「ザ・超女」のレビューを続けます。
今回でもう 5 回目となりますね。
前回はこちら。
後頭部で手を組むポーズは
古式ゆかしい“いいかげんなヤツ”のポーズ。
他にも“オレ関係ないもんね”だったり、
要はまともに取り合う気がないアピールなんだけど
この令和の世でも細々と生き延びていて
アニメでもたまに見かけます。
でも実際にやってるところはまず見ない…。
記号としてかろうじて残っている仕草です。
令和の現代においては、洋画の流れから
アメリカ式「hold up」からの
「手を頭の後ろに」がかなり浸透しており、
こうして銃を突き付けられた状態でのそれは
昭和の頃とは受け取られ方が
ちょっと変わってきているのではないかなあ。
だからマリスのこのポーズも今あらためて見ると
“投降”のニュアンスが含まれているように
見えてしまいます。
実際にはそうは描かれていないと思いますが。
やすやすと電子ロックを付けられてしまうマリス。
裏はなく、マリスの油断ですらなく、
まさに“茶番”であります。
あまりにも茶番過ぎるので、つい深読みなどして
意味を見出そうとしてしまいますが、
茶番以外の何物でもなく。
であれば、そうか!
悪党の親玉も茶番であるわけだし
“茶番”こそが「ザ・超女」のテーマなのだ!と
意気込みたくなりますが
まぁ多分に“電子ロックのそこは適当”と
いうことなのではありますまいか。
このマリスの無言の表情は、前段での
電子ロックを付けさせた無防備さもあいまって
読者の考察を煽るような効果を醸しています
(この時代でありながら!)。
“隠された意図があるのかもしれない”と
読者が楽しめるようになっているのは
偶然なのか、作者の力量によるものなのか。
この、スーちゃんと親玉の会話シーンは
ちょっと異質です。マリスを残して
別室の親玉に話をしにいくというのがどうにも。
構成を凝りたい、というのと
親玉の“ごっこ”をバレないように組み込みたい、
というのとを欲張っちゃった感じもします。
ただこれ、親玉(=黄金丸)の“ごっこ”に
よりハクを付けるために
スーちゃんがとった作劇、として見ると
まあまあ納得できる。
これら一連の茶番劇は、
スーちゃんの献身的な黄金丸へのサービスなんだと。
てことはスーちゃん、誘拐した瞬間から
黄金丸に一目惚れしてた…ってコト!?
それもう誘拐の体を成してないよね。
ただのいちゃラブだよね。
キャストオフ!
ギプスを外しただけなのに、
そこはかとなくエロいなあ。
拘束から解き放たれる、というシチュが
余計にそそるんだと思いますが。
凝ってるなあ!
スーちゃんは普段からこの要塞を大事にして
こまめに拭き掃除もしているのだ。
ギプスを外して、手甲を装着するスーちゃん。
なんともマメだなあ。
手甲やビキニは鱗みたいな装飾がされているので
繊細な取り扱いが必要なのかもね。
その昔、こういう SF では
鱗ビキニもよく見た気がするけれど、
ピンクレディーのスパンコールの衣装の影響が
多少はあるのかもしれませんね。
それにしても「なぶり殺す!!」とは。
いやぁ、果てしなくウソくさいですけどね。
事実ここから 5 ページぐらい、
キャットファイトが続いてますし。
前々回のレビューその3で
マーフィーの分身の術を
「コピー de デート!」の元ネタかと書きましたが
こうして女の子が増えているサマは
「三人サクラ 浮気の構図」的でもありますな。
「本物はだれだ!?」というセリフは
実際にあったテレビのバラエティ番組名からの
ネタってことでいいですかね?
このシチュからは微妙に浮いたセリフですし。
「電子ロック解除装置!!」と、
スーちゃんの持つリモコンに飛びつくマーフィー。
えっ、どこからどうなって“解除装置”になるんや?
マーフィー「とった!!」
スイッチ カチッ
マリス「ふにっ!!」 になる可能性、大やろ。
や、それにしてもマーフィーのタコのコマは
スピード感が見事であります。
この辺、昭和のナンセンスギャグのアナーキーさが
いい形で残っている感じです。
戒めが解かれ、本領発揮するマリス。
同時に、自由を手に入れたことでもあります。
アルバイトにしてもギプスにしても
拘束とか制御とか束縛というテーマであり、
そこから解き放たれる、というのが
「ザ・超女」の表テーマであると僕は考えます
(裏テーマは“茶番劇”な)。
マリスはタナトス人と名乗っていますが
「タナトス」は「エロス」の対極の言葉です。
生と死はそのまま欲望と抑制であり、
そこから「ザ・超女」が形成されたと
僕は考えるのですがいかがでしょうか。
背中から崩れ落ちたまま、
マリスを見やるスーちゃん。エロい。
スーちゃんが一番嫌がることを、
同じビンボー人として把握しており、
笑顔で非道の限りを尽くすマリス。
おのれ極悪人。
と、マリスとスーちゃんの対決が終わったところで
今週もいったん終わり。
来週に続きます。〈つづく〉