ぼちぼちと更新していければ

(毎週土曜日中の更新を目指しています)









悲しみのデスマスク(追記しました)


旧アニメ「うる星」には
いくつか炎上した案件があります。

細かい批判まで挙げるとキリがないのですが、
代表的なのは

・98話「そして誰もいなくなったっちゃ!?」の
 ラム死亡シーン


・114話「ドキュメント・ミス友引は誰だ!?」の
 竜之介踏み絵シーン


・映画「ビューティフル・ドリーマー」ラストの
 あたる(とラムの)キスシーン


でしょうか。


順序は変わってまず踏み絵のほうからですが、
高橋留美子氏がその描写に怒ったというお話、
ソースがいまいちはっきりしません。

守秘義務とかあまりなかった時代ですし
「ここだけの話だけど」が
どんどん伝わっていったのかもしれませんね。

だけど、ギャグ漫画家が
ああいったギャグシーンで怒るというのは
にわかには信じ難い感じがします。

【2023.3.11追記】
tekuno0260 さんから、踏み絵の件は
「語り尽せ熱愛時代」(平井和正 高橋留美子)に
記述があったとのご教示をいただきました。
浅学で申し訳ありません!
僕はこのお二人の関係性を、
やや斜に構えて見ていたところがあって、
それを数十年間そのまま
ほったらかしにしていたのですが、
今度腰を据えて読んでみることにしますね。
tekuno0260 さん、ありがとうございました!
(追記終わり・原文は一部そのままにしておきます)

 高橋留美子氏はわりと女の子をいたわるほうですが
それでも、女の子キャラの顔を足蹴にするのは
一応原作にもあるし(15-2)。

 


特定の女の子キャラにNoを突き付けるのが
ダメなのかとも思いましたが、
ここでの踏み絵は
ミスコンにエントリーが可能な
勝ち組である竜之介、に対する
アンチテーゼみたいなものであって、
実際に竜之介を卑しめているわけではないですし。

だいたい踏み絵というのが
歴史をもとにした、
推し活動と宗教との類似性を笑いにする
ハイブロウなギャグであることから、
高橋留美子氏が怒ったというのはなぁ、
ちょっと信じられないけどなぁ、
というのが僕の感想です。


次に「ビューティフル・ドリーマー」での
キスシーン。

まぁ確かに、あたるがここでキスしに行っちゃうと
いろいろと不都合が生じてきます。

だけど「夜を二人で!!」(18-4)

がリリースされた今となっては
もはや何を言っても説得力に欠けますな。


さて「そして誰もいなくなったっちゃ!?」
のほうですが、
僕自身は当時、このラム死亡シーンに
特に不快感は感じませんでした。
劇中劇ということが歴然としていましたし、
なによりラムの顔が死人とはかけ離れていましたし。

どっちかというと
ビューティフル・ドリーマー」の
コールドスリープ事故のほうが
嫌だったですねぇ。


あれって無邪鬼の創作とはいえ
数あるパラレルの可能性の一つであり、
“なくはない”んですよね。

「うる星」という漫画の中では
誰も死なないで済むのに
なんで死に顔(?)を見せられにゃならんのだ、
等と思ったような気がします。

しかもあのラムの肌が土気色でねえ…。

あの瞬間って、
ラムが死んだ状況を観客に味あわせているわけで
感情を揺さぶる目的とはいえ
そりゃもう嫌な気持ちになりました。


では原作ではどうかというとこちらでも
あたるやラムの死亡シーンは何度か出てきています。

マイルドなところからいうと
ラムちゃん、ウシになる」(21-9)では

食肉になってしまう将来を案じており、
ヒューマノイド・ラムの消失をうかがわせています。

ラムも極限の表情をしており、
本人たちはほぼ死線上に位置していますが
読者からはちゃんと“茶番”に見えるように
取り計らわれているので、
これで喪失感を味わった読者はいないでしょう。


「愛♥ダーリンの危機」(16-5)も然り。


あたるが死んだ状況でのラムの様子が描かれますが
その前のコマで事前に種明かしがされているので
読者としては安全にマンガを楽しむことができます。


しかしちょっと毛色が違うのが
「更け行く秋のイモの悲しき」(25-5)。


直前までパジャマ姿だったあたるが
サファリルックで砂漠にいるので
すぐに夢か妄想だとわかるのですが、
ラムの死までの描写が相当しつこいです。

この、眉や口が描かれていない無表情のラムなど
いかにも魂が抜けた風で、たいへん嫌な感じ。


あたるのリアクションも、
ラムちゃん、ウシになる」の時のように
ギャグに振ることもできたろうにそれをせず、
読者にラムの死を疑似体験させきったのには
乾いた猟奇趣味のような
ぞっとするものを感じました。


最近では「ちいかわ」のナガノ先生が
ヤバいヤバいと言われていますが、
高橋留美子先生もなかなか…ネ…。〈おしまい〉