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戦争ネタと「うる星やつら オンリー・ユー」雑感

二日前の2022年2月24日、
ロシアがウクライナへの侵攻を開始した。


数十年前、中高生だった僕はミリタリー好きだった。
ミリタリー・オタクといえるほどではなく、
手に入りやすい軍装品を買ったり、
“月刊COMBAT MAGAZINE”を買ったり、
戦争映画をよく見たりする程度だったけれど。

言ってみれば漫画やSFの中の
地球防衛軍”のリアルな延長として、
軍隊や兵士に憧れていたに過ぎない。
第二次大戦やベトナム戦争の構造も
まったく理解していなかった。


ベトナム戦争の頃に、
日本でも反戦活動が盛んになったが
それは僕らよりも少し上の世代のことだ。

漫画・アニメに傾倒した僕らの世代は
“新人類”と呼ばれていた。

“新人類”世代は政治的無関心の傾向が強いと
一般的には言われているが、
しかし毎年、終戦記念日頃に必ず放映される
反戦反核のコンテンツに親しんだこともあり、
戦争というものをまったく意識しない、
ということはなかった。

僕が物心付いて以降、
戦争について一番熱心に語られていた時期は、
さだまさしの唄う「防人の詩」が主題歌の邦画
二百三高地」が公開された1980年頃だろう。
アニメ的には「ヤマトよ永遠に」が
劇場公開された年だ。

宇宙戦艦ヤマト」シリーズは
自己犠牲の物語であることから
特攻の美化と揶揄されたこともあるが、
それでも“戦争は辛く悲しいものだ”という
表現はなされていた。
その後、
「ザンボット3」「ガンダム」「イデオン」と
富野監督の薫陶を受けた僕らは、
戦争体験はないものの薄っすらと、
“戦争は忌避しなくてはならないのだ”という
概念を身に付けることとなる。


ここから先、ある作品中での戦争描写について
批判的とも捉えられる文章となりますが
作品を貶める意図はなく、
その時代の“娯楽作品”として順当な内容であったし、
僕自身、その作品のその描写について
今現在、否定するものではないと
最初に述べておきます。


プーチン大統領が、
ウクライナへの軍事作戦行動を発表した時、
僕はこの「るーみっく おーるど」ブログのネタを
考えている最中で、
なので不謹慎ながら──
アニメなどと重ねてしまって不謹慎ながら──
うる星やつら オンリー・ユー」の予告編で
ラムの親父が叫ぶ、
「全砲門開け!戦争じゃ、いてこましたれ!」

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という台詞が頭の中を駆けずり回った。

「オンリー・ユー」の監督の押井氏は
かなりのミリタリー・オタクであり
過去の戦争に対しても造詣が深いかただ。

またその頃のアニメファンが
軍事マニアと一部重なっていたこともあって
「オンリー・ユー」内でも
戦争(戦闘ではなく戦争)ネタが散見される。

「根性据えて戦うんやで、進め一億火の玉じゃ!
肝っ玉 眼ン玉じゃ!!」

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「名誉と栄光のために、諸君のその若い命を
捧げるのだぁ~!!」

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「死ぬ時は一緒だぞ~っ!」
「兄さぁ~んっ!!」

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「行けぇ~い! 愛のために死ねぇ~!
愛のために死ねぇ~!!」


もちろんギャグなのだ。
これらを“ナンセンス”だと断じているのだ。

そしてそれらは、僕らのような子供たちが
冗談にして騒いだところで
大人たちは動じないだろう、
フィクションだと看過されるだろう、
そういう甘えのもとに展開されるギャグだった。

しかし2022年、
社会/世界はその無能さをさらけ出してしまった。

goldhead.hatenablog.com


上記ブログにはたいへんに共感する。

翻って、
「もうギャグじゃなくなったんだな」と思う。


ジローズの「戦争を知らない子供たち」は
1970年の楽曲であるが、
安保闘争学生運動に関わらなかった
“新人類”世代の僕らにとっては
「(もう起こりえない)戦争体験を
語ることこそ無意味」とか、
「戦争を体験したからって偉そうに」とか、
そういう感じ方があり、
だからこそ押井氏はその世代に向けて

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「おい、見ろよあの戦闘機!」
「カ~ックイイ~ッ!」
「やっぱ本物の戦争は緊迫感が違うよな~」
「そおかぁ~、これが戦争なんだなぁ~」
「(窓から手を振って)お~~い!!

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「あなたたちって本当に根が不謹慎にできてるのね、
戦争になってしまったのがそんなにうれしいの?」
「あぁ~、うれしいねぇ~! これで俺たちも
戦争を知ってる子供たちだもんな」
「こんなチャンスめったにねえもんな」

という秀逸なギャグをぶっこんできたのだ。


だがもうそれも終わりだ。
「オンリー・ユー」のこのギャグは
リアルの戦争によって、面白さを失ってしまった。
そのギャグの記憶は
僕から消えることはないけれど。


こんな時に、漫画の話をしていていいのかと
思うんだけど、うなだれた顔をし続けるには
僕らには僕らの生活があり過ぎて。

ロシア国内で反戦デモをしたロシア人が
当局に拘束されて、
ウクライナで苦しんでいる人に比べれば
このぐらいはなんでもない」と述べたという。
とても勇敢なことだと思います。
僕にはそんな勇気はなくて。
申し訳ない。申し訳ない。