ぼちぼちと更新していければ

(毎週土曜日中の更新を目指しています)









終ときて了! うる星「面堂兄妹!!」レビュー

面堂了子というキャラは
「うる星」がマンネリになると出現するという、
まさに“助っ人”でありながら、
彼女が登場する話はマンネリになるという
よくわからんキャラである。

キャラの役どころも確立していることから
“準レギュラー”なことは間違いないのだが、
どうも彼女には、“油断できないぞ”という気持ちを
持たざるを得ない。

初登場時からガイコツのマスクを被っていて
心を読み取れない雰囲気だったが、
そのキャラクターもまさに
“ペルソナ”を駆使しているかのようで
本当の素顔がよくわからないのだ。

あたるやラムはもとより
兄の終太郎にも本心は見せず、またその
「面白いことが好き」という性格に基づく行動も
少々芝居じみているから、
それが彼女の本当の姿なのだ、とは
迂闊に受け入れられない感じがする。

物語中でも謎に満ち溢れている彼女であるが
その謎は、ミステリアスというよりは
「あんた本当は“うる星”がメインの舞台じゃ
ないでしょ」と言いたくなるような、
“違和感”に近いものだと思う。

彼女が、「うる星」のストーリーに
寄与している気がしない、というか
むしろ彼女自身が「うる星」という世界で
遊んでいることが多い…ような気がする。

というわけで今回は
了子初登場の「面堂兄妹!!」(12-8)を
取り上げてみよう。

サブタイトルは、アニメ版の
「ザ・面堂兄妹!」のほうが語感がいいな。

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表紙は了子の後ろ姿。
高橋留美子氏は、黒髪の古風な少女に
特別な思い入れがあるのかと
当時は思っていたものだけれど、
古式ゆかしい女の子キャラの作品は
氏の作品には思い当たらない。
動かないと“もたない”しな。

言われてみれば了子狂言回し役が多く、
自らはほとんど動かない/手を汚さないという点が
彼女との間に隔たりを感じる理由なのかもしれない。

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牛車と共に、黒子がフィーチャーされている。

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牛車自体は面堂の母親から引き継いだ要素だが、
黒子は「うる星」において、
了子の十八番となっている感がある。

この黒子のような、
知識としては知っているけれど
よく考えたら不思議な存在、というものを
引っ張り出してくるのは
高橋留美子氏の得意技だ。
例えば食い倒れ人形とか、
“かわいいコックさん”などもそうだろう。

日本のカルチャーはその辺りも一巡したので
今では黒子など珍しくもないが、
漫画文化はかなり先をいっていたといっていい。

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退屈を持て余すブルジョア令嬢、という感じだが
今見ると、「そんなわきゃーない」と思う。
了子が、自分が退屈な状況など許すはずがないのだ。

実際、あたるたちとの出会いによって
彼女が開眼したわけではないのである。
たぶんもうずーっと前からああだったのだ。

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だからある意味、ハンカチを手にしたのが
あたるでよかったといえる。
了子を楽しませられない者が拾っていたら、
了子によって処分されていたかもしれない。

もしくはあたるの手に渡るように
ちゃんと仕掛けが施されていたかもしれない。
くだらないことにいくらでも金が使えるのだから、
それぐらいはやりそうだ。
つまり、全部彼女の筋書き通り、という可能性も
あるよなぁ、ということなんである。

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古めかしい牛車を見てなお、
若いお嬢さんではないかと推測するあたる。
妙齢の女性が出てきそうなものだが。

というか面堂の母親を連想しないのか?
と思って「戦慄の参観日」(6-4)を確認すると
あたるは面堂の母の牛車を見ていないのだった。
ほ~。そうでしたか…。

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了子扮するガイコツ。
後々あたるのクラスメイト達も
「ガイコツ」と評しているが
なんともファンシーなガイコツである。
顎の骨(下顎骨)が別体じゃない時点で
ガイコツではないのであるが、
ではオモチャのガイコツマスクのつもりなのか、
それともガイコツをリアルに描かなかったのか、
どちらなのかはよくわからない。


