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留美ックの絵柄の古さがわからない

 
先日webのどこだったかで
高橋留美子の絵柄が古くて~~」という言説を
目にしました。

う~ん実はお恥ずかしいことに
僕はその絵柄の古さがわからないんですよね。


自己紹介っぽくなっちゃいますが、僕は
漫画の絵柄について好みがバラバラな人間でして
劇画調から少女漫画、アホ絵まで
このジャンルがダメってことがあまりありません。

もちろん、好きな絵 苦手な絵はあります。
しかしそれはその絵の漫画に親しんでおらず
経験値を積んでいないからでもありそうです。


以前僕は、よしながふみ氏の絵柄が苦手でしたが
いくつかのシリーズを通して読んだ今では
氏の絵柄についてまったく拒否感がありません。


知ることで受け入れられるようになるというのは
しかし逆に考えれば
よく知るものにバイアスをかけていることでもある。

“身びいき”ということですね。
いってみればそれは“盲目”であるともいえる。

僕は高橋留美子作品に対して
盲目になっているのでしょうか。


その前にまず、“漫画の古さって何?”ということを
考えてみることにします。

古い漫画は古い。
そうなんでしょうか。


僕の持っている中で一番古い漫画は
田河水泡氏の『のらくろ』です。

絵柄的には新聞の風刺絵のようでもあり
なおかつ漫符が発達していない時代のものなので
今から見ると違和感はありますが
オールドスタイルで受け入れられないかというと
別にそんなことはない。
ある種、スヌーピーの『ピーナッツ』などと
通じる部分もあって、
これが古いなら、なぜ今スヌーピーのアパレルが
売られているのか、という話でもあります。


その次の世代となると手塚治虫氏でしょうか。
初期の著作は所持していないので引用できませんが
絵柄が安定した以後の作品について
“古い”というのが当てはまるのかどうか。

たぶん手塚治虫氏の作品群の中で
現代において一番親しまれているのは
アトムでもレオでも火の鳥でもなく
ブラック・ジャック』だと思いますが
『B・J』が古いかどうかって話ですよね。
そりゃ時代設定が昭和なので
そこかしこの描写は一昔前の描写ですけど
漫画という制作物として古いかというと
別にそんなことは感じない。


じゃあ、古い漫画が古いんじゃないのでは?
じゃあ古いって何?


僕自身が「これは古いなぁ」と
強く思う漫画がありまして、
漫画というよりも絵柄なんですが それは
我が愛する『キューティーハニー』なんですよね。

だけど豪ちゃんの師匠の石森章太郎氏の絵には
別に古さは感じないから、
“古いから古い”わけではないようにも思います。


というわけでようやく本題ですが
うる星やつら』の第1話、
かけめぐる青春』を見ていきましょう。


まずそのサブタイトルであるところの
かけめぐる青春”というフレーズが
そもそも古いのですが、まぁそれについては
黙っていりゃバレやしません。



初っ端で
しのぶがあたるを引っぱたいています。
いにしえの暴力行為の描写だから古い、とは
あまり思いませんが、
スケ番~平手ミキの流れでしょうから
実は古い。でも黙ってればバレないでしょう。



続く、しのぶが走り去るカット。
うめぇ…。うま過ぎる…。

人物の作画が実に漫画らしいというか
手塚治虫氏の流れで漫画的デフォルメを
されているというか、
写実的なモーションキャプチャーとは全く違う
躍動感のある素晴らしい作画です。

このうまさが、ある種“古い”と
言えるのかもしれません。
上の世代が持て囃すものに対する
下の世代の反感というか、アレルギーというか。

それにデフォルメすると
どうしても“全力”っぽくなってしまうけれども
「そんなに力いっぱいやんないでしょ」
みたいなところも、
現代から見ると古いのかもしれない。



あたるの眉毛がかなり太い。
令和なら“眉毛が太いことが特徴のキャラ”
ぐらい太いです。

最終話でもそこそこ太いんですよね。

これは確かに古く感じる部分ですが、
流行り廃りは交互にやってくるかもしれませんから
今は古くてもそのうち古くなくなるかもしれない。



虚無僧。
今でもターミナル駅なんかでたまに見るから
セーフかも(でもあれホンモノなのかな)。



ラム登場です。
真ん中分けの、前髪の無い髪が
かなり古さを感じさせますが、それについても
またワンレンブームが来るかもしれませんしねぇ。


どちらかというと、
そのラムのアイデンティティであるところの
“虎縞ビキニ”が、
デザインの情報量の少なさにおいて
古いといえます。
今どきの漫画やアニメだと
普段使いの下着であっても(勝負下着でなくても)
もうちょっと意匠のあるものが描かれていて
それに慣れた目で見るとラムのビキニは
ペルシャがすき!』とあまり変わらない。


ここはすごく重要な点であって
令和アニメが原作準拠ということにして
手を付けなかった問題でもあります。
今の大型テレビではまったく保たない。

そりゃ雷さま・鬼といった
昔ばなしに紐付かせることも大事ですけれど、
令和においてそれがどの程度大事なのか、
それは登場時だけで良くって
以後は画面が保つことを
重要視するべきじゃないのか、などとも思いますが
とにかくこのシンプルなビキニは古い。
マスプロアンテナぐらい古い
(虎縞を簡略化したらもう話にならない)。



時代ごとの絵柄が語られるときに
よく比べられるのが鼻筋の描き方だと思いますが
僕はそこはあまり気にならないんですよねぇ…。

漫画家諸氏は相当苦労して
鼻の描写を流行りに合わせたりしているようですが
鼻ってあまり感情が乗るところだと思わないので
それによって古い新しいや好き嫌いが
あまり発生しないです、僕の場合は。

鼻が目立たない方が
眼や口の表情を打ち出しやすい、というのも
あるかもしれませんが、
そんなの漫画家さんごとの個性の範囲であって
鼻がちっちゃくないと受け入れられないってのは
ちょっとどうかと思うなぁ。



『ふつうの軽音部』っていう漫画がありまして、
もうすぐアニメ化もされるらしいんですが
僕はジャンプルーキー版のほうが好きなんですよね。

あきらかに絵は下手なんですけど
きれいな絵よりも、クワハリ氏の下手な絵のほうが
響くというか、ストーリーに合っているというか。


アニメといえば、有名な画像があって

これなんですけど、
僕的には90年代以外は全部いけます。
90年代の絵柄でも、ストーリーが面白ければ
好きになると思うしね。

また、絵柄が古いから見たくない、っていうことが
あまり起きないんですよ。
面白いか面白くないか、かなぁ。

江戸時代はあんまりだ、といえるかもしれないけど
こうの史代氏の絵なんか、江戸時代の浮世絵に
通じるものがあるような気がするし。


今の令和の世の中が、いろんな情報が手に入る
多様性のある社会だから 余計に僕の感受性が
鈍くなってるのかもしれないけれど、
本当の意味で
絵柄に新しい古いってあるのかな?


僕にはちょっとわかんないですね。


〈おしまい〉