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(毎週土曜日中の更新を目指しています)









「商魂」レビュー その1(2024.11.16追記有り)


このブログは、
少し古めの高橋留美子作品を扱うという
お題目だったのですが、
まさかのリメイクアニメ2連発を受けて
古いんだか新しいんだか
よくわからないことになっちゃいました。


新しい話題が供給されるのは
まことに喜ばしい事でありますし
新しい発見もあったりするのですが
このままでいいのかオレ、
みたいな気持ちも少しあって、
なのであまり浮かれてないでやっていかなきゃなぁ、
と思う所存であります。

それにそろそろそういう頃合いでもありまして。


というわけで今回は
短編『商魂』をレビューします。

いや~……。
最後に『商魂』の話をした/聞いたのって
いつぐらいだったろう。

『黄金の貧乏神』とかって
なんかの折りに口の端に上る気がするけど
『商魂』は話に上らなくないですか?

なんでだろう。学園コメディなのに。
JKが主役で活躍する話なのに。

やっぱ辛気くさいからかなぁ。
確かに辛気くさいし、
出てくる幽霊たちも、地味なんだよなぁ。

いやでもね、『商魂』はすごくいいんですよ。
涼子がすごくいい。

暴力ヒロインは留美ックのお家芸ですが
ただキレ散らかしたり、
天然で腕力を振るうのではなく
男の子に対してこんな風に
完全に対等な立場で
タメ口をふるうキャラは珍しいです。

例えば『うる星』の弁天なんかは
男性キャラにもタメ口だけれども
どこか弁天の方が上の立場ですし(神様だしね)
男性側がたじろいでしまう雰囲気がある。

そうではなくて、
お互いの主張がぶつかり合うような状況で
男性側が“たじろがなくてもいい”関係、というのは
結構面白味があると思うんですね。

実家にいる時の響子さんなんかが
近いのかもしれない。


リアル、というとちょっと語弊がありますが
地に足が付いた生活感が
あるような気がするんですよね。

このあたり、
今どきの日常ものの漫画やアニメと
結構近いような気がします。


さて、では表紙から見ていきましょう。

掲載が平凡パンチだったということもあってか
ナイスバディを見せつける涼子さんとなっています。

繻子のようなコスチュームの光沢描写がえぐい。
あの方が手伝ってるんでしょうかねぇ。
ちょっとわかりませんが。

マントに重ねて描かれる幽霊たちの中には
楽しそうな表情をする者も見られます。
早々に純粋コメディであることを宣言しており
ホラーものとしては、ネタバレになっちゃいますが
もとよりそこで勝負をする気はない、
ということでもありますね。

一コマ目は引きの学校。
足元では生徒が掲示板を覗き込んでいて
次コマの 寄りの生徒カットに連動しています。

こういうのって一コマ目はたいがい
「ここは学校…」という状況説明だけであることが
多いので、これは目新しい感じがしました。

サブヒロインの真由美ちゃん。
地味だなー。
しかしそうでなくてはならんのですよね。
涼子を立たせるためっていうのもあるけど
ただの一般生徒、市井の人という設定が必要なのだ。
そんな子が金に細かいから面白いんであって。

で、思い出すのは『うる星』のこの子。


この子も“普通の子”という位置付けですが
モブ顔ではないです。
しっかりキャラが付けられている。

エピソード的に
『商魂』の真由美ちゃんみたいなモブ顔では
ダメだったかというと、あまりそうは思えない。
むしろ“庶民のしたたかさ”を笑いに変えるなら
モブ顔の方が良かったかも、まである。

そうならなかったのは、
『勇気ある決闘』が組み立てられる段階で

この娘をこういうキャラとして使う、というのが
かなり優先度の高い事だったからでしょうね。

ただ劇中で良く動いていたのはラムなので、
物語としては視線が定まらず、
なにかまとまっていない印象がありました。


さて話を戻して。

降霊に興味を示した真由美ちゃんは
2-B の教室に遠山を訪ねます。

そこで遠山にいきなり金の話を切り出され
当惑する真由美ちゃんですが、
この「え。」がいいです。
「えっ!」ではなく「えーっ」でもなく
句点(。)の付いた「え。」がいい。
(2024.11.16 追記 この句点は
どうやら“小学館ルール”に基づいたもののようで
作者の意図とは違うもののようです。
一人よがっちゃってお恥ずかしい…。
詳しくは「その2」で。)

かなり筒井康隆 風味ですが、
台詞のフキダシの中に
コンマ何秒という時間の経過が表現されている。
当惑を表に出していいのかという葛藤がある。
それを遠山に気取られないかという懸念も感じる。
これは面白いなぁと思うんですよねぇ。

失望して教室を出ていこうとした真由美ちゃんは
入り口で涼子にぶつかってしまいます。
胸に! 涼子の胸に! ぶつかるのですが、
描写含め そこはあまり深追いはせず、です。
平凡パンチなのにね。

平凡パンチが休刊(廃刊)してもう30年ですか。
平凡パンチなのに、っていっても
もうあんまり伝わらないのかもしれないけど
『商魂』のレビュー読みに来る人なら大丈夫か。

背の高い お姉さん然とした様子で
真由美ちゃんを逃がすまいとする涼子。
カモン ジョイナス!(cv:寿美菜子

涼子は髪型はランちゃんやマリスの流れですが
顔は誰にも似ていませんね。
つり目だからといって
ラムにもサクラにも似ていない。
パーツそれぞれは同一パーツなのに
これだけ別人に見えるってのはすごいなー。

迷いを見せる真由美ちゃんに
優しい言葉をかけて堕とす涼子。

「悲しかったね」とか「寂しかったね」ではなく
「彼かな?」から入るのは、やり手 過ぎるやろ。
悪徳商法とか似非コンサルとかの素養あり過ぎです。


とまぁ、こんな感じで
いったん役者が出揃ったところで今回はここまで。
次回はギャグパートからですね、
来週もよろしくお願いします!

〈「その2」につづく〉