漫画・アニメのキャラクターの特徴のひとつに
「ギザ歯」というのがあります。
一般的には敵意を持ったり発奮した時などに
剥きだした歯列が
ノコギリのようにギザギザに鋭く尖る漫画的表現を
「ギザ歯」と呼称していると思います。
最近ではそれとは別に、
構造的に 歯がすべて三角の牙、
みたいな身体的特徴を持ったキャラが出てきていて
一部の特殊性癖の方たちに愛されているようです。
例えば“ばいきんまん”とか
「グレンラガン」の“ヴィラル”なんかが
そうなんですけど、
基本的に彼らは地球の“人間”じゃあない。
“八重歯”は人間にも普通にいますが、
そうではなく
歯がすべて獣のような牙で構成されていて
しかも上下で噛み合わせができる、というのは、
ホモ・サピエンスに設定するには
ちょっと無理があるらしく、
だいたいが“異種族”なんではないかなぁ。
さて、「うる星やつら」のラムは
しばしば牙を剥いた姿が描かれます。
ギザ歯というよりは、
発達した犬歯という感じですけど。
初期のラムは “宇宙人” “鬼” という
異種族らしさを強調するためか、
牙が描かれた描写が多用されていました。
「あなたにあげる」(1-4)
ラムには、身体的特徴として牙がある。
ラムに限らず、鬼の星の住人や
スケ番三人娘なんかにも牙がある。
で、そういう宇宙人たちと区別するためか
「うる星」登場キャラの地球人たちには
ギザ歯の “漫画的表現” が
使われていないようなんですね。
コミックスをひっくり返して見てみたのですが
これがほんとに無くて。
たぶん、異星人と地球人を
きっちり線引きしていたんでしょう。
で、面白いのがクラマ姫で、
このコマは「花婿、それは女」(15-9)ですが
牙が描かれています。
以後、クラマ姫の登場するエピソードでは
何度か同じように牙が描かれているのですが
「恋人泥棒;後編」(20-7)
竜之介と出会う以前のクラマ姫には
牙は描かれていなかった。
クラマ姫は宇宙人設定ですが
一応モチーフは鳥類だから、ですかねぇ。
「女になって出直せよ」(2-7)
「父よあなたは強かった」(3-1)
「口づけと共に契らん!!」(14-2)
14巻の面堂との絡みの時には牙がなかったのに、
さほど間の空かない15巻では、牙が描写された。
これは、漫画制作の経緯で
何か変化があったんだろうな、と
思うところです。
もう一人、牙の描写があるのが
「電飾の魔境」(29-1~4)の真吾。
「電気仕掛けの御庭番;後編」(29-10)でも
うっすら牙があり、
「愛の脳天逆落とし;後編」(31-2)においても
しっかり牙が描かれているので、
真吾はもう、牙がある設定なのでしょう。
出自はしっかり地球人のはずなのですが。
とまぁ、「うる星」においては
制約の下で“ギザ歯の漫画的表現”が
運用されたのかと思ったので
他の作品を見てみますと、
意外にもその手法は使われていないんですね。
一部の古めの作品しか調べていませんが、
見つかったのは「笑え!ヘルプマン」の
ひろみくんぐらい。
ひろみくんは変身するとはいっても
変異するわけではないので
これは漫画的表現なのだろうと思いますが、
まぁとにかく ひろみくんには
その手法が使われている。
でも本当に他の作品には見当たらなかったので、
結構厳密に運用されているみたいですね。
とりあえず、ラムには
ラブコメモードだろうがなんだろうが
常時“牙”があるはずなので
大口を開けた時にはお忘れなく。なんちて。
〈おしまい〉