ここまでが了子登場のイントロである。

このエピソード、駆け足でレビューするには
もったいない面白さなので、次回に続きます。

Twitter開設なう。

2021年6月1日に、
高橋留美子氏がTwitterを開設された。

個人のアカウントというよりは
仕事用の公式アカウント、という色調が強い。
るーみっくプロダクションではなく
担当編集者が担っているようで
宮崎駿氏と鈴木敏夫氏のような感じだろうか。
おそらくは小学館の編集者なんだろうけど、
ということはそういうことなのか。

アカウントは“rumicworld1010”。えぇ……。
ちょっと調べてみたら、
氏が使いたそうなIDは軒並み使われてるな。
筆頭のTwittererは熱心な方のようなので
どうこういうのは無粋であるが、
中には押さえるだけ押さえておいて
使った形跡の全くない、
売買を目論んだようなアカウントもあったりして
なんだかなぁ、な感じではある。
そういうのに屈さないで、
違う文字列で開設なさった英断には
拍手を贈りたい。

5日が経過した本日6月5日時点で
33.2万フォロワーである。
すごいといえばすごいが、
地球規模で愛読されていることを考えると
意外に少ない。

おそらくは、昔のファン層が
氏のTwitter開設のニュースを知る経路がない、か、
現在の氏の作品、ひいては現在の漫画界の状況に
興味をもっていない、などの理由によろう。

また、今現在のファンの一定層に
作品外まで深掘りする習慣がないことも
一因かもしれない。


最初のTweetにはラムが掲載されているが
そこは普通、連載中の
「MAO」なのではないだろうか。

あと誰が決裁したか知らないけど
ヘッダー画像で「2億冊突破」が一番目立つのは
あまりにも商業主義を前面に出し過ぎだと思う。

「最近先生が描いたサイン色紙」といって
2年以上前の絵を持ってくるのもどうなんだ。

このTwitterを運営している編集者の人は
もうちょっと“プロデュース”ということを
考えた方がいいと思う。

「編集王」

どさくさ紛れに何やっとんじゃ!「戦国生徒会」レビュー

さて「戦国生徒会」の後編は
ななこ の怒り顔から。

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留美ック初期に多用(?)されたこの作画、
「戦国生徒会」が掲載された時期には
あまり描かれなくなっていたように思う。
往年のギャグ漫画を彷彿させる
ステロタイプの作画だが、
ちょっとほっとするような、妙な魅力がある。

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この台詞も真田くんのボケであり、
笑いを取りに来ているのだけれど
わかりにくいな。

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僕は「ノンポリ」という言葉を
この「戦国生徒会」で知った。
ポリシーのない人が
すべからくノンポリなわけではない。
ノンポリとは学生運動用語なのだ。
高橋留美子氏の時代には
おそらく学生運動は鎮火していたと思うが
わりとその手のネタは、
氏の作品中に見ることがある気がする。

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このコマなんかも一見、
真田くんと ななこ のラブコメギャグだが
その実、軟派が硬派を手玉に取った、
“してやったり”的な面白味もある。

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「産休…」「あの先生が…」
意図してか意図せずか、
これはなかなか踏み込んだギャグだ。

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クラスにちゃんと
体育クラブ系と文化クラブ系の
生徒がいることを描き込んである。
伏線とまではいかないが、
まめな作業であり、
作品に面白みが増していると思う。

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クロロフォルムは、
嗅がせただけでは昏睡させられない、
というのは今では広く知れ渡っていると思う。
逆にそういうシーンが
ドラマや映画においても見かけなくなってきていて
ロストテクノロジー(?)と
なってしまったかもしれない。

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最近では女性教師による男子生徒への
“せいてきぼうこう”も、たまに聞くようになったが
この頃はそういう概念からしてないわけで。

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学生運動の投石や火炎瓶のように
“昔はこういうことをしていたのか”と
今の世代には誤解されそうだが、
どんな暴力行為においても
硫酸をかける、なんていう振る舞いは
およそ聞いたことがない。
だからこれはギャグだと思うが
あまり自信はない。
もしかしたら、学生運動の私刑(リンチ)で
こういう事があったのかもしれないし。
実際にあった事件が元ネタだとしたら、
それを使ったギャグというのもすごい話だけど。

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“GRAVE”に見えるが後ろのページでは

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“GRAPE”とはっきり読める。
作画ミスでなければ、
本物が“GRAVE”(重要)、
偽物の剣山が“GRAPE”(葡萄)なのか。

そういえばデザインが
昔のファンタ缶にちょっと似ているな。
たまたま手近にあったものを
作画材料にしたのかもしれない。

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「しゃんとしなさいよ!!」
この言葉が、ななこ の意識が真田くんに
移っていっていることを表している。
「ちゃんとしなさいよ!!」ではなく
「しゃんとしなさいよ!!」なのだ。

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ななこ はぶすとちゃうわっ!

