アニメ『めぞん一刻』が
放送開始された1986年は 僕にとって
生活環境が大きく変化した年でした。
“高校デビュー”というわけではありませんが
今までの生活様式を
ガラッと変えようとしていて、
アニメファンという一面も
大幅に縮小しました。
アニメ『めぞん』は気になっていましたが、
最序盤で自分好みではないことを確認した後
すぐに見なくなったと記憶しています。
3話切りまでいったかどうか…
ひょっとしたら1話切りだったかもしれません。
まぁそもそもアニメ『うる星』にしたって
終盤はほとんど見ていなかったですし。
アニメ全般に対して熱量が低かった、というか
アニメに対して
冷たくあしらおうとしていました。
アニメ『めぞん一刻』に最初に接したとき
気に入らなかったところはいくつかあります。
まず音無響子役が
島本須美さんだったのが嫌でした。
原作のほうでも音無響子は当時すでに
年上の女性の威厳を失くしていましたが、
それにしたって島本須美さんのキンキン声は
ないだろうと思いました。
現在でもそう思っています。
あれはキャスティングではなく、
ビジネスのための座組だったのではないかと。
当時絶大な人気を誇っていた島本須美さんを、
『めぞん』の主役の座に“据える”ことが
目的だったんだろうな、と。
それで喜ぶ層が、ファンの中に
ある程度いたのは確かだと思います。
KACのファン大会に集まる客層などは
それと近かったんじゃないでしょうか。
それと関連しますが音無響子のキャラクターが
清楚なお嬢さん系になっていたのも
興を削ぎました。
そういうことにしたいファンの意向が
そうさせたんだろうなと思いました。
僕にとっては音無響子は、いや
一つ屋根の下で暮らしている未亡人の管理人は
(性欲の対象であるかどうかは別として)
実存していそうだと感じられることが
すごく重要だったので、
アニメの音無響子が
お人形さんのようになっているのは
つまらないことでした。
作品の雰囲気として、
コミカルなシーンの取り扱い方も
納得がいきませんでした。
もちろん原作でも漫画的表現での笑いは
あるわけですけれども、
原作のほうは
リアリティの中でうまくやっているというか、
作中のギャグシーンにおけるデフォルメは
キャラたちの目からは
そう見えているのであって
実際にはもっと現実的な光景なのだろうなと
思えるというか。
しかしアニメでのオーバーアクションは
脳内変換できず、
そのまま大げさな振る舞いとして
伝わってきてしまいます。
子供じみたそれは、
サンデーではなく
スピリッツの作品なのだという
それまでの感覚を破壊するようなものでした。
アニメ版はどうも“ドタバタ”に
憑りつかれ過ぎている。
はっきりいうと幼稚に感じました。
例えばアニメ版では
朱美さん・一ノ瀬さん・四谷さんなんかは
ドロンジョ・トンズラー・ボヤッキー の
3バカトリオみたいになっていますが、
本来一刻館の住人はピン芸人だと思うんです。
トリオ芸ではなく
会話劇を描写するべきだと思うんです。
四谷さんがメガネの延長線上にあったのも
僕には違和感がありました。
人気取りの方法が違うんじゃないかと。
まぁもしかしたら『うる星』ファンを
そのままスライドさせたいあまり、
『うる星』ノリを
残し過ぎたのかもしれませんね。
制作側の勘違いは
うる星ファンに、今までと同じ楽しみ方を
提供しようとしたことではないでしょうか。
確かに客層は
ほとんど丸カブリしているのですが
私を含めて彼らが
『めぞん』に『うる星』を求めていたわけでは
ないでしょう。
『うる星』を不マジメ(←誉め言葉)に
読んでいた私たちであっても
『めぞん』を読むときには
多少 居住まいを正して読む、というような
真摯さがあったのではないかと思います。
さて、そんなわけで僕はアニメ『めぞん』を
40年間ほったらかしにしていたのですが、
最近になって
SNSでフォローさせていただいている方との
やり取りの中で
アニメ『めぞん』における
“スタジオジャイアンツ回”という概念を
知ることになります。
いくつかのweb記事、
また『アニメスタイル』の記事などを読むと
興味が湧いてきて、
これは見なければいけないなと
思っていたところに、ABEMA TVで
アニメ『めぞん』の
一挙放送をするというので、
ジャイアンツ回を中心にいくつか
目星をつけて見てみることにしました。

まず見てみたのは第31話でしたが
ジャイアンツ回に限らず
気になって見てみたものを
ここではエピソード番号の若いほうから
並べてみますね。
第15話
『あぶない二人の人形劇!僕もうダメです』



監督が交代する前の回ですが見てみました。
土器手司氏はこの回より前にも
2回ほど作監を務めているようです。
この第15話は学園祭がモチーフということで
遊び心のある『うる星』に似た楽しさを
おそらくかなり意図して持ち込んでいます。
このエピソードは響子さんが、
年相応の若い女の子に戻る話なので
軽いタッチの作風があまり気になりません。
黒木小夜子に島津冴子さんが抜擢されて、
坂本役の古川登志夫さんや
千葉繁さんと合わせて
『うる星』のプチ同窓会のようでもあり、
それじゃ羽目を外しちゃうのも
仕方ないですね。
それにしても響子さんの胸の破壊力よ…。
第27話
『消えた惣一郎!? 思い出は焼鳥の香り』





