先週は七夕でした。
ゾロ目の日なので否応なく認識させられる日ですが、
ゆかりの食べ物があるわけでもないし
笹を用意するのも現実的じゃないしで、
特に何をするでもなく終わっていった感があります。
初心い恋からはずいぶん離れてしまったのですが、
令和の世でも、フレッシュなカップル達は
七夕を楽しんだのでしょうか。
今回はうる星「七夕デート」(4-10)の
レビューです。
今回の扉絵。
地球の娘に化けたラムだが、
髪型をラムにすればラムになるかというと
ちょっと微妙に違うような…。
傍らの笹の短冊には
「あたると めおとになれますように ラム」
とある。
「ダーリンと…」ではないのが違和感だが、
“願い事”の作法として、対象を明示するべきだと
ラムが考えたのかもしれず、
異文化の異星人の、
たどたどしさの描写ということなのかもしれない。
そりゃそうとこれでは、
現状では“夫婦ではない”という
認識ということになるが、それでいいのかラム。
もう一つの短冊の「サンデー命」は
なんだろうねこれは。
何か特別なアオリが付いてたりしたんだろうか。
隔号連載だった頃なので、
サンデーに対する忠誠を見せることが
読者に対する忠誠となりえる、といったような
思惑だったのかもしれない。
頁をめくると、まずははた子さん。
あまり可愛いキャラではないが、
“赤いシリーズ”のパロディであることから、
ベタなメロドラマの出演者に寄せたのだろう。
万国旗はともかく、
はた子さんがレオタードなのは
何か語呂合わせなのだろうか。
生地の光沢感からして、作画スタッフの
ただの趣味のような気がせんでもない。
ベタなメロドラマに感動しているラムだが、
後年、ランなどの友人といる時には
シラケ役をすることが多くなっていたので、
こういう単純・純粋な時分もあったのだなぁ、と
感慨深くもある。
デートをせがむラム。
“「デート」というものをやってみたい”ではなく
「デート」がどういうものであるか認識したうえで
“一度でいいから”という異星人が、いじらしい。
後年のラムは、いきなりヒスを起こしたり
あたるを下に見て手玉に取ろうとしたりと、
腐れ縁の古女房的に描かれることが多かったが、
この「あっそ……」のような、
関係の定まっていないこの頃の両者の雰囲気は
見ていてたいへんに楽しい。
それはこのエピソードが
あたるとラムの
恋愛のカタチを描くのに特化した一篇だからこそ
記録されたのであって、
二人の関係を描いたという意味では
同じ4巻の「君去りし後」(4-8)よりも、
むしろこちらの「七夕デート」のほうが
あたるとラムの仲の良さを楽しめるともいえる。
机の裏を描くことで、
ラムがより一層高く飛び上がっていることがわかる
(教室の天井の高さはともかく)。
すごいなぁ。ほんとうにすごいよ。
最近「シン・ウルトラマン」絡みで
“実相寺アングル”という言葉が
口の端にのぼったりしたけれども、
高橋留美子氏が特撮も好きだったのだろうことが
よくわかる一コマだ。
ラムのこの「あい!」は
舞台が代々木公園・原宿あたりなことに合わせてか、
蓮っ葉(死語)な感じが出ててとてもいい。
“ぐらまあ”と評されるラムの水着姿。
令和の世では、実在グラビアタレントのほうが
もっと巨乳だったりするから恐ろしい。
あたるの「いい女を見せびらかしたい」というのが
原作者の分析した、
(この頃の)男性像なのではないだろうか、と
思っているのだがどうだろうか。
そういう感覚については
ちょっとアナクロな感じもするなぁ。
ここの!ラムの尻!!
光沢感のあるビキニの尻の割れ目が
必要以上に描写されている!
ラムのパンツの光沢感といい、
これはフェティッシュな作画スタッフの犯行だろ…。
ラムにカッコいいところを見せようとするあたる。
ラムに恋愛しぐさをしているようにしか
見えないのだけれども、
いったいどういうつもりなのか。
ラムを落としてどうするつもりなのか。
小一時間問い詰めたい。
そもそも鬼ごっこをした二人である。
身体能力的に、こういうアクティビティで
ラムの上に立とうという発想にはならんやろ…。
“聖なる胃袋”というネーミングも
当時としてはめちゃくちゃ優れたギャグだった。
ちょっと少女漫画のセンスっぽい気もする。
あたるはまだ財布に余裕があった。
結構、小金持ちだよな。
この辺の台詞は、好意的に考えれば
必ずしも恋愛のことではなく
今後の生活で
ラムに対してイニシアチブを握るためとも取れるが、
読者の共感を目論んでいるとするならば、
“あとのつぶし”とは、
“ねんごろになる”(死語)ということでしかない。
それでいいのかあたる。どういうつもりなんだ。
7月7日(七夕)じゃない日は
どういう脚本で
アベックをからかってるんだか。
このエピソードは、
不運なあたるのドタバタ顛末記というよりも、
ダメッ子あたるが、できる子ちゃんラムに
なぜか好かれているという、
当世風のエピソードとなっている。
このエピソードがリメイクアニメで作られるなら
大幅にアレンジされていても
楽しめるかもしれないなあ。〈おしまい〉