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このモブキャラ…
あきらかにテイストが違うやろ。
前回取り上げた盗聴係の生徒といい

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劇画系の漫画家さんがヘルプしてるのか?

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制服が穴だらけになるよなぁ、と
何十年も思い続けているんだけど。

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真田くんがいきなりキャラ変わっちゃったけど
特にスイッチがあったわけではない。
どっちかというと真田くんのこの豹変が
ななこ のスイッチとなったのだ。

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ハリウッドのパニック映画で
いきなり恋愛をぶっ込んでくるみたいに
唐突なラブシーンである。
ページをめくってすぐ、というわりに
あっさりした小ゴマで、
そのあっさり具合が逆にリアルで、
結構ぐっとくる。
キスシーンに動じる年齢じゃないけれど、
上級生のお姉さんからの積極的なキス、
となれば話は別だ。

思えば「めぞん」の前半もそうだったのだが
「めぞん」の後半では響子が幼くなってしまって
“年上の女性”という妙味はなくなってしまった。
返す返すも残念なことである。

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敵の手に落ちる気マンマンなんである。
奪還アクションを夢見て、酔っているのである。
でもいいのだ可愛いから。

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な・な・こ、SOS! な・な・こ、SOS!

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下の名前を呼び捨てである。
ちょっとキスしたからって
いい気になっているのである。

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榴弾は四方八方に飛び散るので
ななこ も無事では済まないのだが、
所詮高校生が作ったものですし…。

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文化クラブは化学部しか仕事してないな。
まぁやるとしたら「キルラキル」みたいに
荒唐無稽にするしかないもんな。

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ななこ の「はい!」は
良妻っぽさを狙ったものだろう。
現代では通用しないかもしれないが
当時の少年誌としては
そういう需要もあったことだろう。
差別的かもしれないが、
あったことは事実であるし、
それを当時、作品世界に反映させたことは
商業的ではありこそすれ、
不遡及とすることが望ましいと僕は思う。

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実際には生徒会長の威信など既になく、
命令を発したところで
肉弾派やかしこい派には効力がないのだが
会長印という実の部分で、
その命令に服従せざるを得ないという、
これも“してやったり”系のエンタテイメントだ。

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なんで失われたことになってるんでしょうね。
見つかるかもしれないじゃんね。

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読者はみんな竜子しか見てないというのに
律儀に“寒中”を表現しているモブ。

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ラストは“どこまでも続くドタバタ”と
いったふうで、これは留美ックの得意なエンドだ。
得意とはいえ、前年の「ヘルプマン」のラストが

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同じように夕陽の下を駆ける二人で
意趣としては似ているのだが、「ヘルプマン」が
奥に向かう=消えていく、に対して
「戦国生徒会」では手前=こちらに走ってきており、
まだ見ぬ未来へポジティブに進んでいく、
という雰囲気になっている。
少年誌らしい気持ちいいエンディングであり、
読後感もとてもいい。

ただここで ななこ が最前面に来ているせいで
真田くんの印象が薄くなっているのは残念だ。
ななこ が真田くんの手を引いているので
仕方ないのだが。

この頃は女性がリードする漫画が
人気だったような気もする。
いや、本質的には
“女性にリードされたい”だったろうか。

もっとも「戦国生徒会」にしても
ヘルプマン」にしても、
軟弱なだけじゃなくて、奥底にはちゃんと
骨のある一面も隠し持っていてほしい、という
作者の意向が描かれている。

