ぼちぼちと更新していければ

(毎週土曜日中の更新を目指しています)









じゃあ『系図』が失敗作だったとでもいうのかね


今週は『人魚の森』レビュー5回目の予定でしたが
令和アニメ『系図』にやられて
他のことに頭が回らない状態なので
素直に『系図』を考えることにします。


結論からいうと
僕は今の状況がたいへん胸糞わるいです。
自分の好きなコンテンツが
理不尽な消費のされ方をしているからです。


SNSの時代に
令和アニメ『うる星やつら』が始まって
いろいろな人の感想をほぼリアルタイムで
見ることができるようになりました。

いろいろな人が
自分の感じたことを
すごく素直に書き綴っていて、
そこに貴賤はないと本気で思っています。

でも歴史の上書きは起こります。

うる星やつら』が
“ドタバタSFコメディ”ではなくなり
“ラブコメ漫画(アニメ)”になったら
僕は悲しいんです。

既に完結している『うる星』が
変質することはないのですが、
その捉え方を
他人の思惑のほうへ誘導されるのはいやなんです。


先に“原作者の意向”の話をしておきましょう。

高橋留美子氏が
系図』のアニメ化をよしとしなかった話は
このところずいぶん話にのぼっていて、
『扉シリーズ』を以て
高橋留美子氏は呪縛から逃れたのだ、
そういう論調がほとんどだと
僕は読み取っています。

みんな納得してるけど、何に納得してるんですか?
じゃあ『系図』は
無かったほうがよかったエピソードなんですか?


高橋留美子氏にも、時期によってそのスタンスに
変化があると思うのですが
『うる星』がアニメ化してビジネスとなり
利益の部分以外でも
『うる星』というプロジェクトに責任を持つ・
持たなくちゃならなくなった時期に表明した言葉が
本当に作品の“面白さ”だけを考えて
された発言だとは僕は思いません。


大きくなりすぎたラム人気には
確実に気を使っていたことでしょう。

長期連載の中で自然とキャラが
そういうふうに動いていったのだから
それが自然な運命だったのだということかも
しれませんが、
それはそのプロセスの中で
ラムの人気に応えるために
ラムの存在感を増やしただとかの
原作者の介入があったがゆえではないでしょうか。


系図』当時の高橋留美子氏が
読者たちに楽しいと思ってもらえるよう
読者と同じ目線から
学園ものにSF風味を入れ、妖怪エッセンスを入れ、
ドタバタナンセンスギャグを入れ、
「できた!」と思ったのが
系図』というエピソードなのかもしれませんよ?
っていうかどう考えてもそうでしょう。


『扉シリーズ』を描く時に
小学館やフジテレビや、
KACのイベントに集まった大勢のファンたちを
その背中に背負っていた高橋留美子氏が
本当に自分の描きたいストーリーを
純粋に書けていたでしょうかね。
「できた! 面白っ!!」と思ったでしょうかね。
どっちかというと、「これで大丈夫…」と
ほっとしたんじゃないでしょうかね。


系図』はアニメ化しないでほしい、
その言葉をなぜ言ったのか。
系図』が都合の悪い黒歴史だからですか?
それは誰にとって都合が悪いんですか?

言った相手はプロデューサーだというし
そんなん絶対ビジネスの話じゃないですか。



令和アニメ『うる星』の『系図』を
『扉シリーズ』にうまく繋いだ、と
感心する声も多く挙がっているようですが
並べたこと以上に
何か工夫はありましたか?


視聴者から見たらむしろ
『ウシ』から繋げたように見えるはずです。

それは制作側の狙い通りかもしれません。

ラムの最後の台詞、
「きっと何かの間違いだっちゃ、
あんな未来、信じないっちゃ…」。
なんとかしてやりたくなりませんか?
ラムを救ってやりたくなりませんか?
そういう演出ですよね?

そして因幡クンが現れます。
「まずい、遅刻だ、遅刻だ…!」
これはどう考えても“救世主”か
“正義の味方”の登場ですよね?

あたるとしのぶが結婚して
こけるという息子がいる未来を
次回、みんなで団結してぶっ潰すぞ!
という気持ちにさせる演出です。

『ウシ』があれだったら、
そしてそれに繋げたらそりゃそうなりますよ。

僕はその悪意のなかにいるのが辛いです。


もう一つ。
原作『系図』でラムが“とくにくっつく”のは
あたるのことを恋しいから、でしょうか。

もちろんそりゃそうなんですが僕は
“彼女が、自分がインベーダーであることを
自覚しており、根本的に分が悪いのを
わかっているから”だと思うのです。

令和アニメにおいて、前回の『ウシ』で
あたるとあのように抱き合って泣いたラムが
“学生服で”「きっと何かの間違いだっちゃ、
あんな未来、信じないっちゃ…」と言っている姿は
もはやインベーダーではありません。
ただの女の子です。

インベーダーのラムが好きな僕は
どうしたらいいんですか。


前にも書きましたけど
自分以外の女との間にできた“こける”という名を
ラムが自分の子に付けるはずはないのです。
いいですか、それは
あたるが他の女と愛を交わしながら
愛の証として名付けた名前なのです。


ここまできたら、大団円の方法は
ラムがこけるを救うしかないんじゃないかと
僕は思います。
でもそうするとしのぶも救わなくちゃならない。
これは相当厄介なシナリオです。
しかしそこまでやるんなら、やってくれるなら、
悪くはないなぁ。うん、悪くない。ぜひ見たい。

でもそんなことになったら
ラムとあたるの仲がそこまでいったら
ボーイ ミーツ ガール なんていう騒動は
起こらなくなっちゃうんですよ。

完全に詰んでませんか?

〈おしまい〉