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動きの物足りなさを指摘する


今週のアニメ「うる星やつら」Aパートは
レイ登場回である「愛で殺したい」だった。

うってつけなことに、作画は良かったが
アニメーションが良くなかったので
これをモチーフとして
気になったところを挙げていこう。

めちゃくちゃネタバレなので、
一応改行します。
あと画像は低画質のものとして
引用の範囲にとどめているつもりなんですけれども。













チ こ…これは…
どこかでも言われていたが
ぐつぐつ煮える鍋の中で、「凶」の字が動かない。

続くカットで動くからいい、というものではない。
であれば、最初の「凶」は湯気でよく見えないとか
文字を形成しつつあるとか、
いずれにせよ静止していたら不自然なのである。


チ き…奇態な… はっ!
錯乱坊の黒目が、瞼の影の中に入ってしまって
まるで白目を剥いているように見える。
設定の決まり事かもしれないが、
これはチェックが働いてないでしょ。
どうにかするには遅かったのかもしれないけど。


ラ ねえねえ!
4連発であたるにまとわりつくラム。
リズムはいいが、
そのどれもが口しか動かないスライドだ。
特にこのカットは、ラムと
あたるのいる空間とが馴染んでおらず、
またラムの横顔が真横過ぎて
立体構成として違和感がある。
これはおそらくラムの髪の外側の
白いハイライトのせいもかなりあると思われるが
作画設定が変わらないかぎり、
この浮いた感じは最終回まで続くのだろう。
おそまつさんじゃあるまいし
それでいいのか、と僕は思うけれど。


ラ 何か楽しいことするっちゃ
あ ちっとも片付かないじゃないか!
畳んだ布団の手前に…って
ラムは厚みのないパラッパラッパーかよ。
あたるの分の布団もしまわれているから、
という理屈はわかるけれど
この時だけでも布団を一組にして
ラムをその上に配置するとかできなかったのか。


ラ ダーリン、うち退屈だっちゃ!
ラムは口と顎しか動いていない。
ここで動かないのはチープな話で、
鬱屈した感情を、ジタバタした動きで見せた方が
より一層、“なんとかしてもらいたがっているラム”
という表現になるのではないのか。


ラ これからうちらは寝るっちゃ!
上半身のパーツを揺らしているだけやな…。
下半身もバタバタさせた方がいいと思うが。

そりゃそうとなんか榎本俊二 味ある絵やな。
嫌いじゃないなー。
ティッシュは描けても
枕を二つ描くのは無理だったか。


あ しのぶが来てから一緒に逃げてやる
あ ぎゃああ~!
真ん中だけ総作監の手が入ってるのかな。
そうではない前後のカットの絵の方が
ラムの顎が尖ってて、完全に僕好みなんだけどな。


ラ しのぶが化けて出たっちゃ
この絵はすごくいいな!
三角形の構図のお手本みたいな絵だ。
ラムの頭と身体の大きさ比率に
パース感の補正をかけているところもすごくいい!!

その構図を見せておいてからの


レ ぶも~っ!
このカットはとてもよかったな。
画面に入りきらない感じを書き文字に手伝わせて、
止め絵ではあるんだけど
とてもクオリティを高く感じました。
これが良かっただけに、その前段の

ここの尺が長すぎて面白さを殺してましたね。


ラ 帰れ帰れ~!
レ ラム。
ラムに叩かれるが左右に揺れているだけのレイ。
レイの感情が全く伝わってこない。
もっと顔の表情に演技させなきゃダメでしょ。


レ ラム…
レイの作画がめっちゃいいな!
顎の尖り具合、顔の輪郭、腰からの腿の生えかた、
手指の描き方、コスチュームの虎縞の密度、
やや俯いた状態でのツノの向き、完璧だ。
このレイは、
僕が夢見た令和クオリティのレイですわ。

その分(?)ラムのほうは
胸とか腰とかけっこう甘いけど。


ラ ほら!もう本性が出たっちゃ!
し レイさん、落ち着いて落ち着いて!
ラムとしのぶの口しか動かず。
ラムはともかく、
せめてあたるはビクビクするべきだし、
しのぶはレイを押しとどめる腕を
ブンブンさせるべきだろう。
なんならレイの後ろ姿が怒りに震えていてもいい。


ラ ものすごく卑しいっちゃ!
動いているのはレイだけで、
ラムは口しか動いていないが
レイの動きを目立たせるにしても、
ラムは指さすなりリアクションするなり
感情を動きに出すべき。
そうでないと、身体の内にとどめておける程度の
感情、ということになってしまう。


あ 一人で食う気だ。本当に卑しいやっちゃなぁ
ラムは眉毛と腕をプルプルさせているけれど
この後、感情を爆発させるのだから
鬱憤が溜まっていって我慢できなくなっていく様を
身体全体で表現したほうがいいのじゃないだろうか。
例えば背中が丸まっていくとかだ。


し ラム、やめて! この人泣いているわ
レイの首から下は立体感のある描写であり
影もそれなりに付いているのに、
髪には影が付いておらず、
なのに差し色のハイライトが主張しているので
首から上が浮いて見える。

しのぶなどは天使の輪の形状のせいで
立体感をまだ表現できているが、
レイの場合は無造作ヘアだから
ハイライトが立体感の描写にならないし、
青緑×オレンジというのがまた
平面性を促進してしまっていて、たいへん良くない。


