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NTTですらない、電電公社の時代のお話。うる星「絶体絶命」レビュー

昨日、大手携帯電話キャリア
通信障害がありまして、相当混乱したようです。

電話やネット閲覧に留まらず、
イベント入場の際の電子チケットとしての使用や
キャッシュレス決済などにも影響があったようで、
スマホに生活のかなりの部分を握られている弱さを
改めて実感させられた気がします。

さてリメイクアニメ「うる星やつら」は
どうやら昭和の設定で話を進めるようで、
スマホも出てこないことになるのでしょう。

スマホの有り無しで変わってくるのは
何といっても“すれ違い”かと思います。
スマホがあれば、
“豆蔵”と“マ・メゾン”の間違いなんて
たぶん起こりえないし、
「愛しいあの人は今どこに!?」なんてことも
ほとんどない世界となるでしょう。

もっとも、
恋愛のアプローチが変わってしまう、という事では
スマホの有り無しよりも
“ノーダメージ恋愛”などのファクターのほうが
漫画に影響を及ぼしてしまいそうですけれども。

今週は、うる星やつらから
「絶体絶命」(1-5)をレビューします。



扉絵には三角関係を織りなす三者と黒電話。

先日の話の続きだけれども
この虎縞の描き込み、な。
実際には本物の虎の縞は、縮尺からいうと
ここまで細かくはないみたいだけど、
人工的無機質な新アニメ虎縞よりは
だんぜん有機的なのである。

なんとしどけない
(しどけない≠色っぽい =だらしない)。

あたるの部屋の本棚には
筒井センセイの著作がずらりと並ぶ。
最近は あまり そういう 感じでも
ないみたい だけど。

ラムに不意を突かれて、普通の漫画なら
あたるに「うわっ。」とかいう台詞が入りそうだが、
あえて無言にしてあるところが
次世代漫画を標榜している感じでとてもいい。

リメイクアニメではどうなるだろうか。
シャフトあたりがアニメ化してくれたら
ここのあたるの声にならない感じを
上手くやってくれそうな気もするんだけど…。

土曜の夜にひと悶着あったけど、
とりあえずその晩はラムと過ごして
翌朝にあらためて怒り出すあたるの図。

星間タクシーのエピソードの時は
ラムが一方的に婚姻を主張しているのだ、と
言っていたあたるだが、
ここでは‌婚姻の事実があったことになっている。

まぁ、鬼ごっこの後、
ラムを退けていたことからしても、
何らかの方法で「婚姻の実行」を
拒むことに成功していたのだろうけれども。

しかし…。
ナンセンスギャグとはいえ、
地球の石油含有量と引き換えの
契約を結んでおきながら、
今さらバックレて
しのぶとよりを戻そうというのも
えげつない話だなぁ。

青少年の、ガールフレンドへの執着を
誇張して漫画にしたのだといえばそうなのだが、
その後、ラブコメ化するにあたって
ラムと引っ付いていくというのがね…。


一般的には“地球侵略を賭けた鬼ごっこ”が
あたるとラムという、
二人の関係のきっかけということになっているが、
実際にはそれは
“そういう出来事があった”に過ぎないし、
ラムへのプロポーズも“勘違い”でしかない。
だからこそラム側も一度は矛を収めたのだ。

二人の関係の始まりは実は、
“石油の肩代わりをしてもらった”ところからなのだ。
そこから契約は始まったのだ。

そう考えると、このあたるの絵面は

相当“人でなし”なんである。

赤い公衆電話を使うあたる。
ジーコロコロ」と擬音が付けてある。
旧アニメでもここはダイヤル式電話となっており、
ちゃんと「コロコロ…」とダイヤルが戻っていたが、
リメイク版ではどうなるだろう。

そしてなかなかに裕福そうなしのぶの家。

離縁された元夫とその恋人に対して
ストーキング行為と不正アクセスを繰り返す元妻。
なかなかですなぁ。
これ、ラム側に付く奴おらんやろ。

最初の自衛隊機が消えた時には
“妨害電波”はラムのUFOから放出されていないから、
ブラックホールを形成したのは
“妨害電波”ではなくて、
ラムの割り込み通話ということになるが…。

また、ラムが妨害電波で
あたるとしのぶの電話を邪魔し始め、

これ以後は会話が成り立たないのに
電話は続けようとするあたる。

この辺はちょっと突っ込みどころがあるね。

あたるが家を追い出されたときに
近所のおばさん連中が、
「二時間の長電話」と言っているが、
しのぶとは区内通話だろうし
せいぜい10円@3分×40の400円程度のはずである。
その程度でガミガミ言わんでも…と
思わんでもない。

これが現代の携帯電話だと
20円@30秒×240で4800円(従量制の場合)。
こっちはガミガミ言っていい。

あたるが電柱の下敷きになったシーンだが、
「カメラもってこい」とはまた
未来のSNS時代の予言のようなセリフだな。

しのぶに対しても、まるでパニック映画のような
まったく容赦ない電撃攻撃である。
当たったら死ぬやつだろこれ。

特攻をかけるラムのUFO。
無茶しやがって…。

ナンセンスギャグの、絶対に死なない特攻ではなく
ちゃんと死ぬ系の特攻描写なんである。
ここが「ちゅどーん」ではいかんのだ。
その、リアリティ寄りの描写から
ギャグに移行する面白さ、というのが
この頃の「うる星」の良さだと思う。
まさしく、本棚の筒井先生の著作のような。

ボロボロのしのぶ。
庇護欲をかき立てられる描写であり、
ヒロインのヒロインたる姿といえよう。

最終コマでは
ラムが「うる星」の超有名セリフを言っている。
旧アニメ版では錯乱坊が頻発していたが
原作では、ラムのこれが初出だったかなぁ。


旧アニメ版の「恋の三角ブラックホール」は
谷田部雄次氏作監であり、
低年齢向けアレンジ演出が
どうにも受け入れづらい回だったように思う。

はたしてリメイク版ではどうなるのか。


このエピソードでは、
“電話”が重要な要素となっているが、
実は電話機そのものが重要なのではなく、
恋人同士における“長電話”が
テーマなのである。

どれだけ話しても話し足りない、
そういう恋人たちの心情が、
SNS時代にどれだけ描けるのか、
リメイクアニメにはその辺も
興味津々、期待を寄せるところであります。



ところで…
webで見かけたこの書籍の表紙絵、
なんだっけ~!? っと思ったら
「夜を二人で!!」(18-4)を
思い出させる絵柄だったのでした。
いや、想起しただけで、
ト○スとか模○とかの物騒な話ではありませんので
そこはお間違え無きよう…。