それを受けて、読者側でも
“そうありたい”と思っていたわけだが、
それが現代の青少年読者にも通用するかどうかは
ちょっとわからないなぁ。

ノンポリ真田くん奮闘記!「戦国生徒会」レビュー

このところ連載長編のレビューが続いていたので
今日は「戦国生徒会」を取り上げます。
1回でまとめるのは無理かな~。

「戦国生徒会」というタイトルは
角川映画戦国自衛隊」からのインスピレーション、
というのは疑いのないところだろう。

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掲載誌の表紙を飾ったカラーイラストには
男らしく(性差別)きりりとした真田くんが。
到底、真田くんの真の姿ではないのだけれども。

仮にも雑誌の表紙であるし、
軟弱な男の子では、
雑誌そのものの売り上げにも関わると
調整されたのかもしれない。

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それに比べて扉絵は普通にいい感じ。
真田くんの伸びやかなポーズが希望を感じて、
少年漫画の扉絵として好ましい。
この絵の真田くんはちゃんと真田くんなので、
表紙カラーイラストの方は
やはり何らかの意思が働いているのだろう。

レタリングはなんだか後の「キルラキル」っぽいな。
生徒会の話だしな。

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1コマ目は戦国高校のロングショットから。
そこにわけのわからん校内放送が流れるのだが
もうこの1コマ目から引き込まれてしまう。
鉄条網がいいし、
校内放送の暗号の意味不明さも、
妙に覚えたくなる不思議なフレーズで、
キテレツな舞台背景なのだな、と見せたところに
真田くんの顔が、コマを突き破って伸びてくる。

真田くんの目線は上のコマ、
校内放送のフキダシに向かっている。
読者の代わりに事件に入っていくのは
この男の子なんだなと、すっと入ってくる。
その一方、真田くんを取り囲むクラスメイトの
視線が厳しいことから、
何かただならぬことが起きようとしているのだなと
伺わせ、初っ端から秀逸な構成である。

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で、この「ななこさんに会える…」を
そのすぐ後に持ってきたのが天才的だ。

真田くんが教室を出て、駆けだしてから
呟くのでは普通なのだ。
周囲の殺伐とした雰囲気に気付かないまま、
のほほんと呑気に女の子の名前を口にする。
そこから「これはギャグ漫画だよ」と理解できて、
読者は早くもリラックスできる寸法だ。

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元ネタは「スペインの雨は主に平地に降る」だが
留美ック脳においては「~長崎~」のほうが
本家のようにも感じてしまう。
むろん現実社会には
「日本の雨は~」というフレーズはない。
おそらくは“内山田洋とクール・ファイブ”の
長崎は今日も雨だった」からの発想だろう。

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ドアのガラスが外され、カーテンになっている。
こういう、少年倶楽部「少年探偵団」から
連綿と続くギミックは、
どこかドキドキハラハラする。良き。

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全身包帯巻きの元祖はミイラだと思うが
この会長の“安置”っぷりが、またミイラっぽい。

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みんな判っているけれど……
という自虐ギャグの形式をとっていて、
だからスベり笑いに近いのだけれど
会長が当初から無言で横たわっているのは
やっぱりちょっとキツいかな。

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The・あの頃の高橋留美子の女性キャラ、
といった感じだ。
ちなみに葵ななこ という名前の由来は
よくわからない。
真田祐という名前の由来もよくわからない。

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思えば、この「痛かった~~っ!」
という台詞はギャグなんである。
おそらくリンチにあったのだろうが、
そういう凄惨な出来事を
「痛かった」で済ます会長の妙なタフさ、
そしてふてぶてしさが、剽軽であり、面白い。
ただ現代においては、
ギャグと受け取ってもらえないのではないか、
という気もする。

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書記の真田くんは
この会議でも議事録をとっていて
このコマでは会長の言葉を反復しているが、
意外なことにこの“反復”は
この後のストーリー上で利用されていない。
これでは“書記”であることの意味合いも
薄いわけだが、どうしたことだろうか。

