ぼちぼちと更新していければ

(毎週末の更新を目指しています)









嘘はとびきりの愛なんだってさー うる星『薬口害』レビュー

 
年度末を迎えてバタバタしている折り、
桜も満開となっていますが
桜餅ネタも、お花見な劇場版の話も
以前やってしまっているので、
エイプリルフールに合わせて
嘘をつく話でも取り上げましょうか。


ウソといえば
うる星『薬口害』(11-1)であります。


このサブタイトルの『薬口害』。
いったいどういう“もじり”なのでしょう。
40年の間にはいろいろあったので
今の僕なんかはパッと見た感じ
薬害エイズ訴訟」とか連想しちゃうんですけれど。


“口害”は“公害”なんでしょうねぇ。


「薬公害」で検索すると
くすり公害」という書籍がヒットしまして、
著者が高橋姓のお医者さんだったので
すわ!と思ったのですが、
秋田の人だったので高橋留美子氏とは
関係なさそうです。


さて。



扉は『哀愁でいと』以来のフルカラー。

めくると見開きでヒロイン3人が登場していますが
こちらもフルカラーで丁寧に塗られています。

しのぶはともかく ラムもサクラも
いつものいで立ちとは違ったリラックスウェアで、
だからなのか 今でいう“ガールズ~~”みたいな
華やかな雰囲気があります。

特にサクラのGパン(昭和だけに)は
巫女姿や白衣とは180度違った魅力。

サクラの足元はつっかけですが、
この公園はご近所なんでしょうか。

いやそれよりも、
公園の遊歩道のド真ん中でたき火をする神経ですよ。
僕はぎりぎり“落ち葉焚き”経験世代なんですが
野焼きが禁じられてずいぶん経つ今、
これを見るとやっぱり異様に感じてしまうなあ。

自分ちの境内でやりゃあいいのに
なぜこんな大きい公園くんだりまで
やってきたのかというと、
それはまぁラムとしのぶと合流して
エピソードを始めるためであります。



ラム「あっ!(サクラだ)」
サクラ「あっ!(ラムとしのぶだ)」
しのぶ「あっ!(焼きイモだ)」



ラムやしのぶと一緒に
惚れ薬を調合することにしたサクラ。
奇怪な材料の数々に気を取られるが、
「間違えるなよ!」というサクラのセリフこそが
読み返しで面白くなる仕掛けなのである。

そして“猫のヒゲ” !!

(25-6『風邪ひかば』)
猫のヒゲも汎用性高いなぁ!




見栄を張ったり、突っ込まれて
アタフタしたりするサクラ。
この当時“ポンコツ”という概念はなくて
「意外とかわいいところもある」で
一括りにされていたけれども、
まぁカワイイよね、サクラ。



“惚れ薬”を、安直にラム達に分けてやるサクラ。
コンプライアンスとかではなく、
“自分に降りかかるかもしれない”とか
まだ全然 思い至らないサクラなのである。
もうちょっと危機感持ったほうがいいよね。

(8-3『イヤーマッフルの怪』)



家に戻り、まんまとあたるに惚れ薬を喰わせたラム。
このヘビのように狡猾な表情がたまりませんわ!



(あたるにカワイイと言われて)
ハイ来たこの顔~!

後のイルカ回(14-10)で印象深いこの顔ですが
自ら薬物を混入して得た情愛にでも
この顔をしてしまうラム、というのが
女の業の深さというか何というか
僕は結構好きなんですけどねー。




ラムにぞっこんのはずが、様子のおかしいあたる。
これ、面白いと思うんだよなぁ。
令和の漫才でも全然通用するでしょ。

結局ギャグってタイミングとかテンポであって、
そこを読者が脳内で自由自在にできる漫画って
笑いのツールとして結構優秀だと思うんだけどなぁ。



あたるとラムが公園に差しかかると、
そこにはしのぶが。


や、このエピソード、
実はしのぶがめちゃくちゃ面白くない?

ラムとあたるのやり取りの合間に

一コマずつインサートされるカットが

あきらかに観察対象として描写されていて
それがまず面白い。



ラストのコマでは
惚れ薬を面堂に飲ませようと思っていたと
言っているけれど、


あたるに抱きつかれ、好きだと言われて
「……」とまんざらでもない。



そしてあたるに「一途に好きだ」と言われて
ついつい乗っかりそうになってしまうしのぶ。

こいつホンマに“ほだされやすい”奴っちゃなぁ!!
面白過ぎるだろ…!!!



ラストはダジャレ。
お後がよろしいようで、的な締めとなります。
シラケ過ぎもせず、さむ過ぎもせず、
適度に湿り気があっていい具合です。

これはすごく難しいバランスでしょうね。
この頃は、キャラクター達が
まだ物語を舐めていない時代でした。


いい時代でしたなー。


〈おしまい〉