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「われら顔面仲間」レビューその1

今回は「われら顔面仲間」(1984)の
レビューをしてみたい。

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まずタイトル。
顔面仲間と書いてフェイシャルパックと読ませる。
おそらく、おそらくも何も、
美容パックからの発想なのだろう。
昔の特撮やルパン三世的な、
変装の顔をベリベリ剥がす所作にも
通じたのかもしれない。

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作品タイトルは「顔面仲間」だが、
装四郎が語っているように
彼のサークル名は
「変装倶楽部(フェイシャルパック)」である。

本来、倶楽部はClubであるし、
変装をFacialとするのは無理がある。
代々伝わる「変装倶楽部」の読みは
「フェイシャルパック」ではないほうがよかった。

そして、そうであれば作品タイトルも
インスピレーションはどうあれ
美容パックに準じなくても、と思う。

が、
コメディには一本筋の通ったダジャレが必要で、
それを明示することで、
ダジャレに殉じているのだ、
という信念のようなものを感じられなくもない。


さて、36年間調べなかったけれど、
「パック」は「仲間」という意味に使って
本当に妥当なのか。

Packは「仲間」とか「倶楽部」という意味は
持たないようだ。しかし、
獣などの「群れ」という使い方もあるらしい。
これは新発見だった。

1976年のピンク・レディー「S・O・S」や
1978年の石野真子狼なんか怖くない」に
散見されるように、
男性を狼扱いする由緒正しいしきたりはあって、
だから「われら顔面仲間」というこの作品名が
欲望をさらけ出した高校生たち、
というニュアンスで
「Pack」とつけられたのだとしたら
この作品の方向性もおのずと知れよう。

ラストのオチもさもありなん、
教頭(おやじ)がいう「変態!(すけべ)」が
この作品の主題ということである。

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まぁキスぐらいですけべとは思わないのだが、
面白いのは「すけべ」と発声しているのに
「変態」と書かれていることだ。
すけべは変態とは書かない。

このフキダシは、
教頭の喋りを描写したのではなく
ここで作品のオチをつけたと僕は見る。

であればこの「変態」は
「変態性欲」のことだけではなく
生物の「変態」の意味に寄せてあるのではないか。

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ここで装四郎がマスクを破るシーンは
殻を破って出てくる羽化であり、
恋愛対象として認められなかった相手を
恋人として覚悟する、その変化も
成長=変態とかけてあるとすれば
作品タイトルとオチについては
なかなかに趣向が凝らしてあるといえる。


作品タイトルとオチをやってしまったので
一度仕切り直そう。
次回に続きます。