もしかしたら初期のプロットでは、
真田くんが無意識に反復してしまうことで
会長職を引き受けざるを得なくなったとか、
そういう仕掛けがあったのかもしれない。

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生徒会長印は漢委奴国王印の金印が
モチーフであろう。

アイテム争奪戦というエピソードは
「うる星」でも数多く展開されたが
「たいしたものじゃなかった」というオチに
されがちだったような気がする。

それに比べて本作では、
この会長印に確固たる価値を与えていて、
だからストーリーに力強さを感じる。

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会長の、おっさんじみたこの台詞に対して
特に言い返さない ななこ。
留美ックには気丈な女性キャラが多く、
こうしたことを言われた場合に
言い返さずにはいられない人が多い気がするが
ななこ のこのノーリアクションっぷりが、
彼女がマスコットキャラである、
というポジションを端的に表している。

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なあ~んにもわかってないから
真田くんには荷が重いのだが、それは
「わかってない真田にやらせたらかわいそう」
ということであって、
元祖生徒会という組織において
真田くんでは会長職を遂行できない、とか
そういうことは全く考慮されていないのだ。

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竜ちゃん(違、いや違わない)カッコいい。
竜之介より美人めであるが、

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体操服が似合ってる。それこそ夏子より。

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カッコいい!男前!!

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ななこ が太もも晒してなかなか色っぽいのだが、
すぐ目の前に竜子の生足があるので何とも。

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伊能つかさ もカッコいい。
白い長ランがよく似合う。
「男組」は読んでないんだけど、
こういうインテリ番長って出てきたのかな。

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ほんとに色男なんだけど、
こういう色男が、最初から最後までカッコいいって
留美ックではかなり珍しいと思う。

藤波竜子(藤波辰巳〔辰爾〕)、
伊能つかさ(伊藤つかさ)とあるならば
真田祐と葵ななこ も元ネタがありそうなもんだけど。

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台詞だけでも十分伝わるのに
盗聴担当の生徒をちゃんと作画するあたり、
丁寧というかやり過ぎというか…。
でもそういう余計な手間を省略しまくった結果、
心に残らないものになったりするので
こういうのは大事だと思います。
つうかこの台詞、誰が発してるんだ?
(フキダシのシッポ位置)

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いやせめて開けて確認しようよ。


とまぁ、ここまでが舞台と登場人物、
そして設定の紹介となる。
本格的な会長印争奪戦はこれからだ。

というわけで、次回に続きます!

GO TO !? うる星やつら「幼児たちよ、大志を抱け!!」レビュー

先週は「ああ、子どもの日は恐怖じゃ!」を
レビューしたので、今週はその後編の
うる星「幼児たちよ、大志を抱け!!」(9-1)を
取り上げようと思う。

しかしほんとにアニメの方
(「秋の空から金太郎!」と
「たくましく生きるんやっ!」)はひどかった。
“おバカな面々のドタバタコメディ”的に
低俗なアレンジがされていて、
それはひょっとしたらバブル期の
イケイケだったフジテレビの指示に
よるものかもしれないけれど。

「宇宙は大ヘンだ」は名曲だけど、
『ヘンとヘンを集めてもっとヘンにしましょう』
というフレーズは、今から考えると
どうとでも解釈できる、
危険なコンセプトだったように思う。
あの頃の時代を示すキーワードとして
エンタテイメントとしての「大騒ぎ」が
あると思うのだけれど、
「ドタバタ」「ハチャメチャ」は
無作為にやるとただただ幼稚になってしまう。
初期のアニメ「うる星」のいくつかが、
そうなってしまっているのは残念だ。

金太郎の原作の方はそこまででは……、
いや実は原作の方もかなり乱暴ではある。
後の「うる星マンネリ期」に通じるものがある。

しかしアニメ版金太郎と違って
漫画の利点の“テンポの良さ”をフル活用していたり
見るべきところは結構あるので、
気を取り直して順に追っていこう。

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扉絵はこれ。
ちょっといただけない感じである。
クマも、一面トーンか…。
「うる星」後期は
こういう感じの扉絵が多かったけれど。

ゲスく勘繰るアホ面の児童、少し距離を置くテン、
それにキンタロ(金太郎の本名である)の表情から
エピソードが金太郎の
空回りっぽい内容なのだなと伺わせる。
そしてその実その通りなのだ。
扉絵でだいたい全部説明できちゃっている。
そういう意味では優秀な扉絵なのかもしれない。

