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“桃の花 梅の花には咲きません” うる星やつら「桃の花歌合戦」レビュー

2月もそろそろ終わりに近づき、
梅の花が満開に咲いている。
僕は花粉症持ちなのだが、
その薬の副作用もあって、
なんだか眠たい日々だ。

春に眠たいといえば
うる星3-7「春のうららの落第教室」なのだが
あの話で咲いてるのは桜である。
今年の桜の開花はもうちょっと先なので、
今日はうる星8-2「桃の花歌合戦」を
レビューしてみよう。

このエピソードは特に名作ということもなく、
人の口の端にのぼる機会も
さしてなかった気がするが、
実際読み返すと時事ネタ満載で、
この頃の「うる星やつら」が
正統派娯楽漫画であることを感じさせられる。

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扉には桃の精。
こういう簡略化されたピクトグラム的な絵を、
高橋留美子氏は時々描かれていたが、
どこかでこういう表現も
たいへんお好きだったのだろうな、と思う。

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ザ・ぼんちのネタである。
このページまるまる費やしているが、
日本中漫才ブーム
レコード「恋のぼんちシート」が出た頃だから
これは仕方ない。

とはいえ「B地点」が出てこないのは、
それなりの遠慮があったのだろうか。

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この「ハリセン」も
漫才に絡めたギャグなのだが
もうそろそろ「ただの暴力シーン」に
なってしまうのかもしれない。

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あたるが「こ、こいつめ!?」と
どもり、そして?マークが付くのが
錯乱しながらも楽しそうですごくいい。

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ここのスピード感は見事!というしかない。
一足飛びの技法自体は珍しくないが、
桃の精が現れた荘厳な雰囲気、息を呑む面々、
というコマからのこれだから、
ほんと最高、キレッキレのギャグである。

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この二人のかみ合わないもどかしさも最高だ。

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この「おーいおーい!!」もたまらんなぁ。
アホの体現、という感じなんだけれども、
どことなく不条理漫画の香りもする。

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竹の子族の最盛期は、
このエピソード掲載の前年ぐらいらしい。
僕はその頃東京ではなかったので
テレビでしか見たことがないのだが。

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たぶんだけど、「聞いとんのか」が
身内である桃の精に(も)係っているのが
当時としては新しいギャグだったのだと思う。
良識人が悪行を働く、
皮肉めいたナンセンスギャグは
この頃おおいに育まれたのではないだろうか。

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「ぐわんばる」は、漫画界での初出は
いつぐらいなんだろう。
「がむばる」とかもあったような。

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あきらかにトシちゃんの曲が元ネタだが
コマ外の注意書きは特にない。
ギリギリ大丈夫なのか?
今販売されている新装版では
どうなっているのだろう?

横で踊っている女性は
「チャチャ人形」で広く通じているようだが
「チャチャ人形」の由来がわからない。
このトシちゃんの曲の歌詞に同様の文言があるが、
そこからそう呼ばれているのだろうか?

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このラムの「あーっ!」の意味が
当時からわからなかったのだが
いったいどういうことなんだろう。

特に意味はないがその状況に対して唸っている、
という描写であれば、
楳図かずお氏あたりのギャグ作品でも
見かける気はするのだけれども。
若輩者ですみません。

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「むすめふさほせ」は、
なんだか昔の短歌にありそうなフレーズだけれども
実は「かるた用語」であって
「短歌」の一部ではないらしい。
そういう意味では相当マニアックなギャグである。

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この童謡は僕もうっすら知っていた。
両親のどちらかがごくたまに
口ずさんでいた記憶があるからで、
実際にメディアで聞いたことはない。
調べてみると大正時代の童謡だそうだ。
だが、この漫画のこのフレーズから、
昔の童謡を逆引きする、またはした人もいるだろう。

こういった、知識を漫画で得る機会は結構あって
例えば僕が「ありてい」という言葉を知ったのは
「めぞん」1-8の響子の台詞によってである。

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今でいうと、「鬼滅」のおかげで
小学生が難しい感じをやたら書けるらしい。

そういうのって、なんかいいなと僕は思ってて。
そういうのって、忘れないしね。