ラ わあ~っ!こいつ昔と全然変わらないっちゃ!
あたるはどこを見ているのか。
ラムの元の位置を考慮してもおかし過ぎるし
その姿勢のキープ時間が長すぎる。


レ ぶも~っ!!
この令和の時代に、こんなサビの部分で
使い回しはないわ~。天丼にもなってないし。


ラ うちはダーリン一筋だっちゃ!
ここもラムは口しか動かない。
飛び付いた躍動感もなければ甘える仕草もない。
止まっていた方が甘えている感じがするか、
動いた方が甘えている感じがするか、
どちらが表現できるかは自明すぎる話である。


レ ぶも~っ!!
だからぁ~っ!! なんでここで動かさないのか!
めっちゃ動き映えするシーンではないか!
このコマが、アクションシーンではないというなら
なんだというのか!
(ただし1枚の絵としてはいいんだなこれが)

ラム動かず。全身写っているのにもったいない。

玄関を飛び出したあたるの、
直進の慣性を殺して右に曲がる動きがヘボい。
枚数を抑えるためかもしれないけれど、
そこもコミカルさを出せる場面でしょ。


あ ひぇ~っ!
ラムは髪の毛が揺れるだけ。
それはつまり
ラムは落ち着き払っているということですか。
そう捉えられてしまうんですが。

ラムは同じ絵で縮小をかけられたのみ。
髪の毛も揺れず。まったく慌てる様子なし。

ここでのラムも、口が開くだけで
身体は全く動かない。なお絵は超好みである。

ここも、ラムは同じ絵でスライドするのみ。
わずかに口が動いているけれど、
茂みを掻きわけるとか避けるとかの動きはない。


あ まだ追ってくるぞ
このシーンでもラムは
髪の毛を少し動かすだけである。
ここでのラムは
あたるにつきあって逃げているわけではなく、
まさに当事者として
レイから逃げているはずなのだが、
そこでの慌てふためきっぽさを
示す動きがないのはたいへん残念だ。

止め絵がすべて悪いわけではなく、
ここぞというところで止めるのはいいんですよ。
例えばこことか。
要所要所で止めるのは、
緩急という意味で重要なテクニックだとは思います。

いやしかし尖りアゴのラムはいいな。
このカットでは上から見ているから
むしろアゴは丸くなる道理なんだけれど、
そうしてなおアゴがこの尖りであるのは
僕的にとてもいい。


あ どんな場合でも食うことだけは忘れないんだな
ラ だから嫌なんだっちゃ!
このラムの耳はなかなかナニだな。
顔自体は顎が尖っていて好みだけれども。

動かなくても保つカットっていうのもあって
このカットなんかは古いあたる・ラム・レイを
消さずに複数組 描画しているわけなんだけど、
ひっきりなしに畳みかける感じを出すにあたって
このピョコピョコ感だけで、充分足りているのだ。
どこもかしこも動かなくちゃ不満、
というわけでは決してないのである。


母 あたる? いったいどこに…
なんだ? このレイもめっちゃいいぞ?
このアニメーターさん、漫画描きなんじゃ?

ただしこの二人を絡ませるなら
もっとニアな距離じゃないとダメなんでは、
とは思うけど。

自宅に戻ってきたあたる達。
まさかの使い回し。
これ、狭い家の中でどれだけ長い距離を
走ってるんだというところだけど、
背景を見ると、
部屋の中をグルグル回っているのである。
“堂々巡り”というやつで、
それは本当はギャグになり得るんだが
真横からカメラに捉え続けているだけなので
ここではギャグになっていない。
陳腐でもギャグになっているほうがまだマシだろう。

オチのレイの「ん?」という表情は当世風だ。
制作陣、まあ何か狙ってるよね。
だけどレイの鈍さっていうのはアホの鈍さであって、
腐女子向けイケメンキャラの“鈍さ”とは
ちょっと違うと思うんだけどな。


さて今回は、動きはともかく
作画的に僕好みの絵柄だったので驚いた。
顎が尖ったキャラクターは
僕的にたいへん喜ばしい。

スタッフロールを見てみるが、
総作画監督の浅野氏と清丸氏は
ほとんどの回で出ずっぱりだから、
彼らはこの作画の偏りには関係ないだろう。

すると作画監督の4人の誰かか、
作監協力の板橋氏ということになる。

作画監督の4人の表記順だが、
日本人が前じゃない順番になっているのが
印象的だ。ということは序列ではなさそうだ。

おそらくだが
Aパートが Cha Myoung Jun 氏と
Shin Hyung Woo 氏、
Bパートがはっとりますみ氏と森幸子氏、と
いうことではないだろうか。

過去の放送回のスタッフロールを確認してみると
第6回放送分に、Cha Myoung Jun 氏が
クレジットされている。

ここでの順番は最後なので、
これも推測だが「あたるの引退」が
氏の作業タイトルではないだろうか。

そこで改めてエピソードを見てみると

なにやら顎が尖っているし、
目の位置やバランスも
「愛で殺したい」に近い。


いやぁ、まったくの勘違いかもしれないが
今までは日本人スタッフの作画が
一番優れていると思っていたけれど、
もしかしたら、もしかしたら、
僕は Cha Myoung Jun 氏の作画が
一番好きかもしれない。

あぁ、これ本当のところを知りたいなぁ!!