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金太郎が待ったをかけた電信柱。
いやちょっと待て、
この電信柱の作画は普通にすごいだろ。
パースも付けてるし、なんか庵野くさいぞ。

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このエピソードをレビューすることにしたのは
先生のこの台詞を取り上げないわけには
いかんからなんですよ。

5chのうる星スレでは「うる星」の名フレーズを
スレのサブタイトルに付けているけれど
この「つまらないことを知っている!」は
当時のファンの間では、使いやすいミームとして
結構多用されていたと思うのだ。

アニメ版では
「つまらないこと知ってるぅ~(♪)」みたいな
全く違うノリになっていて、
「これはアカン……」と思ったものだった。

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「おや?」と思わせるのがこの真子の母の扱いだ。
たまたまあたると顔を合わせたようだが
そつのない会話があまりにも“普通”で、
全然“ヘンなところがない”。
保母の先生がちょっとボケた変わり者なので
キャラ競合を避けたのだろうか。
これではただの綺麗な奥さんである。
そのわりには
あたるがむしゃぶりつくこともなく、
なんだか話を進行させる部品になっちゃってるな、
という印象だ。

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「子どもの日の集まり」が
どう作用しているかというと、

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このコマで後ろに母親たちが立っている、
たったそれだけなのだ。
他に参観要素はない。

ではなぜ「子どもの日の集まり」に
したかというと、
真子の母を登場させるためであり、
金太郎たちと幼稚園児たちを繋げるためだ。

真子の母が登場しなくても
金太郎たちと幼稚園児たちを繋げることは
できたのではないかと思うが、
そうするとエピソードを通して
幼稚な絵面が多くなってしまうことを
嫌ったのだろうか。

さて一行は幼稚園にやってきたが、

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幼稚園の保母さんの芸風が

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どうにも吾妻ひでおっぽい。
人間の虚飾をシニカルに見てるというか
なんというか。

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この、取調室へのスイッチのような
急な場面転換が、当時のアニメ制作側に
気に入られていたような記述を
メージュか何かで読んだ気がするのだけれど。
OUTかメックだったかもしれない。

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童話「金太郎」は知名度が低い。
本来のストーリーを知らない読者も多いだろう。
それを逆手に取った、

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本屋での調査、というギャグは
なかなかに凝っている。
しかしただ単に、キンタロが幼く無知である、
というだけの受け取り方もできてしまうから
やや不発気味だ。
もっともそこからの、

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童話テンプレの鬼退治に持っていったのは
スマッシュヒットだ。
そういえばテン達は鬼族だった。
その流れで、

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ラムの虎縞ビキニを全身で見せた構成は
いかにも“鬼登場”といった感じでとても素晴らしい。
まさかりを踏みつけるポーズも
善玉を砕く悪玉の行いっぽくていい感じだ。

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ラストシーンはキンタロが強請り(ゆすり)を
している横で、あたるが講釈を垂れるの図だ。
強請り自体は前編のネタであり、
後編のエピソードを読んだだけでは
意味が分からないのだが、それはまぁいい。

わからないのはここで強請る相手が
保母さんなところである。
身内を強請ってどうする!?と思ってしまう。

前編でテンを強請るシーンがあるが
それはギャグとして成立している。
だが今回のこれは、
ギャグというにはちょっと厳しい。
キンタロがおかしくなったようにしか見えない。

その辺が、
このエピソードがちょっと乱暴だという所以である。


またアニメ版の話に戻るが、アニメではキンタロが
「金出さんかいな~!!」と叫んで終わる。
原作が、あくまであたるの体験記なのとは
全然違った、ヘンなキャラクターを一人一人
紹介していくようなアプローチとなっている。

アニメ版は「うる星『やつら』」というタイトルに
引っ張られ過ぎたのかもしれない。
引っ張られたのか、
テレビ番組としてのアレンジなのか。

もっともこうして
原作を凌駕するだけのインパクトを残したのだから
アニメ最初期としては成功だったのかもしれない。

まぁでも秋に金太郎の話をやることはないよな
(テレビ放映は1981年の11月だった)。

キンタロはアニメ放映開始当時の
キャラクター商品にも結構顔を出していたから

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さっさと放送してしまいたかったんだろうけど。

そんなところで、今回はおしまい!

