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『人魚の森』レビューその2


さて『人魚の森』のレビュー、第2回です。
前回はこちら


真魚がでっかいダンプに轢かれまして、
頭では真魚は不老不死だからとわかっていても
姿を見ないうちは不安なものです。

状況説明のコマでは
現場から既に被害者がいなくなっているのに
大声出している者がいたりと
相当パニくってますが

当の湧太はわりと落ち着いており、
これはその“被害者の女の子”が
真魚だとは限らないからかと
好意的に考えてみたのですが、
迷子の真魚を必死に探していたわりには
反応がズブ過ぎますよね。

椎名診療所に着いた後も

物腰にあまり勢いがなくて、
なんだかちょっと物足りません。

ストーリーを離れて先の描写を拾ってみますと

湧太はところどころで
精一杯の表情をしているものの

どこか熱のない瞳も目立つような気がします。

湧太は齢何百年ですから『人魚の森』では
あえて感情を少し抑えめに描いているのかと
思ったんですけど、

真魚も少し抑えめであります。

これは絵柄の変化、ですかねぇ。
描きたい表情が変わってきた、とか
漫画的表現じゃないものが描きたくなったとか。

ちょうど『うる星』『めぞん』と『らんま』の
端境期でもあり、
いろいろとお考えになられたのかもしれないですね。


「『どっちに行ったかもわかんねえのか!!』
そう叫んだ瞬間、男は駐在と共に
ふっと消えてしまったのです…」

まぁそれは冗談ですけど、
ちょっと構成が乱暴ですねぇ。


真魚の遺体(仮)は椎名医師によって
とある旧家に運び込まれた。

真魚が横たえられた部屋には
仏壇と遺影があったが、この遺影は誰だろう?

登和の「こんな私」という台詞と共に
クローズアップされているので、
遺影が喋っている風なホラー演出なのはわかる。
ではこの遺影は、
死んだことになっている登和なのか?
(前髪似てるし)

翌ページにはもう実在の登和が姿を現している。
ただその姿ははっきりとは描写されていない。
登和が 死人/この世のものではない、
と誤認させるトリックとしての遺影だろうか。

ただ、後のいくつかの回想シーンでも
遺影と同じ着物は出てこないんですよね。

遺影の着物は しじら織みたいで、
この佐和の着物とも違うみたいです。


いままさに、椎名医師の手で
腕を切り取られようとする真魚
真魚ちゃんって、身体に欠損があっても
元通りに再生するのかなあ。

『闘魚の里』のレビューでも書いたけど、
その辺どうなんでしょ。


意地悪ばあさんの体で佐和登場。
姉には弱いが椎名医師には態度がデカいな。

そういやあ登和と佐和は
恋の鞘当てとか無かったなぁ。
もちろん、無くてよかったと思ってます。

初見では二人の関係を知らないので気付けませんが
この両コマは、双子の姉妹の
若い肌と老いた肌を比べるいいカットですね。
身体の向きは違いますが
顔の向きと縮尺、フキダシ位置が合わせてあるのは
意図的という感じがします。

人魚の肉を見つけたいのだ、という登和に
佐和は「そんなもの…」と呟きますが
続けて何が言いたかったんでしょうか。

ありはしないのだ、ではないでしょう。
佐和が人魚(人魚塚)の存在を知っていることは
登和にはバレていますから。

また、
「そんなもの、手に入れたって意味がない」などの
人魚の肉の価値を貶める言葉でもないと思います。
実際に、人魚の血ですら効能があったわけで。

ここは、
「食べたところで なりそこないになるだけだ」
などの、なりそこないの存在の示唆かと
僕は思うのですがいかがでしょうか。

ま、テンポだけで書かれた台詞、という
可能性も十分ありますけどね。


蘇生し、目を覚ます真魚ちゃん。
「やだっ、私なんで裸っ…」とはならず。

ほんっと色気もへったくれもないな。
まぁさっきまで死んでたしな。

診療所から姿を消した真魚を探す湧太。
見つからないので椎名医師に疑いをかけるが
そりゃまたずいぶん一足飛びの推理だな。
そうするなら椎名医師に
なにか不審な描写があってもよかったろうに。

椎名医師を探して神無木家に忍び込んだ湧太は
白髪の美女 登和と出会う。
彼岸花の柄の着物は、
あの暗がりの女が登和だったことを示している。

暗がりでは顔の上半分が真っ黒だったのが
長い白髪で現れるのは、コントラストの妙があるな。


やっておしまい!とばかりに
なりそこない犬をけしかける登和。

後のページでは登和に懐いている様子も見られるが
なりそこないにそんな理性あるのか?
登和もなりそこない属性になってるからOKなのか?

そもそも人魚塚にさえ未だ辿りつけていない登和が
なりそこない犬とどう繋がったというのか。
この先で昔の回想シーンに犬でも写っていれば、
まだ納得もできるんだけど(写ってないです)。

「んなこと!」「わっ!!」「(痛)て~っ!」って、
死ぬ前にしては言葉のチョイスが軽いなぁ。
さすが死に慣れてるだけあるな、いやマジで。


べらっ!

というわけで、真魚の蘇生と入れ替わりに
湧太は死んでしまいました。
う~ん、命が軽いな~っ。
まぁシリアス一辺倒にする気はないというのは
なんとなく伺えますが。

それでは今週はこの辺で。
来週もよろしくお願いします。

〈つづく〉
(続きの第3回はこちら