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『これで、完璧なのよ』めぞん「夏色の風と」レビュー

関東甲信越地方は昨日梅雨明けが宣言された。
今日は気持ちのいい夏空だ。
だがしかし東京は緊急事態宣言真っ只中で、
昨年に引き続き、今年もプール遊びは見込めないし
近県での海水浴も楽しめそうにない。
せめて広い青空を満喫したいものだが
越境しての旅行も憚られる雰囲気であり、
なんとも鬱屈した2021年の夏である。
気持ちだけでもサマバケでロマンスしてぇなぁ…。
というわけで、
めぞん一刻6-8「夏色の風と」のレビューです。

サブタイトルの「風」からし
一過性を感じさせるこのエピソード、
今読むと古いなー。

ペンション旅行っていうのがもう、
いつの時代だよっていう。
平成にも自分探しの「深夜特急」ブームが
あったけれどもそれよりはるか前、
アンノン族が清里
ソフトクリームに群がっていた頃の
昭和の話なんである。

というか同じスピリッツではこの頃
「軽井沢シンドローム」が進行中だ。
だから五代の向かう先は
信州というわけにはいかなかったのだろう。
北海道旅行は金がかかって、
貧乏学生の五代にはキツかろうに。

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扉の五代は
THE NORCE FACE のTシャツを着ている。
リッチだな、と思いきや、
この頃の THE NORCE FACE はまだマイナーだ。
ではなぜ五代が?
うーん、背負っているバックパックともども、
BE-PAL小学館)でも資料にしたのだろうか?

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外で飲んじゃダメだってさ。
よその人が見たらびっくりするからだってさ。
コロナ下の路上呑みとか見たら腰抜かすな。

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朱美さんの分析に続いて次頁で

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五代もしっかり管理人さんを見透かしている。
その割りには、

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管理人さんにはストレートに言わないと
伝わらない、ということにまだ気付いていない。

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実にギャルゲー的登場である。
何かの共通項で繋がっているならともかく、
縁もゆかりもない美少女が、
突然声をかけてくる、っていう、
そんなラブ・アフェアあります?
もっともこれはご都合主義だと
いっているのではない。
さすが始祖、と言っているのだ。

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眼鏡っ娘である。
“眼鏡を外したら美少女”の典型だが、
このエピソード以前に
眼鏡っ娘という概念があったかというと、
(青少年漫画・アニメでは)正直微妙である。
「軽シン」の薫、そして
超時空要塞マクロス」のヴァネッサ(同一人物)
ぐらいしかぱっと思い付かない。
Dr.スランプ」のアラレちゃんは
眼鏡っ娘といえるかもしれないが、
アラレちゃんに欲情するってのは
当時のアウシタンやローディストの中でも
上級者過ぎる感じだったし、
まぁともかくさすが始祖、である。

そもそもこの五代と大口小夏の出会いかた自体、
少し前の女性とのトラブルに
踏ん切りをつけるという目的も含めて、
片岡義男の「彼のオートバイ、彼女の島」と
クリソツだし、
大口小夏の人懐っこい性格にしても
「彼のオートバイ」のミーヨとそっくりだ。

異なる創作物で、
こうしたシチュエーションが同様に描かれるのは
それが読者のニーズに合っていた、と
いうことでもある。
旅先での予期せぬ出会いに思いを馳せる青年が、
日本にはそれだけいたということだ。

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北海道まで手紙を書くためにきたのね?
とコナかけられているのに

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否定するガキの五代。
前頁の五代のセリフ、

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を受けていて、なかなかに味わい深い。

こういうのって、五代に共感する男性読者と、
「俺ならもっとうまくやれる」という読者の、
両方にアピールできてお得なんだろうな。

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北海道“徒歩”旅行だあ~?
北海道なめんじゃねぇ!!

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超美人である。めぞん登場人物中、断トツだ。
というか化粧したラムである。
起き抜けなのにフルメイクとはこれ如何に。
ベアトップのワンピースがまたリゾート感満載で
めちゃくちゃ魅力的ではないか。

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五代の胸元のしゃもじみたいな物、ナニコレ。
五代の一部じゃなさそうだ。
よくわかんないけど
バス停の標識か何かか?

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その前のコマの背景で、
この場所が“ペンションさあもん”の
玄関近くということがわかるし、
バス停があってもおかしくないのだが、
もしかしてこのバス停(?)の描き込みを以てして、
大口小夏が“徒歩旅行”をやめて
五代との“バスも使用する旅行”に移行した、と
読み取れというのか?
(だから層雲峡や日高に行っていてもOK)
漫画読みスキルの難易度高過ぎでしょ。

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「一緒に行っていい?」と言われているのに
「きみさえよければ」って、どんな返しやねん!

そこは「(きみさえ)僕なんかでよければ」だと
思うんだけれども、
五代の不器用さを描くための、
あえての意図的なドンくさい台詞なのかな。

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これな。
当時、何かの折に使い勝手のいいフレーズでしたな。

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えっ、お前がそれ言う?
誤解されたぐらいで北海道行くなよ。

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坂本も坂本で、隠すようなことでもないだろ。
「めぞん」のテーマは誤解と勘違いだが、
6-7「プールサイドのキスマーク」で
坂本自身の失恋や五代との一夜のことを、
ひた隠しにするのはいくらなんでも無理がある。

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優雅でかわいくてやさしくて…………
きみは女性の鑑だねえ。

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東京に帰る前の晩、
旅の締めくくりの、女性からの突然のキス。
これも「彼のオートバイ」と重なるシーンだ。

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女性が言う最後の一言も
同様に綺麗なエンディングとなっている。

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この五代の顔はちょっといいな。
キスされて嬉しがり過ぎないところがいい。
二人はきっと連絡先も交換しておらず、
この先、会うことはないだろうというのも
この時代ならではの味わいがある。

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小夏ちゃんが、ごみは持ち帰れってよ。

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ジーンズの前ポケットなんかに

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長封筒入れるからだバカ。


えーさて、このレビューを書くにあたって
webでいろいろ検索したのだが
「めぞん」のパチスロで、
「~夏色の風と~」ってのがあるんだそうだ。
公式サイトを見ると、そのパチスロの登場人物に
大口小夏はいないようだが…。
なんじゃそれ。