、そうするはずはないんだよ。

アニメシリーズだから、「海が好き」を
ことさらフィーチャーするのはいいよ、
だけど 9 日目にやることはないだろう。

それはラム親衛隊も同様。
アニメシリーズだから出るのは構わんよ。
しかしだったら君たちも玉を投げるべきだった。
少なくともメガネは最後まで奮闘するべきだった。

この影、エロいな…。


あたる、落としたツノを拾わず(隠さず)。
ウソやろ…。

ラムの「…意地っ張り…」は
ここにかかってるんじゃないのか?
その行為に、あたるの本質を見て、
ラムの心が融けるんじゃないのか?

「言わない」「言えない」、
そのテーマがここに集約されているというのに、
ツノを拾わずに行ってしまったら
それもう、だだ漏れじゃん。


最後は鬼ごっこからそのままエンディング。
どうしても「 I, I, YOU & 愛」エンドに
したかったんやな…。

ここは好き好きかと思うけれど、
「ボーイ ミーツ ガール」という“事件”を踏まえて
後日譚のように、
連綿と続いていくあたるとラムの関係性、
という描写を見たかったなぁ、僕は。


「完結篇」は以上で終わりだが、これでよく
“原作準拠”なんていう評価になってるもんだ。

設定や絵作りは確かに原作のママのところが多くて
担当はこれでも仕事してるのか?と思うぐらいだが、
ストーリーや演出のほうは
変に手を入れられているせいで
たいへんもどかしい。

制作スタッフはもちろんプロなわけだけど、
正直、マンガを読むチカラというところには
疑問符が付く。
あるいは、観客のレベルを舐めているのか。

昭和と令和のレベルの違いはもちろんあって、
その分は差っ引かなきゃいけないけれど、
アニメは常に、原作を越えようと
頑張らなくちゃいけないでしょ。

越えるためにはまず、劣化してはダメなのだ。


まぁたぶん、令和になって
マンガを読むスキルも
全体的に底上げされているから、
リメイク版「うる星」では
素晴らしい映像を見せてくれることだろう。

それを期待しつつ。

井上瑤さんに思いを馳せて。〈おしまい〉