監督・キャラデザ・シリーズ構成が
変わった初回です。
ここまでをちゃんと見ていないので
比較は難しいですが、
風景を入れ込む演出が多くなって
情景で心理描写する手法が多いな、と
感じました。
響子さんが
五代くんの後ろ姿に立ち尽くすところ、
街灯が順番に点いていくことで
動いている時間と止まった時間を
合わせて表現しているのか
または記憶が少しずつ戻ってくることを
描いたのか、は
上手いなぁと思いましたね。
半面、
原作とのせめぎ合いなのかもしれませんが
アニメでは色彩なども相まって
直接的なのですから
五代くんと犬の惣一郎の後ろ姿を見つけた瞬間
意識が混濁して、最初からすぐに
(夫の)惣一郎さんと見まがったことにしても
よかったように思います。
第29話
『ハチャメチャ秋祭り 響子さんと井戸の中』



作監は中嶋敦子氏。この頃はまだ
とび抜けた感じはしなかったと思うんですけど
髪を結った響子さんはかなりいい感じです。
厚化粧なところが高田明美氏のキャラデザと
相性が良かったんでしょうか。
この回は山下将仁氏が参加していて
フランケンシュタイン部分に顕著ですけれど
主要キャラクターの地味な芝居には
あまり寄与していない気がします。
それでも、おそらく、
井戸を覗き込む響子さんの着物の重厚感は
氏によるものではないかと思うんですよね。
この着物はすごいなぁ。今まで見たアニメで、
ここまで着物の“重さ”を感じたのは初めてです。
第30話
『エッ響子さん結婚!? 五代くん涙の引越し』




スタッフが特にどう、とかではないのですが
第31話に続くことと、サムネイルの
踏切前で髪がなびく響子さんに惹かれたことで
見てみることにしました。
五代くんの苦悩を描くエピソードなのですが
アニメ『めぞん』で馴染めなかった理由を
もう一つ思い出してしまいました。
五代くんの髪の色が、
かなり明るい茶色ですよね。
これは僕はイヤだったなぁ。
貧乏学生のはずなのに
軽薄に感じてイヤでした。
実際この話のような
傷付き 決心するところでは
黒髪の日本男児の五代くん、というほうが
スムーズに受け取れたのではないかと
思います。
正直言えば、二又一成さんのアテレコも
ひ弱な要素がちょっと多かったし
この話の、踏切での「さようなら」のように
声域が狭いというか、力量に欠ける部分も
あったように思います。
響子さんは独特なV字型の前髪が特徴で
その髪型の第一人者といっても
いいと思うんですが
このエピソードでは
そのトレードマークの髪が風になびいて
すごく変化しています。
これは、よく知っているはずの人が
まるで知らない人のように見える、という
演出なのかなぁ、と考えました。
まぁそれにしても美しい髪のなびきでした。
第31話
『一刻館スキャンダル 五代くんが同棲中!?』










片山一良 絵コンテ演出・音無竜之介 作監の回。
間を使った笑いや演技が秀逸でした。
カットとカットがどう繋がるかも
計算されていて
たいへん見応えがありましたね。
コンビニでのシーンは
響子さんがたいへん可憐で魅力的です。
しかし原作での
「なぜ、五代くんは帰ってこないのだろう」は
カットされています。
(いじらしくも)大学に五代くんを
探しに行ったりしますし、
ラストシーンはヤレヤレ感を削いで
感動シーンっぽくしているしで、
響子さんのイヤなところがオミットされて
ホワイトウォッシングされていますねぇ。
僕は、そういうのは
大衆娯楽作品としての『めぞん』の魅力を
損なっているのではないかと考えますが
逆にそういう漂白された美しさゆえに
アニメ『めぞん』を崇拝するファン層も
誕生したんではないかなぁ、とも思います。
第37話
『アブナイ仮装大会!!響子も過激に大変身』

音無竜之介 作監回ですが、
ストーリーや演出のほうの悪ノリが
過ぎる感じで、好きではないなぁ。
このエピソードに限ったことではないのですが
住人による“どんちゃん騒ぎ”って
アニメで再現するのは難しいですよね。
ちゃかぽこ ちゃかぽこ言うのも嘘くさいし
一気コールにすると
そのたび飲み干す絵ヅラになっちゃうし。
店で吞んでるなら
ガヤやBGMで誤魔化せそうですが…。
一ノ瀬さんの「わはははは!」に
対応した会話劇を
入念に作り込むぐらいしないと
令和のリアリティには届きそうもありません。
そこはハードルですねぇ。
まだ続くのですが、
多くなってきちゃったので
いったん分けることにします。
といってもABEMAに視聴期間の制限があるので
仕込みはさっさとやらなきゃ
いけないんですが…。
〈つづく〉