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みんな大好き! 林隆文 回の話


唐突ですが、僕は林隆文氏の作画回が
結構好きなんですよね。
キャラクター設定ガン無視な作画ですが
その独特のディフォルメが、
楽しいキャラクターを描くにあたって
すごく魅力的に作用している。

ありきたりな感想ですが
いしいひさいち氏の画風に通じるような。

漫画的表現極まれりという感じですけど、
それが『うる星』の
男子高校生たちや錯乱坊やジャリテンには
結構ハマるというか。

それは僕自身が
それらの漫画やあるいは
東京ムービーあたりのアニメを観て
育ってきたからかもしれません。


林隆文氏は作監で入る前にも
原画で何度か入っていますが


(たぶんこことか!? #84『面堂家仮面ぶとう会』)
作監として最初にクレジットされたのは
#96『大勝負!サクラVS錯乱坊!!』となっています。

ただここではまだいろいろ抑えめになっていて
“あんまり絵が上手くない回”という印象でした。


その魅力が炸裂したのは、なんといっても
#106『大激突!テンVSあたる』でしょう。
序盤は山下将仁氏が原画をやってるんですけど

それを林隆文氏が修正することによって
まるで「ど根性ガエル」の
小林おさむ氏のスーパーアニメーションのような
めちゃくちゃ魅力的な映像になっています。

https://www.youtube.com/watch?v=yknVxEuRYSo



そしてこの回では、
ジャリテンの顔も思いっきりひしゃげています。
ありていにいって最高です。
これをして“作画崩壊”という人もいるみたいですが
原作付きアニメを原作既読視聴者に届ける際の
一つのやり方として評価されても
いいんじゃないかと僕は思います。

いや~、無茶苦茶や…最高や…!

僕は錯乱坊というキャラクター、
そしてその使われ方が
原作・アニメを通しても
あまり好きではないのですが
この林隆文氏の『テンVSあたる』においては
すごくいいと思えるんですよねぇ。

ギャグの間の取り方がいいんでしょうか。
錯乱坊って“異物感”があるというか
使われ方としては“ちゅどーんの素”だったり
するのですけれど、
だから“年寄り”として扱ったりすると
変にギャグが滑ったりすると思っていて、
だからこのぐらい“人外”として描写したほうが
生きる気がするんですよねぇ。
それは例えば #70『戦りつ!化石のへき地の謎』
での人外っぷりにも表れているかと。



話を戻して『テンVSあたる』ですが
まぁ女の子は特段可愛くないですね。
ごく普通というか。
なので女の子目当てで見るんだったら
次点以下……という感じになるでしょう。

女の子といえば

このカットのラムは遠藤麻未氏だと思うんですが
そこに繋がる、直前の

このジャリテンを遠藤氏が描いたとは思えない…。
遠藤氏の絵を林氏が修正したんですかね……。

ちなみに『テンVSあたる』の作画クレジットは

こんな感じ。


#110『壮絶!謎のまつたけなべ!!』も
林隆文氏だからこその
やけっぱちな味がフィットしていたような
気がします。


ディーン期に入ると
林隆文回が、少し小綺麗になっていきまして、
#143『原生動物の逆襲!プールサイドは大騒ぎ』
辺りでは、なんだか女の子も可愛くなってますね。

 

この『原生動物』では、
ところどころで目を見張る絵があります。
ちなみに原画はこんな方々。



#151『人か鳥か?豪華けんらん 正義の味方!』や
#158『おしゃべり花なんかどうわいっきらい!』
などでは西島克彦氏とも組んでいて、
印象アップとなっているようにも思います。


林氏が最後に作画監督を担当したのは
#198『しつこいっちゃ!三人娘の動物大作戦!!』
のようですが、
この頃にはシリーズの制作自体が
だいぶんコスト削減になっているような感じで、
あまり楽しめるものではなくなってしまいました。




要は、林隆文氏の持ち味は
ケレン味ということでしょうかね。
原作を知っていると
忠実に作るだけではともすると退屈になってしまう。

これほど絵柄、表現を変えてしまうというのは
たしかにある意味で改変ではあるのだけど
僕は面白いと思うし、
作品世界のプラスアルファでもあると思うのです。

まぁ、他に美少女を描いてくれる方が
ちゃんといるからこそ
こういうのが楽しめるのかもしれないですが。


それにしても1981年版は、作監回を漁っていても
ついつい引き込まれてずっと見ちゃうんですよね。
やっぱいいもんだなぁ。


〈おしまい〉