ぼちぼちと更新していければ

(毎週土曜日中の更新を目指しています)









押井守氏の長台詞とか


成人の日も済んで、
はや2月が目前に迫ってきました。
正月がもはや
ずいぶん前にあったことのように感じます。


SNSでも一時賑わったのですが、1/4に
『Z世代声優が選ぶ!
昭和アニメのスゴい声優50人はこれだ!
人気アニメの超お宝映像とともに大発表SP』

www.tv-asahi.co.jp

という番組をやっていまして、
我が家でもチャンネルを合わせていました。


その中で、
千葉繁氏の出演作として紹介されたのが
昭和「うる星やつら」の64回放送
「さよならの季節」のメガネの例のシーンでした。

押井守氏によるアニメ「うる星」を
象徴するようなシーンであり、
SNSや5ちゃんねるでは
絶賛する声もあれば
見るに堪えないという声もあり、
人によってさまざま、という感じでした。

僕はといえば、
触られたくない敏感な部分に触れられるかなと
一瞬身構えたのですが、
よく知ったこのシーンが、正月のゴールデンで
大衆に向けて放映されているという事実のなかで
意外にも「ふふっ」と少し笑ったのです。

面白いなぁ、すごいなぁと思ったんですね。

このシーンって、この作品でしか見れないし。

「うる星」らしいかそうでないかという、
その問題を別にすれば
このシーンはめちゃくちゃクオリティ高いし。


押井氏の「うる星」でよく嫌われているのが
メガネに代表される台詞の長回しだと思います。
まぁわからんでもないです。

いわゆるオタクのイタさというのは
今日までにかなり槍玉に挙げられていて、
あまり見ることもなくなりましたから
逆に今見るとしんどい、というのはある。
山岡さんの食の蘊蓄ですら
うとまれる時代ですし。


しかし例えば
軍モノや学生運動についての“ひけらかし”と、
ラムへの想いや恋敵に対する執念を
迸らせている台詞とを
一緒くたにするのはあまりにも浅はかです。


片やマウント・自意識過剰・承認欲求ですが
もう片方はやればやるほど惨めであり滑稽である、
いわば自虐であり魂の発露であります。

その後者が、道化を演じている姿が、
そんなに疎まれるものかなぁと疑問なのです。

同族嫌悪ということなら、わからんでもないですが。

ただ、リアルタイム当時から
あのメガネの描写を以て
「俺たちに対して失礼だ」という論調は
なかったように思いますけれど。

どちらかというとみんな喜んでいたような。
自虐的な意味でですけれど。


僕は「ぶらどらぶ」は面白くなかったのですが
それはやはり自虐やペーソスが
少なかったからのような気がします。

それは例えば血祭先生の台詞回しでもそうで、
訛りであるとか もって回った言い方だとかが
「美人なのにダサい(←サクラ的な)」とか
「偉そうにしているけど旧式な人」とかの
ギャグや皮肉になっていないんですね。

ただの頑固なこだわりにしかなってないから
なんかお仕着せがましいな、つまんないな、と
感じるのだと思います。


しかし、メガネの長台詞のうちいくつかは
そうではなかった。
少なくとも視聴者を傷付けるものではなかった。
メガネが攻撃的なセリフを言えば言うほど、
感情的になればなるほど、
その刃が彼に刺さっていくのが見て取れたからです。
自虐ショーですね。


そんなメガネを嫌う人は
つまり要は“オタクが嫌い”なんじゃないかな。
現代ではオタク趣味が市民権を得て
オタクの人たちを攻撃しにくい世の中に
なっているけれど、
人格形成期の多感な時期において
オタクを嫌ってきた人たちなんじゃないかな。
もしかしてメガネが眼鏡をかけていることが既に
嫌なんじゃないのかな。

☆☆☆☆☆

長台詞の他には
押井氏独特の、パペットのような
上顎と下顎が分離した作画、
あれは僕も、多用されると嫌でした。
幼稚、大げさといった面白味なのかと思いますが
多用されるほど面白いもの、とは
ついぞ思わなかったです。

もっとも もしかしたら
人形劇という手法がアングラ劇と同じく
一種のアジテーションのような効果を
期待させる手法かもしれず、
そういう意味では
“手法”というより“思想”だったのかもしれません。

☆☆☆☆☆

押井氏は昭和「うる星」への批判意見において
槍玉に挙げられがちですが、
僕は、そのメガネの長台詞などにとらわれずに
もっとちゃんと押井氏の能力を評価したほうが
いいのではないかと思います。

例えば「さよならの季節」の該当シーンの

この手刀(?)で布団を突く発想、
これはちょっとスゴいと思うのです。

また、例えば第1話において

ラムにあたるを跳び箱のように開脚跳びさせたこと、
これもまたあきらかにスゴい。
これらは押井氏の創った名シーンだと思います。
こういうのは枚挙にいとまがない。

こういうところをもっと評価しなければ。
そう思うのです。〈おしまい〉