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暑中お見舞い! うる星「風鈴樹の音色」レビュー

夏なので連日暑い。
オリンピックに配慮してか
猛暑の報道はあまりないが、ここ一週間は
雨だった日を除いて、ずっと最高気温30度越えだ。
今日は35度まで上がるらしい。

平日に会社の社屋で過ごす就業中は
夏の暑さを意識することはあまりないが、
週末自宅にいると、朝9時前からもう暑い。

自然とクーラーのお世話になるが、
オフィスや一般家庭のクーラーからの排熱が
ヒートアイランド現象を助長している、
という意識は常にあり、クーラーを使うことに
いくばくかの良心の呵責が拭えない。

昨今は熱中症への惧れから
「暑いときはちゃんとクーラーをつけましょう」
などと啓蒙されていることもあり、
クーラーが贅沢品という感じではなくなってきた。
公立の小中学校の教室にも
エアコンが入っている時代である。

昔の賃貸のアパートではエアコンは付帯しておらず、
取り付けスペースとドレンホースの穴だけがあった。

だから入居後にそれなりの出費を覚悟して
エアコンを取り付けたものだったが、
平成のどこかぐらいから
エアコン付き物件が一般的になったのか、
日常ものの漫画やアニメの中でも
エアコンに手が出ない、などという話は
とんと聞かなくなった。

エアコンの普及率は2000年頃まで上がり続け、
そこから横ばいになっていったようだが
「うる星」は昭和の話であり、
クーラーは贅沢品、という感覚がまだある。

今日取り上げるのは、冷房がテーマの
28-8「風鈴樹の音色」だ。

28巻は、初っ端の「星に願いを」という
諸星家におけるエピソードで
あたるの母が貧乏自慢をしていることもあり、

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その感覚が尾を引いて
諸星家を貧しい家庭だという目で見てしまうが、
諸星家の敷地面積や建物の規模を考えれば
それが高度経済成長期だということを差し引いても
あたるの父は低収入ではなく、高収入である。

住居に全振りしている、という部分はあろうが
貧乏でクーラーが買えない、というはずはない。

どちらかというと昨今のミニマリストのように
節約した生活にチャレンジしている感もある。


さて本編のレビューに入るがまずは小ネタ。

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おユキとラムがまたがる生物は
スター・ウォーズ 帝国の逆襲」の
トーントーン”のパロディだろう。
「帝国の逆襲」のそのシーンも極寒の氷原であり、
「うる星」がもともとSF畑に属していたことを
伺わせる一コマだ。

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風鈴のような実をつける植物。
地球のニッポンという国の文化と酷似した外観で、
むろんこれはナンセンスギャグの一環なのだが
ともすれば不思議世界のマジメな設定とも
受け取れてしまう。
そして下手に真面目に向き合うと、
その不条理さなどが“破綻”に見えてくるので
注意が必要だ。

“アホな面子の、セコいドタバタコメディ”と
受け止めるのが、一番適切な気がする。

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クソ寒い海王星
半袖麦わら帽子に汗拭きタオルの業者。
彼らにとっては海王星は暑いことになるが
彼らの地で風鈴樹は、
どういう用途で使われているのか。

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このおユキの作画は
慈しみのあるいい作画だなぁ。

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松本零士の四畳半的な書き文字だ。
語感もいい。

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諸星家の居間は、
縁側があって障子で区切られた
日本家屋なんだよな。
冷房効率も悪かろうし、
クーラーを導入するとなると
大がかりなリフォームが必要そうだ。

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なんだこの力の入った作画は。
高橋留美子氏はおっさんのことも好きだが
所帯やつれしたおばさんも好きだよなぁ。

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袈裟を着ている錯乱坊の登場は
心頭滅却すれば」を表しているが
その観点には触れられることはなかった。
錯乱坊を徳の高い高僧とするわけにもいかないし
取り扱いが難しそうだ。

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あら奥さん口汚い。

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結実具合がキューピッド(26-10)みたいだな。

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この一連の運びでは、テンポが優先されていて、
“温かいものを食べて暖を取りたい”という説明が
省かれている。たいへん知的な構成である。

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ということは風鈴樹の冷却効果は
海王星のおユキの居住空間ほどでは
ないということか。たいしたことないな。
コントロールして活用できそうな気もする。

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ラムの台詞はあたるの父に向けられているようだが
おユキにもかかっている。
このエピソードを通して“経済観念”が語られており、
そこからいうと この話は
“風鈴樹が起こした不思議な事件”と
“小市民の貧乏ったらしい日常回”が融合した、
なかなか複雑な味わいのエピソードである。

“家族”の有りようが濃密に描かれていることも
特徴といえるだろう。
「うる星」においては
各キャラの親がよく出てくるが、
それが必ずしも我が子のストーリーのためではなく
己(父母)の思惑に沿って動いている、というのも
作品世界の広さとなっている。

家族というものが、絆うんぬんの前に
まず共同生活者である、ということを
実感させられるのだ。