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マキマさんの犬になりたい~「犬で悪いか!!」レビュー

取ってつけたような題材ですが。

タイトルの「マキマさんの~」は
漫画「チェンソーマン」より。
この度のアニメ化は喜ばしいけど、
最終話までやらんと成り立たなさそうで、
そうすると結構長いよね。

高橋留美子作品で犬といえば惣一郎だけど、
犬娘といえば九条明日菜であり、
犬にいちゃんといえば伏良平である。

そして犬が主役なのが
「犬で悪いか!!」の犬古谷志郎だ。

高橋留美子氏は、
怪猫明や猫の響子の描写を見るに
猫もお好きなようだけれど、
犬と猫どちらが、ということもなく
両方が作品中に登場しているようだ。

そんな中で、「犬で悪いか!!」は
マキマとデンジの関係と同じく、
ある男が下僕として女に忠誠を誓う話である
(嘘だけどホント)。

さて、と思って数えたら32ページもある。
う~んまた長くなりそうだ。
特に好きというわけでもなく、
実際、何十年も読み返したことがない作品なのだが
webで取り上げられたこともほとんどないようだし
思い残すことのないように
書きたいことは全部書いてしまおう。

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「(親子ゲンカは)やめなさい!」ときて、
吠えたてる犬を親父呼ばわりするのでは
相当勘が鈍くても
「親父=犬か?」と思うのは当然だ。

この見開きにおいては続けて、
志郎が犬と親子であることを
あっさりとネタばらししているが、
それだけストーリーに
自信があるということなのだろう。

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ティッシュと鼻血に言及する母親は
やはり和服に割烹着である
(ペットショップ勤務だったよな)。

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そもそもペットショップである必然性はあるのか。
ストーリー上は、その必要は特にない。
あえて言えば、犬に変身してしまう親子の
隠れ蓑といったところか。

そこから推理すると、
「引っ越してきた」というのは
前の居住地において
変身の秘密がバレたか何かで、
追われるように逃げてきた設定、
という仮説が成り立つが、
能天気な父子の姿を見るに、
別に身バレなど関係なく、
ただ桃子の前に転校生として現れたかっただけ、
というのが本当のところだろう。

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犬だから鼻がいい。
だけど、「鼻血」との関連は
特に持たせられていない。
また、鼻を利かせてボクシングを有利に、
などという
「鬼滅」の炭治郎のようなことは特になく、
むしろニンニクに苦しめられて劣勢だ。
まぁ、犬属性で考えられるようなことを
全部盛り込んだらページが足りまい。

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戸隠という名前は、
来楢=来栖=くず=九頭、あたりと
関連があるらしい。
作者は日本の古潭奇譚はきっとお好きだろうから
その辺から命名したかもしれないけれど
作品中では特に伏線はないと思う。知らんけど。

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なんで18回(17回)なんだろう。
ボクシングの最終ラウンドは
(昔は)15ラウンドだから違う。
桃子の「おつきあいできません」が
“おはこ(十八番)”である、ということなら
ちょっと気が利いてるけれど、わかりにくい。

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あ~、俺こういうの恥ずかしい。
桃子はたかがマネージャーなのだ。
マネージャーだから近隣学校の有力選手のことも
よく知っているだろうし(実際知ってたし)、
ボクシングにおける実力の差が
どういうことかもよく知っているはずで、
戸隠の県代表というのが
国体選手なのかインターハイなのか知らんが
とにかく別次元であるとわかっているのに
その“ボクシング”で抵抗していくという。

ギャグ漫画だとわかってはいるが、
赤面してしまうなぁ。
上級者に向けて
シャドーをやるのがまた恥ずかしい。
この辺りは、女性の作者と男性の読者の
差があるような気がせんでもない。
まぁ、桃子のパンチは戸隠の頬を切ってるんで、
実はすごい実力者(全国レベル)かもしれない
(んなわけない)。

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この戸隠はいいな。
実力がはるかに上の者の舐めた感じや
桃子に対するゆがんだ執着心、といった
すげー嫌な奴っぷりが出てて、とてもいい。

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だがこのパンチはどうするつもりだったのか。
当てるつもりだったのか、
寸止めのつもりだったのか。
いずれにしてもイマイチだ。
恋するオトコのストレートな一撃、
といった意味合いだろうけれど、
志郎に受け止められる前提の一発であり、
読者としては疑念を抱いてしまう。

だったらクリンチのほうがええやろ。
ただここで戸隠がクリンチしたら、
どう考えても戸隠のファンになってしまうけどな。

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同じ匂いがしたのである(変態)。

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桃子とのスパーリングでも
戸隠は燃えていたが、ここでも燃えている。
実に楽しそうである。
戸隠、いい奴なのである。
後半、減量してからの彼の扱いは
ちょっとかわいそうなぐらいだ。
もっと、憎めないキャラで終わらせてやれば
よかったのに。
まぁその供養が九能帯刀なのかもしれないが。

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くさやの販売車なんてあるかよー(棒
尾籠な話などに逃げもせず、
こういうわけのわからない展開に持ち込むのが
留美ックっぽいといえばぽい。

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この手の、(昔風の)
端正な顔でありながら変態、というのは
背古井さんや四谷さんなんかもそうで、
少年倶楽部や貸本文化の美少年・美青年を
茶化しているのだけれども、
留美ックにおいては彼らが歳をとると
露子の父や竜之介の父になる、
とされている気がする。
だが、背古井や四谷が
自覚のない真の変態であるのに比べて、
露子の父や竜之介の父は、
どう誤魔化そうが自覚的な変態なので、
延長線上の同系統の人物とは
あまり思えないのだが、どうだろうか。

高橋留美子氏についてのテキストで
山本貴嗣氏の話をしていいのかどうか知らないが、
僕がこの手のキャラで一番好きなのは
「エルフ-17」の
マスカット タイラー殿下である。

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ストーリーの最初から最後まで
ブレずに変態なのがすごくかっこいい。

対して高橋留美子氏のそれらのキャラは
結構弄られがちである。
作者の気恥ずかしさなのか、
サディズムなのかわからないけど、

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どこか、ベロを出してみせるような仕種は、
例えギャグであっても、美少年を描くことに対する
照れ隠しみたいなものなのだろうか。

高橋留美子氏は時々、
異常なまでの照れ屋さんなところを
垣間見せているような気もする。

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これなんて、普通は
おどけてみせるシーンじゃないもんねぇ
(「めぞん」10-11)。


今回はメインキャラの紹介のところまで。

次回は「廃部!」 お楽しみに!!