自粛中でしたが子供の日だったので! うる星「ああ、子どもの日は恐怖じゃ!」レビュー

先日、ちょっとした調べ物で
「笑う標的」をネット検索したのだけれど、
漫画家の きたがわ翔さんが、
「笑う標的」と諸星大二郎氏の作品の共通点などを
ブログで書いていらっしゃるのを発見した。

諸星大二郎作品は、留美ックファンなら
押さえておくべき必須科目なのかもしれないが、
僕はおぞましい系があまり好きじゃなくて
今まであまりちゃんと読んだことがない。

ちょっと驚きの内容だったので、
「笑う標的」をよく知る方は、
きたがわ氏のそのブログをぜひ見ていただきたい。

内容は、
ディープな留美ックファンにとっては
周知の事実かもしれないが、
僕は浅学でまったく知らなかったので、
おおいに感銘を受けた。

いやぁ、ありがたいことです。


えーさてG.W.なので
金太郎の話でも扱おうかと思ったのだが
そのエピソードを、僕はあまり好きではないのだ。

原作を読んだのとアニメの放送を見たのとが
ほぼ同時期だったので、
アニメの印象に引っ張られているのかもしれない。

なんか幼児番組のような構成で、見ていて
バツの悪い思いをしたような気がする。
実際には原作の方は
カラッとしたギャグエピソードなんだけど。

でもこれを逃したら金太郎エピソードは
二度と扱わない気がするので、
やっておきましょう。
うる星やつら「ああ、子どもの日は恐怖じゃ!」。
コミックス8巻のラスト、PART-11です。

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扉絵は立体的で、とてもいい。
高橋留美子氏は
たまにこういう立体的な絵を描くけれど、
単なるアイレベルの絵ではないものを描きたい、
という気持ちが、
この頃はとても強かったのだろうか。

視点が鳥やUFOだったり、小人だったり、
そういうことが「空想科学」的だったように思う。

金太郎のエピソードは、この次の
「幼児たちよ、大志を抱け!!」(9-1)に
繋がっているのだが、

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なぜ巻をまたいでいるのか。

そういえば真子エピソードも
7巻と8巻をまたいでいる。
どちらもジャリテンメインの話だ。
なぜなのか?

一応各話読み切り形式なので、
「続きを読みたければ次の巻も買え」、
という戦略的なものではないだろう。

それとも当時はコミックス収録の計算が
アバウトだったのか?

まぁ「うる星やつら」においては
コミックス版、ワイド版、文庫版で
それぞれ巻数が違うみたいなので
コミックス収録数が区切り、という概念も
あまりないのかもしれないけれど。

好意的に解釈すれば、
雑誌の形態で読んでもらうのが
作者的には本望で、
単行本の形態はあくまで二次的なもの、
とお考えなのかもしれない。

扉一つで長くなってしまった。


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火は吐かない。電撃も出さない。
それが面白い。
これ、「うる星」終盤のラムだったら
鼻白んで電撃くらわして終わりなのだ。
それでは、“熊がいた”というインパクトも
薄れてしまうし、後も続かない。

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㌧㌦(機種依存文字で失礼)

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このコマおもろいなー。
すっとぼけたやり取りと、
ラムのマジメさがたいへん面白い。
実際ラムはこういう時、
エピソードの“マスコットキャラ”に
徹する傾向があって、それは言ってみれば
“異国の人のぎこちなさ”のようで、
見ていて微笑ましいと思うような、
そんな気持ちにさせられるのである。

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テンの台詞「ラムちゃん顔が広いからなあ…」は
全く不要な台詞なんである。
だがこの台詞があることで、
その場の空気感にすごく厚みが増している。

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この LIFE GUARD のトレーナー、
当時(コスプレとして)欲しくて欲しくて、
地元の商店街でアメカジの店を
覗いたりもしたんだけど全然なくて。

つうかあたるはおしゃれだよな。
女の子ウケがいつも念頭にあるからか。

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これは

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これやね(2-7)。

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何が上手いって
このしのぶの膝がちょっと曲がっているのが
最高に上手いなと思うわけですよ。

