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人魚シリーズ『夢の終わり』レビューその3


『夢の終わり』のレビューも
これで3回目となります
(前回はこちら)。

世の中的には今は夏休みの時期で、
そんな中でこういった
読み切り作品のレビューに取り組んでいると
なんだか夏休みの自由研究を
やっているような気がしてきて、
おのずと『夢の終わり』自体が
“夏の読み切りスペシャル!”だったかのように
思えてくるのですが、
この『夢の終わり』、'88年の週刊サンデー23号に
掲載だったんですって。

だけど
wikipediaの記述なんかでもそうなんですけど
サンデー○○号、って言われたって
季節感がピンとこないですよね。

amazonで(今年の)サンデー23号を調べると
4月24日発売分になっているので
『夢の終わり』はG.W.スペシャル、みたいな
感じだったようですね。へえ。

まぁそれもあって、
ホラー&サスペンス臭が少ないんでしょうか。

と言ってるわりには

今回は大眼がいきなり撃たれるところから
スタートです。

コマの運びがイマイチでわかりにくいですけど
直前に犬の吠える声に気付く描写があることから

大眼はどうやら真魚をかばったようですね。

この後“人の心”が焦点になるので
この行為は重要なところですが、
描写が雑で、あまり効いていないのがもったいない。

っていうか構想時点では
確実にストーリーに組み込まれていたであろう
シーンに見えるのになぜ?と考えるに、
もしかしたらですけど この『夢の終わり』も
当初は前後編の予定だったんじゃないですかねぇ。
本当はもっと
ページに余裕があったんじゃないですかねぇ。
大眼と湧太の出自が似ているところとかが
怪しすぎる。

“女があまり出てこない作品はウケないから
もっと圧縮してギュっとした方が
いい感じになりますよ”とかなんとか
言われちゃったんじゃないの? 知らんけど。

大眼を撃ったのはじいさん!
そして横でワンワン吠えてるのは犬!!

「ん? 人 !? 」じゃないよじいさん。
傍に真魚がいることも確認せずに
“散弾銃”をぶっ放してんじゃないよ。
さすがにあんたは狩猟免許返納しなよ。

まぁそもそも“なりそこない”を撃っていいのか、
それは私刑にあたるのではないかとか
いろいろあるけどそこはまぁ漫画だからね。

迫る湧太から逃げる大眼は
洞窟の入り口を潰して湧太を圧死させようとする。
だけどこれ、かなりタイミングムズくない?

「秘密の抜け穴がある」、風にいう大眼だが

じいさんでもやすやす見つけて入ってこれる、
ただの“向こうに抜けている洞穴”に過ぎないのが
なんとも肩すかし。
これも初期プロットとのズレだったりしないかなぁ。

真魚が自分を受け入れてくれないことに苛立つ大眼。
ここで秀逸なのが

この手指の恐ろしい様相。
まさに 人間と化け物のマリアージュや~!

半人半妖を扱う作品は数あれど、
こういう“中途半端”な感じっていうのは
なかなか珍しい感じ。

マジンガーZあしゅら男爵みたいに
ぱっきりくっきりな意匠ではなくて。

そんなに綺麗に分かれるわけないじゃん、みたいな
リアルの融通の利かなさ、みたいな表現って
なんか庵野秀明氏の感覚に通じるような気もする。

この手指の様子に特にしつこく言及しないのが
いいなと思うんですよね。
真魚が「はっ! お前のその指…」とか
言わないところがいいです。

半妖といえば『半妖の夜叉姫』が
(タイトルだけは)パッと出てきますけれども
犬夜叉』含め 存じ上げないので
半人半妖の描写が同じようにあったかなかったのか、
わからないのが残念なところです。


「心はロンリー気持ちは…!!」と
真魚に迫る大眼。近けーよ。

「なぜ心を開いてくれないのか、
オデがイケメンじゃないからなのか」というが
おまえ百年以上も生きてきて
会ったばかりの女子が
自分にホイホイついてきてくれると思うのかと。
そういうトコなんじゃないかなぁ大眼くん。

まぁ実際、真魚が初めて出会えた同類だとしてもさ、
相手に自分と同じ境遇を課すことが
どういうことか考えが及ばないっていうのは
「醜い姿でも人の心を持っている」と
主張する立場にはないねぇ。
それが、人間の自分勝手さや業深さだといえば
そうなんだろうけどさ。

「ル…」と微かな唸りを発する大眼。

その、自らの変化の兆候に気付き、
望みを失う大眼。

「ルルル…」は化け物化するアラートですかね。
興奮すると「ルルル…」ってなるみたいですが。

その割にはイントロや

真魚に食料を運んできたときも唸ってて

まぁ漫画の演出上の事情でしょうけど
「ルルル…」の発声は厳密なサインではないのかも。


(オデ、モンスター化するしなぁ…)と、
真魚との逃避行の夢破れた大眼に
「一緒に来い…」と語りかける真魚

この時点で真魚
大眼のモンスター状態を知らないので
変装させれば何とかなるかも、などと
考えたのでしょうか。
まぁそれが成功したらしたで
デコボコ珍道中になって面白いかもしれん。

真魚に人間だと太鼓判おしてもらって

「オ、オデが、人間…!?」と戸惑う大眼。
しかし今までを振り返れば
「オデだって(元)人間なのに…!!」と
何度も悔しい思いをしてきたであろうし、
どっちかというと戸惑うよりも
我が意を得たり的な反応のほうが
自然なような気がするけどなぁ。

そこに遅れてやってきたじいさんは
大眼が人喰いの化け物であると真魚に告げる。

辺りを見回すとガイコツの山だが、
“猫またぎ”って感じの白骨しか残ってない。

狙ってやらないと、こうは綺麗にならんよね。
大眼が我に返った時に、後ろめたいと思ったなら
ガイコツなんて処分するべきだしさ。

大眼にも、ちょっと自己顕示欲が
あったんじゃないかとすら思えてしまいますが、
まぁいうてもその辺は昭和63年の漫画ですし
作画のインパクト優先ということですかね。

「頭がフットーしそうだよおっっ」という大眼。

超人ハルク』なんかは
怒りの感情で変身していましたが
感情が昂るだけで我を忘れちゃうってアンタ、
そりゃケダモノって言われてもしょうがないですぜ。

もうちょっとこうさ、

梓みたいに自制というやつをだなー。


ありゃ、3回目でも終わりませんでした。
もう一週やらせてくださいませ!

〈つづく〉