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この光沢感、鏡面の表現!
これはメカもの漫画に匹敵してるでしょ。

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なんだろうなぁ、
「お茶目系モンスター」を描いていても
高橋留美子氏・山本貴嗣氏・椎名高志氏 辺りに
共通するこの感じ。
モンスターズ・インク」とは、
ちょっと違ってて。
吾妻ひでお氏あたりがベースになると
こういう感じになるのかな。


ストーリー自体は特に何もない。
劇中時間でも、30分程度の出来事だろうし。
その、“さらっとした”日常に流れる時間の中に
でっかい宇宙船が現れる、というのが
このエピソードのキモだと思うのだが、
アニメではやたらドタバタにしちゃってたなぁ。

かといってアニメをリメイクされても
ちょっと困るかもしれないけど。
「金太郎」というお話自体が
知名度下がってるような気がするし。

来週は後編、「幼児たちよ、大志を抱け!!」
をレビューします。

再開一周年のご挨拶

去年のG.W.にこのブログを再開してから
ようやく1年が経ちました。
なんとか継続してやってこれたので、
整備も兼ねて、
このブログの立ち位置の
ご説明をしておこうと思います。


当初、「るーみっく おーるど」は
留美っくに特化した匿名画像掲示板を
目指していました。
もちろん大手掲示板のような規模は考えておらず、
同好の士が少しでも集まればいいな、と
思っていたのです。

言ってみれば、小さなファンサークルを
やろうとしていたのですね。

僕にはサーバーやプログラムの知識が
なかったので、
レンタル掲示板を使おうと思いました。
また、見通しのきかない企画だったので
レンタル掲示板も無料で使えるものを
チョイスしていました。


ファンサークルみたいになればいいな、
とは思っていましたが、
特に宣伝もしませんでしたから、
投稿者はずっと僕一人でしたが構いませんでした。
今と同じように、るーみっく作品のレビューを
画像付きで投稿していて、
それはそれで楽しかったです。


そのレンタル掲示板には制約があって、それは
しばらく投稿がされないと掲示板が削除される、
というものでした。

そして、ついつい投稿を怠った僕の不手際で、
「るーみっく おーるど」の画像掲示板は
消滅しました。ログも残っていません。

「炎トリッパー」の読み解きなんかは
結構がんばったので、残念です。


その画像掲示板への入り口として、
この「はてなブログ」は使用していました。

ですが掲示板が消えたので、
しばらくは宙ぶらりんの状態で放置していました。


2020年の春、野中晴ちゃんとの出会いがあり、
ブログの形で「るーみっく おーるど」を
再始動しようと思いました。
新型コロナの影響で暇を持て余していて、
機運が高まっていた、というのもあります。


そうして、今日に至ります。


さて、「るーみっく おーるど」ですが
主にちょっと古い高橋留美子作品を
扱うこととしています。

短編集と「1ポンド」を除けば
僕は「らんま」以降の高橋留美子作品を
追っていないし、持っていないのです。

そういうのはもう、ファンじゃないのだろうなと
思っていたのですが、
でも昔の作品に対しては愛着とこだわりがあり、
何かを発信したい気持ちもずっとありました。

考えてみれば、古典的な芸術にしても
前期・後期でファンが分かれていたりもするし、
ウルトラマン好きが、平成ウルトラマンをも
好きでなくちゃいけない、ということも
ないはずです。

だから、自分の好きな年代の作品について
扱えばいいや、と思いました。
それが、僕のしたいことなんですから。


僕は昔、留美っく系ファンサークルに
属していました。
でも、無我夢中に「作品」に
没頭することはなかった。

若さもあってキャラに傾倒してしまい、
作品を、漫画として楽しむことが
できていなかったような気がします。

だから、今この「るーみっく おーるど」で
あの頃の作品のレビューを書くのは
僕なりの供養なのかもしれません。


このブログを読んでくださる方には
本当に感謝をしています。
僕には文章作成の知識もありませんので
ただただ稚拙な文章なのに、
お付き合いいただけるなんて本当に光栄です。

今後とも「るーみっく おーるど」を
どうかよろしくお願いいたします。